初恋の人と結婚したけど夫は私を妹としかみていない~~喧嘩して家出したら敵国の捕虜になりました~~

藤花

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11.提督府にて(2)

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 フリッツの言葉に甘えて、シルヴィアは提督府の中を邪魔にならないように、でも「ここに部外者がいますよ」とわかる程度に存在をアピールしつつ、自由に動くことにする。 といっても、まずはフリッツが入っていった個室への扉がある執務スペース内をそろそろと見て回る。

 その場にいる職員は恐らく全員軍人なのだろうが、シルヴィアのことは周知されているようで、誰かしらが友好的に話しかけてくれるので退屈しない。常に誰かの視界に入っていることで、うっかり入ってはいけないところに入ってしまう心配もない。



 あちこち動き回らなくても、そこら中に置かれている魔力を動力としない設備や備品は、シルヴィアにとっては始めてみるものだらけで、この執務スペースの物を見ているだけで一日がつぶせそうだ。



 ふと、シルヴィアがいる位置から室内の反対側で、職員が空間ヴィジョンで見ているものに、目が釘付けられる。

 それは皇帝の即位式での演説の様子で、バルコニーで演説するカルロとそれに熱狂する帝国民を映したニュース番組の録画のようだった。ヴィジョンの裏側からその映像を見て固まっているシルヴィアに気がついた職員が声をかける。



「これ、気になる?アンジェリーナちゃんはリアルタイムで見てたのかな。ここ共和国内では帝国の放送は見れないんだけど、軍施設の一部では受信できるようになってるんだ。承認は必要だけど、録画もこうして見れる」



 カルロがこの演説をしているとき、シルヴィアは部屋の中にいた。映像もなく、遠くで聞こえる声だけを聞いていた。表情、声のトーン、身振り。天性の美しさだけでなく、その全てで見るものを魅了する帝国の若き皇帝。国のこれからのあり方を民に向けて語るその姿は、幼いころから見知っていた筈のそれとは随分違って見える。それに熱狂する民の姿も初めて見る。



「……私、見ていなくて。初めて見ました。皇帝陛下の演説」



 帝国民でありながら、新皇帝即位の演説を見ていない、という言葉をどう受け止めたらいいかわからず、話を振った本人は言葉を返せない。新皇帝に反発する者だったから、演説など見なかったのかと思ったが、皇帝の映像を見るその目に否定的な色は見受けられない。むしろ、憧れや懐かしさを浮かべているように見えた。
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