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第17話 皇女の映画化(ハリウッド編③)
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帝都攻略戦線に到着したライゼンバーグは、ウィリアム・ワグナー演じるサンダー軍曹と共に、長城の様に続く帝都防衛ラインを眺めている。
居並ぶ魔導士軍団の中央に和子の立ち姿が見て取れる。
(皇女が自ら前線に立っているのか…)
ライゼンバーグは感慨深げに敵を見つめながらサンダ―に問いかけた。
『なあ軍曹。あいつらは何で戦ってると思う?』
サンダー 軍曹は 噛みタバコをぐちゃぐちゃと噛みながら 答えた。
『それは祖国防衛の為でしょう』
『じゃあ俺たちは何の為に戦ってるんだ』
『自分は軍人ですから命令のままに動くだけです』
『そうだな。だが俺は沖島戦線で、前線を突破して見たのは女学生や子供で編成された部隊だった。君も見ただろう。あいつらは敵なのか?あいつらを殺すことが俺達の使命なのか?』
『…それは…こちらに銃口を向ける以上は敵でしょう』
ライゼンバ―グは苦笑する。
『そうだな。つまらないことを聞いてすまなかった』
サンダー軍曹は口に笑みを浮かべながら続ける。
『私は軍人ですから 司令官殿の命令には従います。だから沖島でも撤退命令には従いました』
それを聞いたライゼンバーグはサンダー 軍曹の肩に手をやり大きく笑った。
その時に通信兵が慌ただしく駆け寄って来た。
『ゴ―ドン将軍から連絡です!』
差し出された野戦電話の受話器を一瞬ためらいながら受け取ると、苛立ちに満ちた声が耳に突き刺さった。
『ライゼンバ―グ!なぜ奴らと睨み合ってる?あの目に見えないバリアに手も足も出ないと言うんじゃないだろうな!攻略の手立てはあるのか?』
『…ちゃんと考えてますよ』
『一体どうやるつもりだ?』
『沖島戦線でもあのバリアに苦労させられました。あれは高速で飛んでくる金属に反応して全て弾き返す。ただし生身の人間は弾けない』
『何だと!?』
『だからバリアの内側まで突撃して魔導師どもを叩きます』
『そんなバカな!たどり着くまでにやられるぞ!おい!聞いているのか…』
がちゃん という音とともに受話器が切られた。
『だから《やられない》メンバーを連れてきたんだ。 なあサンダー軍曹』
ライゼンバ―グはにやりと笑って軍曹の肩を叩いた。
『我々が行かされるのはこんな現場ばっかりですな』
『仕方ないさ。誰かがやらなきゃならない事だ。そろそろ行くとするか。』
『イエッサー!』
軍曹は素早くハンド・サルートを切った。
場面は戦闘シーンに切り替わった。
戦車や牽引砲による激しい射撃が行われ、前回のように礼和軍のバリアーにことごとく弾かれる。
『全く学習せん奴らですな。がははは!』
平九郎の高笑いが響き渡る。
合図と共に魔導士軍団が飛び上がり、手の平から繰り出される火炎弾によって次々と戦車や 砲台が破壊されていく。
ところが斑目慎之助が異変に気付いた。
いつの間にかライゼンバーグとサンダー軍曹が率いる歩兵団が間近にまで迫っていた。
(ちょっと待って!ライゼンバ―グ閣下はアメリアナ軍総司令元帥の筈…自ら先頭を走ってる!)
