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後編
貴様が黒幕
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『あのさ、みんなこれだけは約束してほしいんだけど、もし本当に危なかったり怖かったりしたらお願いだから逃げてね。』
もう廃工場は目と鼻の先だ。目的地を前にして愛羽がみんなに向かって言った。
『誰かが死んじゃうかもしれない目に合わされるのだけは絶対に嫌だから』
『大丈夫だよ愛羽。こん中でそんな目に合わされそうなのは蓮華ぐれぇだよ』
『ちょっと!ひどいじゃない!完全戦力外みたいな言い方して。あたしだって緊張してるんだからね!』
麗桜がちゃかすので蓮華は怒ってしまったが場の空気は和んだ。
そんな中咲薇だけは1人浮かない顔をしていた。
『どうかしたのかい?そんな顔して』
風雅はそんな咲薇を元気づけようと声をかけるが咲薇は思いつめた表情を変えなかった。
『叶泰が死んで白狐が現れて色んな人が犠牲になって、あたしの周りさえ傷つけられて、ついにこんな大事になってしまって…どうしてこんなことになってしまったのかと思うと、なんだか自分が悪いような気がしてきてしまってね…』
『じゃあ、今日で全部終わらせてこなきゃね』
咲薇の肩を叩いて瞬が笑いかけた。
『…うん。そやな』
咲薇にとってせめてもの救いはこの仲間たちがいてくれることだ。
大丈夫。瞬の言う通り今日で終わらせなければ。そう思えていた。
廃工場の敷地の入口に着くと、もうすでに中では乱闘が始まっているようで大勢の人間が争う声が聞こえている。
だがその門の所で大阪喧嘩會般若娘の5人が特攻服姿で横一列になって待ち構えていた。
『はいはーい。入場券持ってらっしゃいますか~?』
『ごめんなー、こっからは一般の人は入場券ないと入れへんねん』
『当日券は売り切れですわー』
そう言って5人はゲラゲラと笑いだした。
『愛羽、こいつらだ。玲璃と豹那をやりやがったのは』
『…そう…』
麗桜がそれを伝えると愛羽の目が遠くなった。2人の仇が目の前にいて、おとなしくしていられる訳はない。
『風矢咲薇は顔パスや。なんて言うても今日のスペシャルゲストやからな。そいつだけは入れたるぞ』
そう言ったのは藺檻槐だ。
『あんたたちをぶっとばせば中に入れるんでしょ?』
愛羽は事も無げに言った。
『なんやこのチビ。生意気な中坊やな』
『お前たちはこの計画には邪魔や。中には入れん』
『へぇ…じゃあ今日の騒ぎはあんたたちが仕組んだってことでいいのね?』
『そーゆーことや。分かったらさっさと消えろ』
『やっぱりそうか。咲薇、瞬、樹さんもここは俺たちがなんとかするから中へ行ってなんとか止めてきてくれ!』
麗桜が言うと咲薇たちはうなずき一斉に走りだした。
『あ、待てやコラァ!』
追いかけようとする女の手を愛羽はつかんだ。そして次の瞬間、飛び上がると空中で体を回転させ回し蹴りを相手の顔面に叩きこんだ。
『おぉっ!』
それを見ていた般若娘たちはその見事な蹴りに声をあげ、彼女たちの興味は一気に愛羽へと移った。
『あたしあいつやる!』
『いや、あたしや!』
それぞれ愛羽とのタイマンを望んでいるようだがその声を押しのけて槐が名乗り出た。
『ダメや。このチビはあたしがやる』
般若娘の4人はやれやれといった感じでそれぞれ麗桜、蘭菜、風雅、蓮華の前に立ちふさがった。
『みんな気をつけて!!やっぱりこの人たち、ドーピングしてるみたい!!』
愛羽は今の渾身の回し蹴りで相手の不自然な重さ、手応えのなさを感じとった。
『ドーピング?なんのことや?』
槐はとぼけたが般若娘たちは明らかないやらしい笑いを浮かべている。
(くそ…やっぱりか。それじゃどう頑張っても勝ち目なんてねーぞ)
麗桜は思わず目をつぶった。
(…待てよ?)
