シカノスケ

ZERO

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尼子再興軍挙兵

挙兵

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そして遂に挙兵の日が来た。


尼子軍は300の兵で隠岐から船で出雲に上陸した。

総大将は尼子勝久、先鋒が山中鹿之介である。




まだ夜が明ける前である。




鹿之介は山中家に先祖代々伝わる『三日月の前立てに鹿の角の脇立ての冑』を付けて陣頭に立つ。


夜明け前なのか、反乱に無警戒なのか毛利軍に気付かれずに砦近くまで来た。


(遂にこの時が来た…!もう後には引けないっ…!)


鹿之介は先鋒の150人の兵に大声で言う。


「遂に我ら尼子一族の再興の時がきた!この合戦で勝てば出雲・石見の尼子旧臣が呼応する!何としてもこの合戦に勝つのだ!そして亡き経久公・晴久公から受けた恩に報いるのだ!」


鹿之介がそう言った途端に全兵が「オォー!」と言う。


「良いかぁ!今私達の後ろは海だ!文字通り私たちは背水の陣である!つまりこれは退路が無い、前に進み続けるしかない戦いだ!だが、その『前に進み続ける』って言うのが生きるって事だ!生きたいのなら前へ進めっ!」



大声で言い放つ鹿之介。

そして鹿之介は馬に乗り、敵の砦に駆けて行く。

そんな鹿之介に続き、150の兵が後ろから走って砦に突っ込んでくる。






毛利軍が異変に気付いたのはその少し後である。


九州出兵、宇喜多への牽制と忙しい毛利軍だが、出雲は反乱が絶対無いだろうと思っていたのか見張りが全くの無警戒であった。


そんなやる気の無い見張りなど簡単に倒せる。



馬で一番早く砦に着いた鹿之介は馬上弓で見張り3人を射て討ち取り、馬から降りて砦に火矢を放つ。



そしてこれが砦に広まり毛利軍が気付いた。



寝ていた毛利軍が慌て驚き、砦の中央に来ると鹿之介が待っていた。



「お、お前は尼子の山中鹿之介…!」

毛利の兵が怯えながら言う。

「見張りが随分と無警戒じゃないかな?お前ら尼子旧臣も完全に手懐けた訳じゃないのに怠けすぎ。」

そう言った直後であった。

鹿之介は正面の敵に槍を突き刺した。


毛利軍はまだ落ち着きを取り戻していない。

だからこの槍にも対応が出来なかった。



そして毛利の兵が出てきた部屋に入った。

恐らくこの部屋に毛利の兵達が沢山居るのだろう。


鹿之介は部屋の扉を開けると、いきなり矢が飛んで来た。


「ほう。部屋にいるのは10人程度か。」








その頃、鹿之介が砦の広場近くの部屋に入っていった時、尼子の他の兵が砦に着いたのである。


兵達は鹿之介が砦の敵に奇襲をかけて混乱させていた為、簡単に砦内に進入。



動揺した敵兵多数を討ち取る。



ある一人の雑兵は敵の首を取る。

しかし、仲間のもう一人の雑兵が言う。

「やめい。名の無い敵の首なんか持っていても手柄にゃならけぇ。」


そう言い雑兵は敵の首を捨てる。



本来の合戦なら雑兵達はとりあえず頑張った証しに敵の首を取り、手柄を貰おうとする。


しかし、名の無い敵の首を取ったところでたいした手柄にはならない。


やはり、戦国の世の雑兵は敵の大将を討ち取らなければちゃんとした報酬は得られないのである。


特に今回のような再興活動の場合は雑兵に恩賞が行き渡らない場合が多い。








尼子方の兵士は砦に突入し、敵を次々と討ち取る。


砦に突入し、1時間経つ頃にはほぼ砦の敵を討ち取った。


その兵、約500である。

毛利軍の混乱に乗じて1時間でこの成果である。

「意外と早く砦が取れたな。」

そう言うのは砦の奥に一人で突入して行った鹿之介た。


「山中様!この砦の大将の首は?」


「あぁ、勿論取ったさ。私たちの大勝利だ。」


鹿之介は砦の奥に進み、城主の部下をなぎ倒し、大将の首を取ったのである。



しかし凄いことに一人で複数の敵と戦った割りには全然疲れていない。


兵士はみんなヘトヘトなのに鹿之介一人は全く平気な顔をしている。


戦場ではいくら体力があっても精神的に疲れて合戦が終わると疲れが一気に出る人が多い。

それは当然、命を懸けた殺し合いをしているから当たり前の事だ。

だが、百戦錬磨の武士(もののふ)である鹿之介は数えきれないほどの合戦をしてきた。

その為、体力的にも精神的にもタフなのである。



少し落ち着いてから兵士が尼子の旗を持って鹿之介に渡す。


鹿之介はそれを地面に突き刺して大声で言う。

「ここに我らの旗を立てよ!我々尼子再興軍はこれより尼子復興の為に大国毛利を相手に挙兵をする!」


鹿之介が言った後に兵士・雑兵も鹿之介と同じことを大声で言った。



これを機に出雲・石見の尼子旧臣は鹿之介に呼応する。
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