4 / 38
【3時間目】魔王様、自己紹介のお時間です‼︎
しおりを挟む私立黒瀬川学園。
総生徒数は1000をくだらない日本屈指の名門進学校である。だが意外に歴史は新しく、未だ創立10周年も迎えてない新顔である事もまた事実だ。
「で、僕は固有魔法奪還のために能力を持ってしまった人と恋仲にならないといけないわけだ…」
「然りです、逢魔様」
ワックスの反射が美しい廊下を二人並んで僕らの所属する事になっているクラスへと向かう。
校門近くに貼ってあった新入生のクラス表を見たところ僕らはホオズキ組という組(どうやらこの学校のクラス表記は花から取る文化があるようだ)に入るらしい。
「でも思うんだけどさ、もし僕の固有魔法が男の人に渡ってた場合どうなるのさ?割とそれだったら絵面酷くなるよね?まあ一部の人には悦ばしい事だとは思うけど…」
「安心してください逢魔様。このラノベの設定はハーレムもののギャグラブコメディなのでありえません」
「いややめてぇメタ的発言。ギャグものにとってメタ表現は割と扱い困るんだから……」
なんてしょうもない話(僕にとっては死活問題ではあるけど)をしているうちに件のホオズキ組に着く。
中からはお互い初対面であろう人間しかいないはずだが中々盛り上がっている声が聞こえて来る。
存外、名門進学校とはいえ結局は年が近い人間ばかりなのだからそんな気負いする事もないのかもしれない。
ガラランッ!
景気良くクラスのドアを開けると中には30人程度の男女混合の至って普通のクラスであった。
僕的にはもっとキャラの濃ゆいやつらが待ち受けているのかとビクビクではあったが。
和気あいあいと盛況なクラスの中を見渡すと窓側の後ろに空席が二つあり、恐らく僕らの席である事が窺える。
ん?あれ、ちょっと待ってくんね?なんかおかしくね?
「あれ?ちょっと待って。なんでこんな都合よく僕ら隣同士の席なの?」
「それはもちのろん・うぃー◯りー、私が逢魔様の幼馴染でヒロイン枠なんですから隣同士になるのは必然の理ですよ?」
「いやぜってぇ聖良の固有魔法だろこれ!使ったろ!魔法っ!てか魔法繋がりで有名な映画出してくんじゃねぇ!ちなみに僕はなんだかんだアズ◯バンの囚人が好きですっ!」
まあでも内情を知る人が近くにいた方が便利だよね……?って事にしとこう、うん。
ところでこのクラスに能力持ちの人はいるんですかね。なんかさっきからピロパロピロパロ鞄の中から愉快な音が鳴ってるんですけど。
てかドラゴ◯レーダーのクオリティたけぇなぁおい!さすがだわ聖良ちゃんっ!
「あっ、この前のトイレに籠ってた子が逢魔様の前の席ですね」
「いやご都合設定が過ぎる」
「それと後3人このクラスに能力持ちの人がいらっしゃるようですね」
「もはや止めどないご都合設定の嵐。台風かなにか?」
てかこのクラスだけで4人てもう後5話ぐらいで終わりそうだよねこのラノベ。
まあ作品としてはつまらないけど僕からしたらすんげぇありがたい事だけど。
「安心してください逢魔様。まだこの先も話は続きますので。伏線とかもいっぱい撒いてあるので最後にどんでん返しありますよ、きっと」
「いやぜってぇ嘘だろおい!伏線とかテキトーな事言ってるけどほぼ勢いとその場しのぎで物語が展開してるから嘘おっしゃいな!」
なんて夫婦漫才をしてるうちに予鈴が鳴り、このクラスの担任であろう女性がスーツに身を包み入室してきた。
僕らは素直に(聖良の嫌疑がかけられた)席に付くと大人しくした。入学早々問題は起こしたくはないもんね……。
「さて、早速ですがみなさんに今からちょっと殺し合いをしてもらいます」
「いやちょっと待って!?なんかルビと本文あって無くない!?急にバトル・ロワイ◯ルするの僕ら!?」
「躑躅森 逢魔君。静かに」
「あっすいません………」
早速目立ってしまいましたねと聖良が耳打ちしてくる。いやだってしょうがないじゃん。こんなんツッコんでくれってボケじゃん、絶対。
てかなんだこの教師にこのクラス!?僕以外冷静沈着すぎるだろ!少しはデスゲームを疑やっ!