和子は目を白黒させた。
『そんなバカな!早すぎる!』
慌てた慎之助がアメリアナ軍に手をかざした途端、サンダー 軍曹によって手の平を銃弾で打ち抜かれて落下し、地面にうずくまってうめき声をあげた。
他の魔導士も一度発弾した為すぐに二の矢が打てず、アメリアナ軍の銃弾によって次々と倒されていく。
『殿下!これはいけません!私が防ぎますので早くお逃げを!』
平九郎が即すも和子は『私は逃げぬ!背は向けぬ!』と言って抜刀し、先頭にいるライゼンバーグに向かって挑みかかった。
ライゼンバ―グは『彼女は打つな!』と全軍に命令すると、鋭い金属音とともに将校用のサーベルを引き抜いて構えた。
和子は上段から鋭い一撃を振り下ろすも、ライゼンバ―グは両手で サーベルを持って受け止め、激しい金属の衝突音が起きた。
和子の軍刀を支えながら『皇女!降伏するんだ!』
とライゼンバ―グ。
『貴様たちこそ立ち去れ!』と叫ぶ和子。
その時サンダー軍曹が麻酔銃を放ち和子は脱力して崩れ落ちる。
『殿下―!』と叫んで 平九郎が駆け寄るも、眠っている和子の頭にサンダー軍曹が銃口を突きつけている。
ライゼンバーグは静かに『降伏しろ』と言った。
平九郎は和子を見て歯を食いしばった。そして、沈黙の後両手をゆっくり上げた。
この後、黒画面に重々しくナレーションが響いた。
『この戦いの後ほどなくして帝都は陥落した。礼和国は降伏し、ライゼンバーグは進駐軍として留まり敗戦国の処理を行った。彼は皇族を尊重し丁重に扱った。国民にも物資や食料を支援し混乱の収集に努めた。しかし 1ヶ月後、本国の意向を受けてウイリー・ウェーブが礼和国に派遣された。戦争犯罪人を裁く《帝都裁判》を行う為である』
進駐軍のビルの一室で怒声が響き渡る。
『だから 一体何の為の裁判なんだ!』
ライゼンバーグが執務室の机をドンと叩く。
前のソファーに座ったマイク・スタンバーグ演じるウィリー・ウェーブ裁判長がソファにゆったり座って表情一つ変えずに答える。
『だから落ち着きたまえ。礼和国の戦争責任者は裁かれなくてはならない。むろん、その支配者である皇族も例外ではない。彼らは処刑台に送られなければならない。これは本国の意向でもある』
『じゃあ一体何の罪でだ!』
『彼らは我が国の兵を多数殺害した。殺人を犯したものは裁かれる。当たり前の事だろう』
『ふん!なら俺達アメリアナ軍も裁かれないといけないな!』
『司令官殿、言っておくが我々は戦勝国だ。彼らを裁く権利は当然我々が持っている。そこを履き違えてはならない。』
『そうか…ではその裁判とやらに当然この俺も参加させて貰う。それでいいな!』
『君は戦後処理の責任者だ。認めないわけにはいかないだろう。但し…』
ウェーブは 上目遣いで ライゼンバーグをジロリと睨みつけた。
『私は今回の裁判の全権を委任されている。あまり余計な 口出しをしない事だ。それは君の為に言っておく』
ライゼンバーグは眉をひそめて肩をすくめた。
重苦しい不吉を予感させるような旋律と共に
帝都裁判の舞台である 千ヶ谷軍事法廷の様子が映し出された。
法廷最奥に一段高く設けられた裁判官席があり
3名の裁判官が横一列に並んでいる。
中央に裁判長、左右に副判事が着座している。
裁判官席の正面左側の検察席にはずらりと20人の検察官が並び、ギラついた目で大量の証拠書類を確認している。
向かって右側の弁護人席にはちょび髭で丸眼鏡の気弱そうな礼和人弁護士が一人だけちょこんと座っている。
そして中央前方の被告人席がゆっくりズームアップされる。
真田広行演じる久仁海皇と皇女和子を中心にA級戦犯28名が着席して重苦しい雰囲気に包まれている。
全員胸に整理番号のワッペンがついたねずみ色の囚人服を着させられていたが、皇族のみ儀礼用の正装軍服の着用を許されていた。
後方に傍聴席があり、報道陣や 一般傍聴者に混じって腕組みをして厳しい表情のライゼンバーグの姿があった。
裁判が開始されジミー・リー・ジョン演じる検察官 ヨーゼフ・B・キリンが人間らしい表情を一切見せず冒頭陳述と証拠提示を長々と行い最終論告した。
『海皇久仁、皇女和子並びに A 級戦犯28名には全員絞首刑を要求します』
議場にざわめきが広がる。
ライゼンバーグは立ち上がって大きな声で怒鳴った。
『ちょっと待て。被告人弁論はどうした!』
『静粛に!』
裁判長のウェーブはガベルを激しく打ち付けた。
そして忌々しげにライゼンバーグを睨みながら
声を絞り出した。
『………では被告人の発言を許可します』
この時に、静かながら厳粛で美しい旋律が流れ出し、被告人席を厳かに立ち上がる和子が正面から大写しにされた。和子は透き通るような声で語り始めた。
『裁判長。この度の戦争について海皇である我が父は最後まで反対の立場でした。ここにいる家臣や 軍人は皆、私の命令に逆らえず動いたに過ぎません。全ての戦争責任は私にあります。そこで私に提案があります』
『…申してみてください。』
『わたくしはこの場で《ハラキリ》を行います。そしてこの首を落とし、アメリアナ国家に献上いたします。それでここにいる我が父や軍人家臣全員を無罪として頂きたいのです』
(ハ…ハ…ハラキリ?わ…わ、わたくしが?)
和子は気を失いそうになった。
議場全体に悲鳴混じりの激しいざわめきが起きる。
『静粛に!静粛に!』裁判長は再び激しくガベル打ち着け議場を制した。
『そのようなふざけた発言は許可できません!』
普段冷静沈着なウェーブが珍しく取り乱していた。
しかしその時であった。
皇女和子はゆっくりと前に出て歩み寄り、その後ろに渡瀬謙演じる加藤義国が杖を鳴らしながら付き従った。彼女は裁判官席の正面の床に正座し、義国はその斜め後ろに立った。
裁判長は(何をする! 席に戻りなさい!)と言いかけたが声を発することができず、全身が硬直して動けない。
彼だけでなく法廷にいる全員が金縛りにあったように動けなくなっていた。
被告席の斑目慎之助の両目が怪しく点滅している。
和子はゆっくり軍服のボタンを開け、金の刺繍の入った詰襟のホックを外した。
上着の下には桜の刺繍が細かく入ったシルクのワイシャツと白のベストを着用し、皇室の桜の御紋が入った金色のネクタイを締めていた。
ベストとワイシャツの下半分のボタンを丁寧に外し下腹部を露出した。
そしてネクタイの剣先を真紅の唇で銜えると皇族専用の桜の御紋が入った自決用の小刀を両手で目の前に持ち上げ、ゆっくり鞘から刀身を引き抜いた。
銀色の刃が美しく光った。
(やめるんだ!皇女!)
ライゼンバ―グは叫ぼうとしたが口が動かない。
次回 ハリウッド映画編 完結!
居並ぶ魔導士軍団の中央に和子の立ち姿が見て取れる。
(皇女が自ら前線に立っているのか…)
ライゼンバーグは感慨深げに敵を見つめながらサンダ―に問いかけた。
『なあ軍曹。あいつらは何で戦ってると思う?』
サンダー 軍曹は 噛みタバコをぐちゃぐちゃと噛みながら 答えた。
『それは祖国防衛の為でしょう』
『じゃあ俺たちは何の為に戦ってるんだ』
『自分は軍人ですから命令のままに動くだけです』
『そうだな。だが俺は沖島戦線で、前線を突破して見たのは女学生や子供で編成された部隊だった。君も見ただろう。あいつらは敵なのか?あいつらを殺すことが俺達の使命なのか?』
『…それは…こちらに銃口を向ける以上は敵でしょう』
ライゼンバ―グは苦笑する。
『そうだな。つまらないことを聞いてすまなかった』
サンダー軍曹は口に笑みを浮かべながら続ける。
『私は軍人ですから 司令官殿の命令には従います。だから沖島でも撤退命令には従いました』
それを聞いたライゼンバーグはサンダー 軍曹の肩に手をやり大きく笑った。
その時に通信兵が慌ただしく駆け寄って来た。
『ゴ―ドン将軍から連絡です!』
差し出された野戦電話の受話器を一瞬ためらいながら受け取ると、苛立ちに満ちた声が耳に突き刺さった。
『ライゼンバ―グ!なぜ奴らと睨み合ってる?あの目に見えないバリアに手も足も出ないと言うんじゃないだろうな!攻略の手立てはあるのか?』
『…ちゃんと考えてますよ』
『一体どうやるつもりだ?』
『沖島戦線でもあのバリアに苦労させられました。あれは高速で飛んでくる金属に反応して全て弾き返す。ただし生身の人間は弾けない』
『何だと!?』
『だからバリアの内側まで突撃して魔導師どもを叩きます』
『そんなバカな!たどり着くまでにやられるぞ!おい!聞いているのか…』
がちゃん という音とともに受話器が切られた。
『だから《やられない》メンバーを連れてきたんだ。 なあサンダー軍曹』
ライゼンバ―グはにやりと笑って軍曹の肩を叩いた。
『我々が行かされるのはこんな現場ばっかりですな』
『仕方ないさ。誰かがやらなきゃならない事だ。そろそろ行くとするか。』
『イエッサー!』
軍曹は素早くハンド・サルートを切った。
場面は戦闘シーンに切り替わった。
戦車や牽引砲による激しい射撃が行われ、前回のように礼和軍のバリアーにことごとく弾かれる。
『全く学習せん奴らですな。がははは!』
平九郎の高笑いが響き渡る。
合図と共に魔導士軍団が飛び上がり、手の平から繰り出される火炎弾によって次々と戦車や 砲台が破壊されていく。
ところが斑目慎之助が異変に気付いた。
いつの間にかライゼンバーグとサンダー軍曹が率いる歩兵団が間近にまで迫っていた。
(ちょっと待って!ライゼンバ―グ閣下はアメリアナ軍総司令元帥の筈…自ら先頭を走ってる!)
