【R18】翼神のイタズラ PLAYER No.037 大橋道哉の場合

まめた

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DAY 23.

人間達の滅びゆく世界

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「東洋人のようだから・・
 少しお話を伺いたくて・・
 2人でお話よろしいかしら?」

 赤毛の"女神の娼婦"は
 ミーミルと名乗った。

「あかり1人にするのは・・」

 俺が言うとミーミルさんは微笑んだ。

「大丈夫ですよ。
 ご不安なら、一緒にいらして?」

 ミーミルさんはそう言って、
 あかりの顔をもう一度見た。

 あかりは不安そうに俺とトニに視線を彷徨さまよわせた。

 ミーミルさんは、優しい微笑みを張り付けたまま
 あかりの視線が向いた
 トニの入った携帯水槽に話しかける。

「トニさん、私は"ワカコ”の
 魚・・クレオンを本日預かっております。
 彼女のお友達なんですの。」

 つまり、ゲーム『エロース』の事を
 結構知っていると言いたいらしい。

 トニはその言葉を聞いて少し沈黙した後、
 俺達にも聞こえる様にミーミルさんに話しかけた。

『・・・私はあくまでも
 エロース様にお仕えする魚で、
 "ワカコ"さんではなく、
 こちらのお2人のサポートを
 エロース様から仰せつかっております。

 女神の娼婦の権限の大きさは存じて
 おりますが・・』

 トニの言葉にミーミルさんは冷静に頷いた。

「分かっておりますわ。
 私もエロース様にもトニ様にも
 ご迷惑をお掛けするつもりはございませんの。

 でも私がお2人の事情を知っていることについて
 お分かり頂くには
 手っ取り早いかと思いまして・・」

 ・・今、デートを邪魔されて
 俺は迷惑に感じているんだが・・
 ・・あ、迷惑を掛けない相手は
 あくまでもエロースとトニだけだっけ?

 俺がブツブツ言っていると、
 ミーミルさんは主にあかりに向き直った。

「私がお話したいのはあかりさん
 ・・貴女ですのよ。」

「あの・・その・・・」

 あくまでも優雅で優しい口調だけど、
 女性にしてはかなりの高身長で、
 細いながらも筋肉質な体つきに
 整った顔立ち・・
 目力の強いミーミルさんはなかなかの迫力だ。

 気の弱いあかりに太刀打ちできるわけがない。

 俺は気圧けおされてる
 あかりの前に立った。

「・・・ちょ・・怯えてるでしょ?」

 俺が言うと、ミーミルさんは少し考えて言った。

「神殿の入口の庭園でお話するのはいかが?
 私が本当に恐ろしいということであれば、
 逃げても構いませんわ?」

 神殿の入口にある庭園は
 拝殿料を払わずに誰でも入ることができる
 公園の様な雰囲気の場所だ。

 あかりの顔を覗き込むと、
 動けないほどに緊張しているわけでは
 ないみたいで、あかりは小さく頷いた。

 ◇◇◇

「単刀直入に申し上げますわ・・
 あかりさん・・
 貴女の卵子を幾つか頂きたいのです。」

 庭園の木陰に置かれたテーブル。
 テーブルの上に、トニの入った
 携帯水槽を置いて・・

 そのテーブルの周辺に置かれた
 椅子の1つに優雅に腰掛けたミーミルさんは
 俺の隣に座るあかりに向き直った。

 俺とあかりはミーミルさんが用意してくれた
 お茶を盛大に噴き出した。

「私は生殖を研究する医師でもありまして、
 研究用にお願いできないかしら。」

 ミーミルさんは真顔だし、
 表情から察するにマジメな話らしい。

「勿論、あかりさんの健康も生殖機能も
 損なわない様に十分な対処をさせて頂くわ?」

「ダメです。」

 ワタワタしているあかりを横目に俺が答えると、
 ミーミルさんは不思議そうに俺を見た。

「道哉さん・・何故、貴方が答えるのかしら?
 あかりさんの身体の話ですわ。」

「迫力で押すようなマネしないでくださいよ。」

 俺が言うとミーミルさんは
 ますます不思議そうに言う。

「私は帯剣たいけんした男ではございません。
 肉体的にか弱い女性である彼女を
 脅す様な事はしていないでしょう?
 嫌なら嫌と
 あかりさんが答えるべきではないかしら?

 この世界同様にあなた方の世界でも
 男女は平等になっていると
 "ワカコ"が言っていたけれど、

 彼女には自分の身体に関する
 決定権がないということかしら?」

「男女は平等ですし、
 あかりの身体の決定権は
 あかりにありますけど、
 俺の恋人です。」

「私の知っている"恋人"というものは
 "代理人"ということではございませんわ。
 あなた方の世界では違うのかしら?」

「こ・・恋人なら、
 将来結婚するかもでしょ?

