Gemini 〜AFTER THE STORY〜

湖瑞

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1話 Castor side

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「ねぇ、父さん」
「んー?」
ボクは今、苛立っている。
原因はこれ。
ボクの前にいる1柱の神様…で、ボクの父。
全知全能の神(仮)ことゼウスだ。
今、彼はボクの前に堂々と寝転がっている。
例えるなら、スナック菓子片手に寝転がってTVを観る中年おじさん。
「…仕事しなよ。
ぐうたらしてないでさ」
「んー…あと少しー」
どっちが年上なのか分かりもしない、とよく言われる。
しっかり者の自覚はないので、ぐうたら父さんのせいだろう。
「この前もラブレター貰ってたし…
女遊びしてる暇あるなら、地上に降りて願い事の一つや二つ、叶えてきなよ。
…ねぇ、聞いてる!?」
父さんは「あー」と答えなのか呻き声なのか分からない返事をして寝返りを打った。
「…仕方ない…
いくら不死身とは言え、これは痛いでしょ…?」
ボクは精一杯矢を絞り、父さんめがけて打とうとした。
「うわぁぁぁ!!
ちょ、やめて!!
流石にそれは死ぬから!
いや、死なないんだけどさ…
精神的に死ぬから!!
息子に殺られるのは、美女に殺されるのの次くらいに本望ではあるけど、流石に今は死にたくない!!」
長い言い訳と土下座に免じて許すことにしよう。
周りからの評判は…
まぁ、ぶっちゃけ悪い。
そりゃそうだ。
父さんの不倫相手の息子の片割れの人間の方、なんて負のレッテルでしかない。
「…はぁ…
じゃあ、さっさと行って」
「お、お姿はどうしましょう!?」
…またナンパしに行くつもりか、このエロ親父。
「あー…もうなんでもどうぞ。
牛でも鷲でも勝手にすれば?」
面倒臭くなり、矢を仕舞いながらボクは答える。
「分かった!
じゃあ白鳥で…」
「いいから行きなよ」
はい…としょんぼり歩きかけて、父さんは立ち止まった。
「ポルックスには?
何か言伝あるなら、言っとくぞ」
_ポルックス…
ボクが自分勝手に置いていった双子の弟。
不死身だから、今も死ねないでいる。
_逢いたい…
なんて、身勝手な願いを言えるわけがない。
ボクは悔いをなくしてこちらに来た。
ボクが望んだことだから。
「…ううん、特に。
…こっちには来ちゃダメ、とだけ言っておいてよ。
あの子、すぐ追いかけてきちゃうから」
そうか、なんて哀しそうな目をする父さん。
何さ。別にいいでしょ。
ボクに何を望んでいるの?
あの子に言っても未練が残るだけなのに。
父さんは未だにボクの方を見つめている。
…あえて言うなら。
本当に言いたいことは…
「…大好き。
ボクの分まで、人生を楽しんで」
ボクの左目からは、不可抗力の涙。
なんで泣いているのか、本当に分からなかった。
もっと一緒にいたかった。
もっと一緒にいられると思った。
でも…それは不可能で。
悔しくて、哀しくて…でも泣けなかったから。
だって、ボクは『兄』なんだから。
父さんは笑って、ボクの頭を撫でた。
「撫で…でる暇があったら、早く行って!!」
「分かったって…」
父さんの手はゆっくりと外され、その手は白い翼へと姿を変える。
そして、満点の星空を駆けていった。
「頼んだよ、父さん」
ボクは涙を拭いて微笑んだ。
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