暴走♡アイドル2 ~ヨゾラノナミダ~

雪ノ瀬瞬

文字の大きさ
85 / 142
中編

Z2に乗った魔神

しおりを挟む
 一方、追いかけていった瞬と咲薇だが着実に白狐との差を縮めていた。特に瞬はもうすでに白狐の後ろを捕えていた。

(さすがや。何乗ってもあんな走りができるんわ、すごいの一言や。いける、これなら白狐を捕まえれる!)

 2人で左右から迫っていけば停めることができる。咲薇がそう思った時、前方に単車が現れた。3台は思わずブレーキを踏んだ。また新たに白狐を追う者だろうか。

 しかしその人物は白狐に向かって言った。

『行っていいわ』

 言われて白狐は少し戸惑ったように見えたがすぐに走りだし一気に加速した。

『待てっ!』

 瞬もその後を追おうとしたが前方の人物は行く手を阻む。

『どいてよ!あの単車を追ってるの!』

 単車に乗る者、興味のある者なら誰もが憧れ1度は乗ってみたいと夢見るであろうカワサキの750、Z2に跨がったその女は落ち着いた様子で言った。

『分かる?あなたたちは今自然保護法違反を犯したのよ』

 こちらを見下しながら妖しく笑うその顔はまるで作り物のように綺麗だった。肌もそうだが顔の作りもだ。どこまで整形すればこんな綺麗な顔になれるのだろう。

 そんな風に思いながらも瞬はこの目の前の女から危険な雰囲気を感じていた。

 すると咲薇が突然青い顔で瞬の腕をつかんだ。

『Z2やと…瞬、あかん。こいつは天王道や』

『天、王道?』

『さっき大阪喧嘩會の5人がおったやろ?その喧嘩會を作ったんが天王道姉妹言うてな、生きる伝説みたいな奴らや。ヤクザもこいつらには手ぇ出されへん言われる位の超大物や。確か去年少年院送りにされた聞いたけど、まさか帰っとったとは…』

 咲薇は完全に恐れをなしているようだが瞬は引かなかった。

『で…その伝説くんがあたしたちになんの用なの?』

 天王道はニッコリ笑って言った。

『あなたたち、今白狐を追ってたでしょ?ごめんなさいね、あの狐はこの辺の天然記念物なの。分かる?狩ったらいけないの。特によそ者にそうやってウロウロされると、とっっても目障り』

『手ぇ出してきてるのはあっちだよ。こっちは友達斬られてる上に単車まで取られてるんだから追うに決まってるでしょ』

 瞬がそう言い返すと天王道は少し意外そうな顔をした。

『…なるほど。彼女もあなたたちを狙っていると。へぇ…』

『分かったらどいて。話してる暇はないの』

 天王道はやれやれという表情で溜め息をつくと、瞬の服をつかんでまるで子犬でも放り投げるかのように単車から引きずり降ろし投げ飛ばした。

『あなたは自然保護法より、まず態度と口の利き方が私の気に障ったわよ』

 天王道は瞬の方へ歩み寄った。

『あれ?おかしいなぁ…少女は最近…言葉遣いや態度に…気をつけていましたが…伝説くんには人間の言葉が…理解できなかったようです…』

 瞬は雪ノ瀬節で喋り立ち上がると天王道と向かい合った。

『ねぇ君、あれのことを彼女って言ってたけど誰だか知ってるの?仲間なのかな?』

『喋りたがるゴミね』

 質問には答えず天王道はしかけた。

(速い!)

