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DAY 2.
海辺を歩く
しおりを挟む「お昼ご飯の時に、ミッション【食事】も
開始しておけば良かったかもしれませんね。
お・・道哉・・くん」
俺と田口は昼食を食べた後、
気持ちのいい海沿いの道を歩いて帰ろう
ということになった。
どうせだから・・と、
ミッション【デート】を遂行中だ。
このミッションはパラメータ関係無いらしい。
【2人で300分以上、自宅の外で過ごす事】
・・・が成功条件で、
この世界を散策して慣れるのにも
丁度いいミッションだ。
(ついでみたいにできる割に報酬良いし・・
コレはボーナスミッションだよなぁ)
100の経験値と200のポイントなので、
あかりだけならレベルが1つあがる。
「観光のお客さんも多そうですね。」
昨日見せてもらったカレンダーによると、
今はこちらの世界では4月なのだが、
結構暑いし、海岸では日光浴という事なのか、
大勢の人達が太陽の下、寝転がっている。
『この世界の4月は暑いですからねー・・
海が綺麗なこのキプロス島のこのビーチは
ギリシャ連邦共和国内だけでなく、
海外からもお客さんの来る人気の場所なんです。』
トニがあかりの肩から下がった
水槽の中で言った。
因みにトニの入ってる持ち歩き水槽は
温度制御されているそうで、
炎天下でもトニだけは涼しげだ。
「なんだか、暦の感覚が掴めないよなぁ」
トニ曰く、この世界でも各国共通の太陽暦の
暦が使われているし、1年は12カ月だし
365日だし、1日は24時間だし、
閏年なんかもあって俺達の時間感覚と
そう変わらないところが多い。
それなのに春から1年が始まったり、
西暦が存在しなくて、
大きな戦争が終戦した年から年を数えている
ところとか・・違うところも多い。
そんなこの世界の北半球の4月は
夏の1番暑い時期だ。
炎天下の下歩き続けるのは辛いので
休憩がてら土産物店で飲み物を買った。
土産物に加えて、水着や服が所狭しと置かれて、
更に店の片隅で飲み物や食い物も売っている
ちょっと寂れた店だ。
店のおばあちゃんが親切で
俺とあかりに店内の椅子を勧めてくれた。
「坊や達は外国から来たのかい?」
ビーチから来るのには不便な場所だから
お客さんが少ないようで、
おばあちゃんは、世間話を振ってきた。
“外国から・・“というのは、俺達が日本人で
この国では見かけない見た目だからだと思う。
この国の人達は、元の世界で俺達がたまに
見かける欧米人よりも体格が良いくらいで・・
色素が薄く、彫が深い顔をした人が多い。
目の前のおばあちゃんも、
おばあちゃんなのに俺と同じくらいの身長で、
皺が入った彫りの深い顔の奥に
優しそうな青い瞳をしている。
「あー・・うん。旅行で・・」
本当のところは、この世界にも日本にあたる国は
存在しているらしいのだけど、
日本という国名も『Japan』という英語の国名も
生まれていないらしい。
(トニに聞いたけど・・何だっけ・・?)
『道哉さん、『アシハラの国』で通じますよ』
「アシハラの国から来ました。」
トニから囁かれた国名を言うと、
おばあちゃんは少し嬉しそうに応じる。
「まぁまぁ、遠くから!
恋人同士で旅行なんて素敵ねぇ」
「こ・・恋人に見えますか?!」
あかりが赤くなって声を弾ませる。
「え?スワンベルトを付けているから・・
ご夫妻にしては若いし・・」
「あ・・なるほど・・」
目に見えて声が落ちた。
おばあちゃんは不思議そうにしながら
あかりを励ます様に声を掛ける。
「折角、この時期のキプロスに来たなら、
海をしっかり楽しんで行ってね!」
「あ・・ありがとうございます。」
にっこり笑って言うあかりの声は
沈んだままだ。
「そうだ!海辺に行くなら、
服を買って行かないかしら?
あなた達、それ、正装でしょう?
海風でベトベトになる前に!ね?」
おばあちゃんにお礼を言って店を出て、
人だらけのビーチを歩く。
俺達は、結局おばあちゃんの店で
外歩き用の服と歩きやすい靴を買った。
この国の物価が安いのか貰った初期費用が
多かったのか・・財布に優しい金額だった。
俺は派手な色のシャツと短パン。
あかりは体型が見えるのを恥ずかしがって
体型の出ないワンピースを買った。
・・といってもこの国の人達向けに作られた服は
俺達・・特にあかりには大きい。
お母さんの服を無理矢理着た小さい子みたいだ。
ワンピースは明らかに大きすぎて、
腰のラインがお尻の下まで来てるし、
本来膝上のスカート丈が足首まできてる。
「あ・・道哉君が、恥ずかしければ、
お家に帰って丈を詰めます。」
「んーまぁ、歩きづらくないなら良いけど。」
元の世界でもあかりは体型が出るのを
嫌がって、割とこういうシルエットの服を
着ている事が多いので、本人が気にしないなら
俺は別に構わない。
海に出てみると俺達はちょっと浮いていた。
似たような格好の人はいるには
いるけどお年寄りが多い。
日光浴をしている人が多くて下着を付けないで
透けてしまうような薄い服を着ている人が多く、
俺達から見ると男女共に全裸と変わらない
気がしてしまう。
因みにおばあちゃんの店にも
この人達が来てそうな日光浴専用の服みたいなの
も沢山並んでたんだが、俺とあかりはパスした。
「「・・・」」
人を見ていると色々と目のやり場に困るので
俺達は裸足になって人のいない波打ち際を歩く。
「たぐ・・あかり、なんかあった?」
心なしかまだしょんぼりしているあかりに
声を掛けるとあかりは、笑って頬を掻いた。
「ごめんなさい。心配させて
・・でもだいぶん、しょうもない事
なんで・・・」
『あかりさん!耳を塞いでて!』
あかりの『しょうもない事』を聞きたかったのに
トニの慌てた声にあかりが耳を塞いだ。
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