『よぉ、お前さんたち。今日その薬いつ使ったんだ?やったばっかか?それとも1時間位前か?』
『あ?なんやねん。丁度1時間経ったとこや。それがなんや』
(しめた!こいつら時間のことまで計算してねーみたいだ。瞬の話じゃ効き目はせいぜい2時間前後っつってた。なんとか…なんとか1時間粘れれば勝機はある)
『愛羽!みんな聞いてくれ!こいつら薬の有効時間まで頭にねーらしいぞ!多分あと1時間位で効き目は切れる!それまでなんとか耐えるんだ!離れて距離をとれ!』
『なんやと!』
今回で使用が2回目の5人はまだ効果以外のことは知らない。細かい時間など気にもしていなかった。
(へっへ、こうやって焦らせとけば相手は急ぐ。蘭菜と風雅は冷静だ。言わなくても時間を稼いでくれるだろ。あとは蓮華の方をなるべく気にしてやってれば、とりあえずOKだろ。よし、いいぞ。なんとかなりそうだ…)
麗桜の思惑通り、蘭菜も風雅も蓮華も目の前の敵、そしてそれぞれ互いに距離をとった。2対1の状況などを作らせない為だ。
だが、ただ1人前髪パッツンのポニーテールだけはそんな作戦も全く聞いていなかった。
『あんたが黒幕のリーダーなんだよね?とっととかかってきなよ。あたし、絶対負けないから』
『ははっ!元気だけはえぇようやな。あたしは大阪喧嘩會般若娘の頭やっとる藺檻槐や。今日という日の記念にお前の名前も聞いといたる』
『夜明けの空に天使の羽、暁愛羽だ!!』
愛羽は闘争心全開でかかっていった。
麗桜がそれを見て口をンガッと開けながら唖然としていた。
(あちゃー…あいつ、ありゃ本気モードだよ。怒ってたもんな~愛羽。しょうがねぇか…)
暴走愛努流対般若娘の戦いが始まった。
使用者とのタイマンははっきり言って絶望的だが彼女たちは強い意志で立ち向かっていった。
もう廃工場は目と鼻の先だ。目的地を前にして愛羽がみんなに向かって言った。
『誰かが死んじゃうかもしれない目に合わされるのだけは絶対に嫌だから』
『大丈夫だよ愛羽。こん中でそんな目に合わされそうなのは蓮華ぐれぇだよ』
『ちょっと!ひどいじゃない!完全戦力外みたいな言い方して。あたしだって緊張してるんだからね!』
麗桜がちゃかすので蓮華は怒ってしまったが場の空気は和んだ。
そんな中咲薇だけは1人浮かない顔をしていた。
『どうかしたのかい?そんな顔して』
風雅はそんな咲薇を元気づけようと声をかけるが咲薇は思いつめた表情を変えなかった。
『叶泰が死んで白狐が現れて色んな人が犠牲になって、あたしの周りさえ傷つけられて、ついにこんな大事になってしまって…どうしてこんなことになってしまったのかと思うと、なんだか自分が悪いような気がしてきてしまってね…』
『じゃあ、今日で全部終わらせてこなきゃね』
咲薇の肩を叩いて瞬が笑いかけた。
『…うん。そやな』
咲薇にとってせめてもの救いはこの仲間たちがいてくれることだ。
大丈夫。瞬の言う通り今日で終わらせなければ。そう思えていた。
廃工場の敷地の入口に着くと、もうすでに中では乱闘が始まっているようで大勢の人間が争う声が聞こえている。
だがその門の所で大阪喧嘩會般若娘の5人が特攻服姿で横一列になって待ち構えていた。
『はいはーい。入場券持ってらっしゃいますか~?』
『ごめんなー、こっからは一般の人は入場券ないと入れへんねん』
『当日券は売り切れですわー』
そう言って5人はゲラゲラと笑いだした。
『愛羽、こいつらだ。玲璃と豹那をやりやがったのは』
『…そう…』