 思うのと同時に瞬は強烈な右拳に殴り飛ばされた。

『瞬!』

 咲薇が見ていられず間に入る。

『黙って見ていればケガせずに済むのよ?風矢咲薇。』

『何故あたしの名を…』

『何故って、名前位知ってるわよ。暴走侍は私たちにはたてつかない、お利口さんな暴走族だと思っていたけどあなたも調教されたいの?』

『魔神、天王道煌。(てんのうどうきらめ)なんでや、あんたにはなんも関係あれへんやろ?頼む、ここは勘弁してくれ』

 咲薇はこれ以上この女とモメたくない一心でなんとか説得しようとしたが後ろから肩を叩かれた。

『風矢さん。大丈夫だから、どいて』

 咲薇は振り向いてゾッとした。そこにはあの女の子らしい雪ノ瀬瞬はいなかった。見えたのは狼の目をした少女だ。

『魔神?へぇ…いっぱい名前があるんだね』

『元気がいいのね。殴りがいがあるわ』

 今度は瞬が先に動いた。まず助走をつけ走りだすと飛び上がり空中で3回転し回し蹴りを放った。得意のアクロバットで攻めていく。だが天王道煌は腕で蹴りを受けた。

『へぇ…なかなかやるじゃない』

 瞬はひるまず右の拳を打っていったが腕をつかまれまた投げられてしまった。

『うぁっ』

 今度はおもいきり一本背負いのようにしてアスファルトに叩きつけられ、天王道煌はすかさず蹴りを入れ踏みつけた。その綺麗な顔と裏腹に容赦がない。それに何より想像以上の怪力らしい。

 瞬は地面をグルっと回って跳ね起きると回し蹴りにパンチも加えて連続攻撃にいくが、地下格闘技のチャンピオンである瞬の攻撃を天王道煌は顔色も変えずに受ける。見事という他ないが瞬もわずかな隙を見逃さなかった。

 鋭い裏拳が煌のほほに叩き込まれた。だがその一撃が彼女のプライドを傷つけた。

『ドチビが!この顔に何してくれんねん!』

 どうやら怒ると素が出てしまうらしく初めて彼女の口から乱暴な関西弁が出た。煌は瞬を殴り飛ばすと単車のミラーで顔を確認した。

『アカン…赤くなっとる』

 何やら煌の携帯が鳴っていたようで顔をミラーで覗きながら電話に出た。

『もしもし姉さん?えぇ問題ないわ。えぇ分かった、すぐ行く』

 電話を切ると肩を叩かれ、振り向くとその瞬間拳が飛んできた。

『ぐっ!』

 今度はもろだ。目の斜め上が少し赤くなっている。

『何逃げようとしてんの?まだ始まったばっかりなのに』

 瞬は微かに笑いながらやる気満々のオーラを見せた。ドーピングをしていないとはいえ負けるつもりなど一切ない。

 煌はまるでどこぞの「嬢王様」のように顔を怒りで歪ませたが前には出なかった。

『本当に残念だけど呼ばれてるの。だから今日だけ見逃してあげる。でも忘れないで。今日からあなたは私の大事なターゲットに指定したわ。このまま終わりになんてさせないから覚悟しといてね』

 天王道煌は妖しく笑うとZ2に跨がり去っていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

黄泉津役所

浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。 だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。 一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。 ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。 一体何をさせられるのか……

「親の介護のこととか」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
高齢になった親との暮らしのこと、家族のことなどを、エッセイ風に綴ります。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ワシの子を産んでくれんか

KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。 「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。 しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。 昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。 ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。 救いのような笑顔と、罪のような温もり。 二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。

婚約継続中なのに逃亡?元悪役令嬢、勘違いで癒しカフェ開店中

しずく葉
ファンタジー
公爵令嬢クラリッサは、完璧な令嬢として育てられた。 王子との婚約、宮廷での未来──それは誰もが望む「理想」だった。 けれど、彼女の心はそっとささやいた。 「もう少し、自分らしく生きてみたい」と。 ある日クラリッサは、すべてを置いて森の奥へ。 ひっそりと、けれど心地よく、癒しのカフェ《cafe fuu》を開く。 焼きたてパンと紅茶、もふもふの神獣たちと笑顔あふれる日々── そんな中、彼女を探していた家族が、ついに姿を現す。 泣いて、笑って、あたたかくなれる。 これは、“居場所”を見つけたひとりの令嬢と、 そっと彼女を見守り続けた家族の、再会の物語。

処理中です...