和子は目を白黒させた。
『そんなバカな!早すぎる!』
慌てた慎之助がアメリアナ軍に手をかざした途端、サンダー 軍曹によって手の平を銃弾で打ち抜かれて落下し、地面にうずくまってうめき声をあげた。
他の魔導士も一度発弾した為すぐに二の矢が打てず、アメリアナ軍の銃弾によって次々と倒されていく。
『殿下!これはいけません!私が防ぎますので早くお逃げを!』
平九郎が即すも和子は『私は逃げぬ!背は向けぬ!』と言って抜刀し、先頭にいるライゼンバーグに向かって挑みかかった。
ライゼンバ―グは『彼女は打つな!』と全軍に命令すると、鋭い金属音とともに将校用のサーベルを引き抜いて構えた。
和子は上段から鋭い一撃を振り下ろすも、ライゼンバ―グは両手で サーベルを持って受け止め、激しい金属の衝突音が起きた。
和子の軍刀を支えながら『皇女!降伏するんだ!』
とライゼンバ―グ。
『貴様たちこそ立ち去れ!』と叫ぶ和子。
その時サンダー軍曹が麻酔銃を放ち和子は脱力して崩れ落ちる。
『殿下―!』と叫んで 平九郎が駆け寄るも、眠っている和子の頭にサンダー軍曹が銃口を突きつけている。
ライゼンバーグは静かに『降伏しろ』と言った。
平九郎は和子を見て歯を食いしばった。そして、沈黙の後両手をゆっくり上げた。
この後、黒画面に重々しくナレーションが響いた。
『この戦いの後ほどなくして帝都は陥落した。礼和国は降伏し、ライゼンバーグは進駐軍として留まり敗戦国の処理を行った。彼は皇族を尊重し丁重に扱った。国民にも物資や食料を支援し混乱の収集に努めた。しかし 1ヶ月後、本国の意向を受けてウイリー・ウェーブが礼和国に派遣された。戦争犯罪人を裁く《帝都裁判》を行う為である』
進駐軍のビルの一室で怒声が響き渡る。
『だから 一体何の為の裁判なんだ!』
ライゼンバーグが執務室の机をドンと叩く。
前のソファーに座ったマイク・スタンバーグ演じるウィリー・ウェーブ裁判長がソファにゆったり座って表情一つ変えずに答える。
『だから落ち着きたまえ。礼和国の戦争責任者は裁かれなくてはならない。むろん、その支配者である皇族も例外ではない。彼らは処刑台に送られなければならない。これは本国の意向でもある』
『じゃあ一体何の罪でだ!』
『彼らは我が国の兵を多数殺害した。殺人を犯したものは裁かれる。当たり前の事だろう』
『ふん!なら俺達アメリアナ軍も裁かれないといけないな!』
『司令官殿、言っておくが我々は戦勝国だ。彼らを裁く権利は当然我々が持っている。そこを履き違えてはならない。』
『そうか…ではその裁判とやらに当然この俺も参加させて貰う。それでいいな!』
『君は戦後処理の責任者だ。認めないわけにはいかないだろう。但し…』
ウェーブは 上目遣いで ライゼンバーグをジロリと睨みつけた。
『私は今回の裁判の全権を委任されている。あまり余計な 口出しをしない事だ。それは君の為に言っておく』
ライゼンバーグは眉をひそめて肩をすくめた。
重苦しい不吉を予感させるような旋律と共に
帝都裁判の舞台である 千ヶ谷軍事法廷の様子が映し出された。
法廷最奥に一段高く設けられた裁判官席があり
3名の裁判官が横一列に並んでいる。
中央に裁判長、左右に副判事が着座している。
裁判官席の正面左側の検察席にはずらりと20人の検察官が並び、ギラついた目で大量の証拠書類を確認している。