 あかりが俺の子供産むかもだし・・
 あかりの卵子が勝手に使われるのに
 意見する権利くらいあるでしょ?」

 ・・自分で言っててどうだろう?・・と
 思わんでもない理屈だけど・・

 うまくいけば、結婚するつもりだ。
 将来の自分の子供に見知らぬ
 兄弟がどこかにいるかも・・というのは、
 ややこしい。

 ・・うん。
 意見する権利くらいあるだろう。
 ・・あるある。

 ミーミルさんは、
 少し考えるような仕草をしてみせた。

「よく分かりませんが・・
 あなたの価値観について
 詳しくお聞きしていると
 話の趣旨がズレてしまいそうですね。

 分かりました。
 私もあなたが意見を言うことに、
 文句を言うのはやめて、
 あなたのご意見を承りながら
 お話ししましょう。

 でも、私がこのお話をしたい相手は
 あかりさんなのです。」

 ミーミルさんはそこまで言って
 あかりの目を真っ直ぐに見た。

「ご・・ごめんなさい。」

 真っ赤になったあかりは
 何故か謝ると俺の手をぎゅっと握った。

「この世界で何故子供が
 こんなにも生まれなくなったのか・・

 その研究の為に、
 一人の女性が3人以上の
 子供を作ることも珍しくない
 お2人の世界の若い女性の卵子を
 サンプルとして頂きたいの・・

 私達の世界では、人生で2人以上の
 子供を産む女性はわずか2%・・

 でも、別れてからたった
 2000年と数100年ぽっちしか違わない
 あなた達の遺伝子情報は、
 私達の世界の
 アシハラの国の住民の遺伝子情報と
 殆ど違いがありません。

 ・・アシハラの国も、
 私達の国と同様に出生率が下がる一方で
 苦しんでいます。

 私達の世界の
 アシハラの国の住民達とあかりさん達の
 生殖機能の違いを調査させて頂きたいのです。

 この研究が少しでも進めば
 人類が生き残るヒントを得られるかもしれない。」

 ミーミルさんはそこまで言ってお茶を口にした。

「あ・・アフロディーテ様は・・
 助けて・・くださらないんですか?」

「あら・・」

 ミーミルさんは小さく笑った。

「嫌味が言えるとは思わなかったわ。
 あかりさん。

 ・・私達は、神々に祈る事を
 やめないけれど、
 自ら戦って生き残らなくては
 いけないものだと決めて
 神々と共存する選択をしたの。

 "ワカコ"から聞いた話では、
 あなた方の古代ギリシャは
 神話ミュトスを排して
 知性ロゴスを取った様ですが、

 私達の古代ギリシャは、
 神話ミュトスを持ったまま
 知性ロゴスを使う人間として
 生存する事を選んだのです。

 私達は絶滅せずに存続する事を神に祈り、
 自ら道を切り拓く戦いをしておりますの。

 戦ってこそ、
 女神様のご加護も得られるというもの・・

 協力して頂きたいわ。」

「・・わ・・私でなくても、
 "ワカコ"さんはお友達ですよね?」

 あかりは一生懸命に会話を続ける。

「"ワカコ"から卵子の提供も
 受けたのだけれども・・
 "ワカコ"はもう51歳。
 あかりさんの年は分からないけれど、
 若いのではないかしら?」

 ミーミルさんが身を乗り出すけど、
 あかりは口を閉ざした。

 沈黙はある意味正解だ。
 『18歳です』なんて言ったら、
 ミーミルさんが大喜びして
 余計に圧が強くなりそうだ。

 ただ黙ることは気の弱いあかりにできる
 精一杯の抵抗だろう。
 俺はミーミルさんを睨む。

「どうして、あかりが
 この世界の人口減対策の為に
 協力しないといけないんですか?」

「あなたも人類、私達も人類です。
 時間軸が違っても世界人類の為・・
 といっても、
 あなたは聞いて下さらないかしら。」

「自分の時間軸の人類が絶滅に瀕してても、
 俺にとっては
 あかりの優先順位が高いんで・・」

 ミーミルさんはふぅっと吐息を漏らした。

エロースね・・」

 小さくぼやいた後、
 名刺みたいな小さな金属板を取り出した。

「何にしましても・・
 お2人はおそれ多くもエロース様の客人ゲスト・・
 私がお2人にできることは
 あくまでも協力のお願いです。

 力に物を言わせるような事も、
 脅しをかける様な事も致しませんわ。

 お2人が異世界人である事も
 私の胸にしまっておきます。

 ・・でも、
 これは私の連絡先です。
 気が変わりましたらご連絡くださいね。」

 ミーミルさんは席を立った。

「連絡をお待ちしておりますわ。
 あかりさん?」

 ニコッと笑う作り物みたいな
 赤毛の美女は・・俺から見るとただただ、
 怖かった。
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