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DAY 27.
そこはお約束ですから
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「・・田口、鼻押さえといて・・」
ベッドの裏でも和泉は
作業の手を休める気がない様で、
あかりの鼻を調整中だ。
「後にしたらイイじゃん・・」
俺がぼやくと、和泉がぎりっと睨んだ。
「バカ言わないでよ。
もう時間ロスしてるし、
ここまではやっちゃわないと、
またイチから
やり直しなんだから・・!!」
「・・はい。ごめんなさい。」
ヒソヒソ声だけどドスが効いてる。
俺は素直に頭を下げた。
付き合ってた時は、
わざとらしいぶりっ子だったと
記憶してるが、
怖い女ではなかった気がする。
・・っていっても
付き合ってた期間が一週間も
なかったんだけど・・
「「・・・」」
そんな風にしてたら、
ぽんぽんと背中を叩かれた。
振り向くと
あかりと青木が人差し指を
口の前に1本立てて
俺達を見ていた。
・・カツン・・カツン!!
遠くで聞こえていた
足音が段々と大きくなってくる。
ここにきてようやく
俺とダマリさん以外にも
足音が聞き取れたみたいで、
和泉は忙しなく
動かしてた作業の手を止めた。
・・・・
ズズズズズ・・・・ガガガガガ!!!!
岩が崩れるような音がして
足音が聞こえなくなった。
・・どっか崩れたのかもしれない。
・・・・だいぶん古いし・・
とはいえ、
俺達の上の天井は特に異常がない。
ダマリさんが、俺達の隠れるベッドに腰掛けた。
立派な体格のダマリさんの体重に
古いべっどが大きく軋んだ。
ダマリさんはこちらを見ない様に
ヒソヒソと言う。
「・・ご心配なく、
罠の作動音です。」
「・・・ガスと
言ってませんでしたっけ?
・・あんな音がするんですか?」
青木も同じようにヒソヒソと言う。
すると、ダマリさんが応じた。
「罠が作動すると、
壁が動いて密閉された
ガス室に閉じ込めた上で
ガス噴射する仕組みです」
・・・閉じ込めるんなら、
侵入者対策としては
十分な気がするんだけど、
イイ気持ちになるガスを
吸わせる必要ってあるんだろうか?
「サンドロ達が地下に入って、
こちらに向かっている途中、
侵入者が罠に掛かったようです。
これから他の侵入者がいないかを
確認すると連絡がありました。
皆さんが変装する必要がありますので、
照明を付けますが、
まだ、安全が完全に
確認できたわけではありません。
申し訳ないですが、
なるべく静かに作業してください。」
これに対して、和泉が短く小声で答えた。
「・・わかった。」
続けてダマリさんは人形のあかりに向き直る。
「・・人形のあかりさん、道哉さん
あなた達は一旦、服を着てあの椅子に
隣り合って座りなさい。
鉄格子側よ。
そう・・俯く感じで・・・」
そう言いながら、
ダマリさんはベッドサイドにあった小さな照明を
テーブルの上に移動させて、点灯させた。
人形の俺とあかりは立ち上がって
椅子に腰を下ろし、
ダマリさんはあかり(人形)の
すぐ横に腰掛けた。
ダマリさんの大きな身体と
あかり(人形)の小さな身体が
牢の外側にテーブルの上に
置かれた照明に照らされて
鉄格子の向こう側の壁まで届く
長い影を落とした。
この影を見た人間がいたら、
牢内に3人の人間が居て、
話していると判断するだろう。
ベッド側にいる俺達の影は
ベッド奥の壁から天井に伸びていた。
和泉は大急ぎであかりの顔を変えていく。
眉とまつ毛を金色に塗りなおして
つくりものの鼻の上に
ソバカスを描いていく。
10分少々で、
金髪の女の子が出来上がった。
二重のぱっちりした青い瞳。
高い鼻。
肌の色が
元々かなりの色白なので、
俺達みたいに
全身ファンデーションがない分、
早いらしい。
短い時間で終わった
あかりの変身だけど、
・・しっかりばっちり、
この国の女の子に見える。
「うん。
可愛いじゃん。」
「ありがとうございます。」
和泉が満足そうに言うし、
あかりも手鏡に映った自分の顔に
なぜだか嬉しそうだけど・・
正直、いつもの方が可愛い。
見た目が全然違うのに、
声があかりでひどく変な感じがする。
じっと見ていると、
あかりが嬉しそうに聞いてきた。
「・・似合いますか?」
「・・・・・・・」
何とも言えずにいる俺に、
あかりが少し心配そうに手鏡を見直す。
「・・変ですか?」
「変じゃないわよ!