向かって右側の弁護人席にはちょび髭で丸眼鏡の気弱そうな礼和人弁護士が一人だけちょこんと座っている。
そして中央前方の被告人席がゆっくりズームアップされる。
真田広行演じる久仁海皇と皇女和子を中心にA級戦犯28名が着席して重苦しい雰囲気に包まれている。
全員胸に整理番号のワッペンがついたねずみ色の囚人服を着させられていたが、皇族のみ儀礼用の正装軍服の着用を許されていた。
後方に傍聴席があり、報道陣や 一般傍聴者に混じって腕組みをして厳しい表情のライゼンバーグの姿があった。
裁判が開始されジミー・リー・ジョン演じる検察官 ヨーゼフ・B・キリンが人間らしい表情を一切見せず冒頭陳述と証拠提示を長々と行い最終論告した。
『海皇久仁、皇女和子並びに A 級戦犯28名には全員絞首刑を要求します』
議場にざわめきが広がる。
ライゼンバーグは立ち上がって大きな声で怒鳴った。
『ちょっと待て。被告人弁論はどうした!』
『静粛に!』
裁判長のウェーブはガベルを激しく打ち付けた。
そして忌々しげにライゼンバーグを睨みながら
声を絞り出した。
『………では被告人の発言を許可します』
この時に、静かながら厳粛で美しい旋律が流れ出し、被告人席を厳かに立ち上がる和子が正面から大写しにされた。和子は透き通るような声で語り始めた。
『裁判長。この度の戦争について海皇である我が父は最後まで反対の立場でした。ここにいる家臣や 軍人は皆、私の命令に逆らえず動いたに過ぎません。全ての戦争責任は私にあります。そこで私に提案があります』
『…申してみてください。』
『わたくしはこの場で《ハラキリ》を行います。そしてこの首を落とし、アメリアナ国家に献上いたします。それでここにいる我が父や軍人家臣全員を無罪として頂きたいのです』
(ハ…ハ…ハラキリ?わ…わ、わたくしが?)
和子は気を失いそうになった。
議場全体に悲鳴混じりの激しいざわめきが起きる。
『静粛に!静粛に!』裁判長は再び激しくガベル打ち着け議場を制した。
『そのようなふざけた発言は許可できません!』
普段冷静沈着なウェーブが珍しく取り乱していた。
しかしその時であった。
皇女和子はゆっくりと前に出て歩み寄り、その後ろに渡瀬謙演じる加藤義国が杖を鳴らしながら付き従った。彼女は裁判官席の正面の床に正座し、義国はその斜め後ろに立った。
裁判長は(何をする! 席に戻りなさい!)と言いかけたが声を発することができず、全身が硬直して動けない。
彼だけでなく法廷にいる全員が金縛りにあったように動けなくなっていた。
被告席の斑目慎之助の両目が怪しく点滅している。
和子はゆっくり軍服のボタンを開け、金の刺繍の入った詰襟のホックを外した。
上着の下には桜の刺繍が細かく入ったシルクのワイシャツと白のベストを着用し、皇室の桜の御紋が入った金色のネクタイを締めていた。
ベストとワイシャツの下半分のボタンを丁寧に外し下腹部を露出した。
そしてネクタイの剣先を真紅の唇で銜えると皇族専用の桜の御紋が入った自決用の小刀を両手で目の前に持ち上げ、ゆっくり鞘から刀身を引き抜いた。
銀色の刃が美しく光った。
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