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水道場の距離の秘密 前編
しおりを挟む第2話 水道場の距離の秘密 前編
ー私は、ある秘密を知っている。
正直、私はかわいい方だと思う。
モテるし。別に、勉強とか、運動とかが飛び抜けてできるわけでも、この学校一の美女とかってわけでもないけど、誰にでも同じ態度で、いつも明るくてかわいい。そりゃあモテないわけないとか、常々思っている。
私が好きになった人は、大体私のことを好きになってくれるし。
そう、こいつ以外は。
「あっ。はよ。」
「ん~?何ですか?その挨拶は。おはようございます琴音様でしょう?」
「はいはい。おはようございます琴音~(棒)」
「様!」
「琴音様~(棒)w」
こいつはいつもこんな感じ。
私が好きになったって、こいつは気づくはずもなく、なんていうか、鈍感?いや、バカ?まあ、それはないか。こいつが、頭がいいってことはみんな知ってるし。
すんごいイケメンってわけでも、一軍ってわけでもないけど、(まあうちは一軍だけど)勉強も運動も普通にできるし、ブスでもないから、まあまあモテる方だと思う。こいつは。(まあ、私ほどじゃないけど。)
「ああ。なんだ琴音かよ。」
私はもう一度、席替えのくじの、2という番号を見る。すると、こいつは1のくじを見せながら、
「よろしくな、琴音。」
そうつぶやく。
…よーっしゃー!!!
私は、喜びがバレないように、机の下で、こっそりガッツポーズする。
「なんだー。竹田かよ。まあ、よろしく。」
「琴音、竹田と隣なんだ。いーな。」
水道場で、友達の明美に話しかけられる。
「えー、別に全然よくないでしょ。」
そう、私は秘密を知っている。
水道場の、秘密を。
この、7つ並んだ水道。この7つある中で、例えば1人、人がいたとする。
そんな時、その人が仲の良い人だったら隣に
行き、あまり話したことのない人だったら、離れたところに行く。そう、水道場の距離は、人との距離なのだ。
ただ、私は気づいてしまった。竹田は、こいつはいつも、誰の隣にも行かないことを。
「何見てんだよ。w」
こいつは、友達がいないってわけではないし、むしろ友達は多い方だと思う。でも、こいつにとっては、そいつらとも、心のどこかで、距離を感じてるのかもしれない。
「…あんた、友達いる?」
「はぁ?何だよ急に。バカかよ。」
むっ。何だよ。せっかく私が心配してやったのに。
「ふんっ。もう心配なんてしてあげないからな。」
「は?なんだよそれwお前今日大丈夫か?」
「さいってー!」
そうやって、私はいつものようにこいつと、話す。何も変わらず。
でも、こいつにとっては、この時間も私も、どうでもいいのかもしれない。私にも、心のどこかで、距離を感じてるのかもしれない。だとしたら、私はこいつにつらい思いをさせているのかもしれない。
「…あんたさ、つらいと思ったら、つらいって言ってもいんだかんね。」
「はぁ?何それ。今日ほんと、お前w…」
ちょっとむかついた。でも、こいつの、ちょっと困ったような顔を見たら、やっぱり、こいつを助けたいって思ってしまったんだ。
「…だからさ、別に無理なんてしなくたってさ、だから、…私もいるんだし、話くらい…聞くし。」
「バーカ。別に無理なんてしてねぇよ。」
ほんっと!こいつは…
「…でも、ありがとな。」
…
「っ…あんたこそ。バーカっ!」
照れ隠しに、私は意地悪っぽく言ってみた。
「お。じゃあ、テストで勝負するか?俺バカだし。」
「…あんた、分かって言ってんでしょ。」
私はあきれたようにそう言う。
「ふっ。やっぱお前、いい性格してんな。」
あははっ。と笑う君の笑顔は、まぶしかった。
「そ。私は性格いいからね。」
「や、性格がいいんじゃなくて、いい性格なんだよ。」
「何それ。」
この時私はまだ、知らなかった。
水道場の距離の秘密を知っている私も、知らなかった彼の秘密をー
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