・・ね?ダマリさん」
和泉が食い気味にダマリさんに同意を求める。
ダマリさんは、知ってか知らずか・・
こっそりと俺に苦笑を向けた。
そのあと、和泉に応えた。
「ええ。
この国の女の子に見えます。
とても東洋人には見えないですよ。」
「・・・大橋。
和泉も普段の田口が可愛くないって
言ってるわけじゃないし、
ずっと変装して過ごすわけじゃないから・・」
後ろから青木がそう言って、
俺の肩をぽんぽんと叩いた。
そんな話をしていたところでダマリさんが
通信の腕輪を見て青ざめて固まった。
「・・ダマリさん、
何か悪い知らせですか?」
あかりが心配そうに話しかけると
ダマリさんは俺達の顔を見渡した後、
青ざめたままの顔を横に振った。
「・・・いえ、プライベートですから・・
お気になさらず・・
作業を進めてください。」
ベッドの裏でも和泉は
作業の手を休める気がない様で、
あかりの鼻を調整中だ。
「後にしたらイイじゃん・・」
俺がぼやくと、和泉がぎりっと睨んだ。
「バカ言わないでよ。
もう時間ロスしてるし、
ここまではやっちゃわないと、
またイチから
やり直しなんだから・・!!」
「・・はい。ごめんなさい。」
ヒソヒソ声だけどドスが効いてる。
俺は素直に頭を下げた。
付き合ってた時は、
わざとらしいぶりっ子だったと
記憶してるが、
怖い女ではなかった気がする。
・・っていっても
付き合ってた期間が一週間も
なかったんだけど・・
「「・・・」」
そんな風にしてたら、
ぽんぽんと背中を叩かれた。
振り向くと
あかりと青木が人差し指を
口の前に1本立てて
俺達を見ていた。
・・カツン・・カツン!!
遠くで聞こえていた
足音が段々と大きくなってくる。
ここにきてようやく
俺とダマリさん以外にも
足音が聞き取れたみたいで、
和泉は忙しなく
動かしてた作業の手を止めた。
・・・・
ズズズズズ・・・・ガガガガガ!!!!
岩が崩れるような音がして
足音が聞こえなくなった。
・・どっか崩れたのかもしれない。
・・・・だいぶん古いし・・
とはいえ、
俺達の上の天井は特に異常がない。
ダマリさんが、俺達の隠れるベッドに腰掛けた。
立派な体格のダマリさんの体重に
古いべっどが大きく軋んだ。
ダマリさんはこちらを見ない様に
ヒソヒソと言う。
「・・ご心配なく、
罠の作動音です。」
「・・・ガスと
言ってませんでしたっけ?
・・あんな音がするんですか?」
青木も同じようにヒソヒソと言う。
すると、ダマリさんが応じた。
「罠が作動すると、
壁が動いて密閉された
ガス室に閉じ込めた上で
ガス噴射する仕組みです」
・・・閉じ込めるんなら、
侵入者対策としては
十分な気がするんだけど、
イイ気持ちになるガスを
吸わせる必要ってあるんだろうか?
「サンドロ達が地下に入って、
こちらに向かっている途中、
侵入者が罠に掛かったようです。
これから他の侵入者がいないかを
確認すると連絡がありました。
皆さんが変装する必要がありますので、
照明を付けますが、
まだ、安全が完全に
確認できたわけではありません。
申し訳ないですが、
なるべく静かに作業してください。」
これに対して、和泉が短く小声で答えた。
「・・わかった。」
続けてダマリさんは人形のあかりに向き直る。
「・・人形のあかりさん、道哉さん
あなた達は一旦、服を着てあの椅子に
隣り合って座りなさい。
鉄格子側よ。
そう・・俯く感じで・・・」
そう言いながら、
ダマリさんはベッドサイドにあった小さな照明を
テーブルの上に移動させて、点灯させた。
人形の俺とあかりは立ち上がって
椅子に腰を下ろし、
ダマリさんはあかり(人形)の
すぐ横に腰掛けた。
ダマリさんの大きな身体と
あかり(人形)の小さな身体が
牢の外側にテーブルの上に
置かれた照明に照らされて
鉄格子の向こう側の壁まで届く
長い影を落とした。
この影を見た人間がいたら、
牢内に3人の人間が居て、
話していると判断するだろう。
ベッド側にいる俺達の影は
ベッド奥の壁から天井に伸びていた。
和泉は大急ぎであかりの顔を変えていく。
眉とまつ毛を金色に塗りなおして
つくりものの鼻の上に
ソバカスを描いていく。
10分少々で、
金髪の女の子が出来上がった。
二重のぱっちりした青い瞳。
高い鼻。
肌の色が
元々かなりの色白なので、
俺達みたいに
全身ファンデーションがない分、
早いらしい。
短い時間で終わった
あかりの変身だけど、
・・しっかりばっちり、
この国の女の子に見える。
「うん。
可愛いじゃん。」
「ありがとうございます。」
和泉が満足そうに言うし、
あかりも手鏡に映った自分の顔に
なぜだか嬉しそうだけど・・
正直、いつもの方が可愛い。
見た目が全然違うのに、
声があかりでひどく変な感じがする。
じっと見ていると、
あかりが嬉しそうに聞いてきた。
「・・似合いますか?」
「・・・・・・・」
何とも言えずにいる俺に、
あかりが少し心配そうに手鏡を見直す。
「・・変ですか?」
「変じゃないわよ!
・・ね?ダマリさん」
和泉が食い気味にダマリさんに同意を求める。
ダマリさんは、知ってか知らずか・・
こっそりと俺に苦笑を向けた。
そのあと、和泉に応えた。
「ええ。
この国の女の子に見えます。
とても東洋人には見えないですよ。」
「・・・大橋。
和泉も普段の田口が可愛くないって
言ってるわけじゃないし、
ずっと変装して過ごすわけじゃないから・・」
後ろから青木がそう言って、
俺の肩をぽんぽんと叩いた。
そんな話をしていたところでダマリさんが
通信の腕輪を見て青ざめて固まった。
「・・ダマリさん、
何か悪い知らせですか?」
あかりが心配そうに話しかけると
ダマリさんは俺達の顔を見渡した後、
青ざめたままの顔を横に振った。
「・・・いえ、プライベートですから・・
お気になさらず・・
作業を進めてください。」
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