すると一番前の右、つまりは名前順最初であろう女の子がすっと立ち上がる。
いやほんと何も思わんのかねこの子達は…。
「私の名前は天野 亜衣子。アンドロイドです。以上。」
「いやちょっと待てえやぁぁっ!!アンドロイドって!?アンドロイドってなに!?そりゃ確かに最初の自己紹介はついついボケてみんなの人気を得ようと画策するけどそんな変化球なボケある!?誰が拾うんだよそのボケ!?てかアンドロイド設定は無理あるだろが!今後三年間続けるにはっ!!」
「すごい大◯班長みたいなツッコミしますね逢魔様」
「いややかましいわぁ~~~い!!!」
「はい逢魔君、お静かに」
「あっ…すいません……」
アンドロイドであるらしい亜衣子さんはそのままふっと僕らに目をやるとそのまま着席した。
なんかすげぇお前空気読めやって言われた気分ですわ……。
そして亜衣子さんの後ろの席である男が立つ。
「僕も実はアンドロイドです」
「いやまさかの二連続!?なにここデト◯イトの世界観なんですか!?」
\アンドロイドニジユウヲッ!/
いやうるさいわ。誰だよ今の。あ、隣からだから……って聖良かぁ~~い!
「あっいや僕はケータイがAndr◯idって事です……」
「あっ…そういうこと………」
とんだ大っ恥かいてしまった。
多分みんなの僕に対しての心象はこのクラス最低になるだろう。とほほ……。
すると亜衣子さんが閃いたように突如立ち上がった。
「あっ…ちなみに私はiPh◯neです」
「いやあんたこそAndr◯id持てやぁ!!なんでそこチグハグなんだよ!!設定に合わせていけよ!せめて!!」
────その後も順々と"殺し合い"は進んでいった。
かくいう僕はツッコミをしすぎたせいで担任の本庶 拓実先生にしばかれてしまった。なんで?最初にボケたの先生だよね。てか先生パワーありすぎだろ、僕の頭今時漫画でも見ないほど大きなたんこぶできちゃったよ…。
そして遂に僕らの番がきた。
隣の聖良が先に立つ。(よくよく考えたら名前順になるなら聖良僕の後ろだよね?てか名前順で自己紹介してくなら聖良の次僕の列順の前の人だよね?あれ?これツッコんだら負けなやつ?)
「私の名前は躑躅森 聖良と申します。スリーサイズは上から92ー58ー90です。そしてこの隣に座っている躑躅森 逢魔君のお付きのメイドであり、幼馴染であり、彼女であり、嫁です。以後よろしくお願いします」
「いや、スリーサイズの情報いる?てか僕君の彼女でも嫁でもないよね。よろしくじゃないよこれじゃあ僕多分他の聖良に熱い視線送ってる一部の男子諸君に刺されるよね」
うおおおおおおおお!!!
クラス中に男子の歓喜の声が響いた。ある者は泣き崩れ、ある者は失神し、ある者はその神々しさに跪く者もいた。
そう、聖良はたった一回の自己紹介でクラスのアイドル、もとい聖女になったのであった。
そして僕は殺された。
一部の暴徒化した男子に後ろから一突きされたのだ。
僕の訃報はたちまち故郷であるメイベル中に広まったのであった。
「いや僕死んでねぇしオチが思いつかなかったからってテキトーに終わらすのやめてもらえません?」
☆次回、逢魔死す!デュエル、スタンバイ!────────
───────────────────────
【登場人物紹介】
○躑躅森 逢魔
主人公で魔王の息子。
奪われた力を取り戻すため降臨したはいいがトラブル続きで参っている。ちなみにツッコミしすぎて一話目の自分の失態はもう忘れている都合の良いやつ。
○躑躅森 聖良
逢魔のお付きのメイドさんでサポート役でお嫁さん(本人談)。
本人はいたって冷静沈着であるが逢魔が絡むとゴークレイジーになる恋する乙女?な一面も。
ちなみにスリーサイズは本物(逢魔談)。
○天野 亜衣子
ホオズキ組所属の女生徒。
本人曰くアンドロイドであるがケータイはiPh◯neだっりちょっと適当な一面も。
ちなみにアンドロイドだけに鉄面皮。
○本庶 拓実
私立黒瀬川学園に所属する女教師でありホオズキ組の担任。
敏腕教師だという噂があるが登場して開口一番がバトロワのセリフであるあたり少しクレイジーな雰囲気を感じる(逢魔談)。
○僕
ホオズキ組に所属するモブの(ケータイが)アンドロイド。
今後の出番はその都度考えるのでもしかしたら没キャラになるかもしれない不憫な子。
名前はまだない。
○ロン・ウィー◯リー
偉大な作家、J.K.ロー◯ング(jkでロリ入ってるってちょっと運命感じるよね)が愛する子供のために書いたハリー・ポ◯ターシリーズに登場する男の子。
ロン役の俳優さんちょっと最近やつれてるから心配ではある。
○大◯班長
目はまだ出てなかった!だからこの勝負はノーカン!ノーカン!
今は原作のスピンオフで人気。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる