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勢いよく入り口から入ってきたのは。

 細身の男の人、整った顔立で髪の一部が突き上がって「角」の様に思える。

「七梨さん!?」
「七梨ちゃん?」

私と薫さんがその方向を同時に向く。

「ヤレヤレ、マタデスカ…アキラサン、チョット、マッテテクダサイ」

 ミンジュンさんが七梨さんへの元へとため息混じりに歩いていく。

「あんたが、ここの責任者かい?」
「ソウデス!コマリマスヨ!ムダンデハイッテキテハ!」

「すでに何回も電話もしてるし!そっちが何も対応しないからだろが!」

 あれ?いつも温厚な感じの七梨さんが怒ってる?

「薫さん、なんか七梨さん怒ってませんか?」

「んー…お店の事だから、余り言えないのだけどね、最近ウチのお店に悪戯していく男子達がいてね、その子達が此処によく出入りしてるって話が出で調べてるのよ」

「それで、薫さんも潜入捜査みたいな」

「私は個人的に鍛えてるだけよー」

あら?即答されてしまった。

「ナンドモイッテイルデショー、ウチノジムニハ、ソンナヒトイマセン」

「だぁから!防犯カメラの動画見せてくれって話してるだろが」

「イヤデス、ソンナコトシテ、ワタシタチニ、ナンノトクモ、アリマセンシ」

(そうよそうよ、帰れ!)
(これだから、貧弱はー)
(なにあれ?ちょっとイケメンだからってー)

 う~ん、ここでは七梨さんでも分が悪いのかな?けどあの子達も揺らいでる感があるけど…。

「ソウダ、キット、アナタハストレスガ、タマッテイルノデス!」

「あ?」

「セッカクデスカラ、サンドバッグデモ、タタイテイキマセンカ?」

「サンドバッグ?」

「アァ!ドウセナラ、サンドバッグヨリ、ワタシノフッキン!フッキンヲナグッテモイイデスヨ!」

 ミンジュンさんは大きく腕を広げて七梨さんを挑発している。


「あら、始まったわね~」

「始まった?薫さん何か知ってるんですか?」

「あれは、ミンジュントレーナーのよ」

「罠?」

「そう、罠。あの人は鍛えた腹筋をわざと殴らせて逆に相手の手首を壊させるのよ」

「壊させる?」

「コンクリートを思い切り叩くと怪我をするでしょ?あれと一緒よ。ちなみにコンクリートを例えにしたのは自らそう自慢していたからよ」

「なら、止めないと!」

「大丈夫よ、明ちゃん」

「で、でも!」

「あの人も相手が悪かったわね~」

薫さんはうふっと微笑みなら答える。


「いいのかい?あんたを殴っても?」

「ドウゾドウゾ!タダシ、アトデ、モンクヲイウノハナシデスヨ!」

「よし、なら合意したということでいいな?お互いに恨みっこなしで!」

「イイデスヨ!サァ!スキニナグッテクダサイ!」

 ミンジュンさんは腹筋に力を込めたのかより、筋肉が強調されていく。

「コノ、コンクリートノヲモツ、ニクタイヲ!ナメナイデクダサイ!」

「最後に確認するが、殴ってもいいと言ってきたのはあんたで後悔しないな?」

「クドイデスヨ!サァキナサイ!」

「…はいよ!」

 七梨さんの右腕がゆっくりと動いたと思ったら。

ド …ゴン!!

と、異音がした。真っ白だったミンジュンさんの顔が徐々に青くなり、口元が広がっていく。

「あっ駄目よ!明ちゃん!」

突如、私は薫さんに目隠しをされる。

「え!?なんですか薫さん!」

うぇぇぇぇ、ごっぉ、ゥオロロロロロロロロロ~…。

 うわぁ、この声と床に滴り落ちる液体の音はまさしく…ゲロ…。

「ほ~んと、相手が悪いわぁ~七梨ちゃんは素手で楽々コンクリートを砕けるのよ!」


え!?七梨さんってそんなに強いの?

 私は目隠しをされたまま、薫さんに連れられトレーニングルームを後にした。七梨さんは満足したのどうかは分からないが、一言「きたねぇなぁ!」と呟いて帰ったらしい。

 これは後日談だけど、ミンジュン側は後々騒ぎだしたようだけど、七梨さんは全ての会話を録音していて、これまでのの資料も全て揃えていたので、逆に黙ることになったそう。

 その後は家の途中まで薫さんが送ってくれて、色々な話をしてくれた。

「乙女とは清く正しく、

 薫さんの女性像はいささか疑問があるけども…。

 とても話しやすく、なんというかって感じかな?七梨さんが気に入るのも分かる気がする。


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