麗桜がそれを伝えると愛羽の目が遠くなった。2人の仇が目の前にいて、おとなしくしていられる訳はない。
『風矢咲薇は顔パスや。なんて言うても今日のスペシャルゲストやからな。そいつだけは入れたるぞ』
そう言ったのは藺檻槐だ。
『あんたたちをぶっとばせば中に入れるんでしょ?』
愛羽は事も無げに言った。
『なんやこのチビ。生意気な中坊やな』
『お前たちはこの計画には邪魔や。中には入れん』
『へぇ…じゃあ今日の騒ぎはあんたたちが仕組んだってことでいいのね?』
『そーゆーことや。分かったらさっさと消えろ』
『やっぱりそうか。咲薇、瞬、樹さんもここは俺たちがなんとかするから中へ行ってなんとか止めてきてくれ!』
麗桜が言うと咲薇たちはうなずき一斉に走りだした。
『あ、待てやコラァ!』
追いかけようとする女の手を愛羽はつかんだ。そして次の瞬間、飛び上がると空中で体を回転させ回し蹴りを相手の顔面に叩きこんだ。
『おぉっ!』
それを見ていた般若娘たちはその見事な蹴りに声をあげ、彼女たちの興味は一気に愛羽へと移った。
『あたしあいつやる!』
『いや、あたしや!』
それぞれ愛羽とのタイマンを望んでいるようだがその声を押しのけて槐が名乗り出た。
『ダメや。このチビはあたしがやる』
般若娘の4人はやれやれといった感じでそれぞれ麗桜、蘭菜、風雅、蓮華の前に立ちふさがった。
『みんな気をつけて!!やっぱりこの人たち、ドーピングしてるみたい!!』
愛羽は今の渾身の回し蹴りで相手の不自然な重さ、手応えのなさを感じとった。
『ドーピング?なんのことや?』
槐はとぼけたが般若娘たちは明らかないやらしい笑いを浮かべている。
(くそ…やっぱりか。それじゃどう頑張っても勝ち目なんてねーぞ)
麗桜は思わず目をつぶった。
(…待てよ?)
『よぉ、お前さんたち。今日その薬いつ使ったんだ?やったばっかか?それとも1時間位前か?』
『あ?なんやねん。丁度1時間経ったとこや。それがなんや』
(しめた!こいつら時間のことまで計算してねーみたいだ。瞬の話じゃ効き目はせいぜい2時間前後っつってた。なんとか…なんとか1時間粘れれば勝機はある)
『愛羽!みんな聞いてくれ!こいつら薬の有効時間まで頭にねーらしいぞ!多分あと1時間位で効き目は切れる!それまでなんとか耐えるんだ!離れて距離をとれ!』
『なんやと!』
今回で使用が2回目の5人はまだ効果以外のことは知らない。細かい時間など気にもしていなかった。
(へっへ、こうやって焦らせとけば相手は急ぐ。蘭菜と風雅は冷静だ。言わなくても時間を稼いでくれるだろ。あとは蓮華の方をなるべく気にしてやってれば、とりあえずOKだろ。よし、いいぞ。なんとかなりそうだ…)
麗桜の思惑通り、蘭菜も風雅も蓮華も目の前の敵、そしてそれぞれ互いに距離をとった。2対1の状況などを作らせない為だ。
だが、ただ1人前髪パッツンのポニーテールだけはそんな作戦も全く聞いていなかった。
『あんたが黒幕のリーダーなんだよね?とっととかかってきなよ。あたし、絶対負けないから』
『ははっ!元気だけはえぇようやな。あたしは大阪喧嘩會般若娘の頭やっとる藺檻槐や。今日という日の記念にお前の名前も聞いといたる』
『夜明けの空に天使の羽、暁愛羽だ!!』
愛羽は闘争心全開でかかっていった。
麗桜がそれを見て口をンガッと開けながら唖然としていた。
(あちゃー…あいつ、ありゃ本気モードだよ。怒ってたもんな~愛羽。しょうがねぇか…)
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