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18王子の青い暴走
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舞踏会の準備は着々と進んでいた。
王家お抱えの仕立て屋が城へ呼ばれ、応接間は色とりどりの布地や装飾品で埋め尽くされている。
「殿下、ドレスと装飾品はお相手のお嬢様の雰囲気に合わせるのが肝心でして」
仕立て屋が眼鏡を光らせながら、カインに丁寧に説明する。
「……雰囲気……?」
カインは眉をひそめ、言葉を反芻した。
「ええ。たとえば髪の色や肌の色はもちろん、性格や立ち居振る舞い……その方を一番美しく見せるものを選ぶのです」
カインはじっと考え込む。
そして、不意に顔を上げた。
「──セリーヌには、この色が似合うと思う」
彼が指さしたのは、深く澄んだ青色の布地だった。それは、彼自身の瞳の色とまったく同じ色だった。
「……っ!?」
一瞬にして場の空気が凍りつく。
応接間にいた母王妃、王太子アレクシス、そして文官の数名。全員が固まった。
(((それ、告白じゃん!?!?!?)))
心の中で一斉に叫ぶ。
カインはそんな空気には気付かず、真剣な顔で続ける。
「この色は、静かで落ち着いているけど、芯が強い。……セリーヌに似合うと思うんだ」
王妃は口元を押さえ、(やだこの子……素直すぎてもう……!)と内心転げ回る。アレクシスは頭を抱え、(うちの弟はバカなのか天才なのか……!)と呻く。文官たちは机の下で両拳を握りしめ、(殿下ァァァ!それはもうプロポーズに等しいィィ!)と心の中で絶叫していた。
そのとき。
「……まあ、素敵な色ですね」
控えめな声がした。振り返ると、そこにセリーヌがいた。採寸のために呼ばれており、ちょうど扉から入ってきたところだったのだ。
「せ、セリーヌ!?」
「で、殿下……!?」
一斉に場がざわめく。王妃とアレクシスは心の中で叫んだ。
(い、今の聞かれた!?聞かれてたよね!?)
しかし、当のセリーヌは全く気付いていなかった。ただ真面目に、仕立て屋と同じ方向を見て頷いている。
「殿下がお選びになったのですね。落ち着いた青、とても上品ですし……舞踏会にふさわしいと思います」
──スルー!?
全員が机の下で崩れ落ちる。
(な、なぜだセリーヌ嬢!気付いて!あれは王子の魂の叫びなんだ!)
一方、カインはというと、セリーヌに「いいと思う」と言われて顔を真っ赤にしていた。
「そ、そうか……なら、よかった。似合うと思ったんだ。」
「はい。ありがとうございます」
仕立て屋は咳払いをして、話を続ける。
「それでは、採寸に入りましょう」
セリーヌは軽く礼をして、裾を整えながら立ち上がる。採寸が始まると、カインはなぜか固まってしまた。メジャーをあてられ、肩や腰の寸法を測られていくセリーヌを、視線のやり場に困りながら見守るしかない。
(ちょ、ちょっと待て俺!見ちゃいけない!けど……でも!……なぜだ、足が動かない!)
と、脳内で葛藤しつつ、ずっと突っ立ってしまう。場が静まった瞬間。
「……カイン?」
低めの声で王妃が扇子を“パチン”と閉じ、扇子の先でカインの頭をはたく。
「女性の採寸に立ち会うなど……失礼だと思わない?」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
カインは飛び上がり、そのまま部屋を飛び出した。
――が、廊下に出たところで、待っていたアレクシスと激突。
「おわっ!?カイン!?……お前、何やってんだ」
「ち、違う!俺は!……俺はただ、採寸を……!」
「採寸を見る趣味でもできたのか?」
「ちがあああうううっ!!」
必死の弁解に、廊下の隅で控えていた文官軍はこらえて肩を震わせ、王妃と仕立て屋は中で静かにため息。セリーヌだけが「殿下、大丈夫でしょうか……?」と真顔で心配していた。
やがて採寸が終わり、カインが呼ばれる。仕立て屋が満足げにメモを取る。
「完成までに数日いただきます。ですが、必ずや殿下のお心にかなう仕上がりに」
「……よろしく頼む」
カインは疲れ切ったように真顔で頷いた。セリーヌ本人はドレスの色の意味に全く気付かないまま、穏やかに「どうなるのかしら」と心を弾ませていた。
その後も装飾品選びが進んだが、「イヤリングもドレスの色に合わせるといいな」「ネックレスも同様だ」とカインの追撃は止まらない。居合わせた側付き文官も侍女も王妃もまともに集中できなかった。セリーヌはもカインも本気で「似合う色を選んだだけ」と思っている。
――爆弾を投下したことに、本人たちだけが気づいていないのだった。
王家お抱えの仕立て屋が城へ呼ばれ、応接間は色とりどりの布地や装飾品で埋め尽くされている。
「殿下、ドレスと装飾品はお相手のお嬢様の雰囲気に合わせるのが肝心でして」
仕立て屋が眼鏡を光らせながら、カインに丁寧に説明する。
「……雰囲気……?」
カインは眉をひそめ、言葉を反芻した。
「ええ。たとえば髪の色や肌の色はもちろん、性格や立ち居振る舞い……その方を一番美しく見せるものを選ぶのです」
カインはじっと考え込む。
そして、不意に顔を上げた。
「──セリーヌには、この色が似合うと思う」
彼が指さしたのは、深く澄んだ青色の布地だった。それは、彼自身の瞳の色とまったく同じ色だった。
「……っ!?」
一瞬にして場の空気が凍りつく。
応接間にいた母王妃、王太子アレクシス、そして文官の数名。全員が固まった。
(((それ、告白じゃん!?!?!?)))
心の中で一斉に叫ぶ。
カインはそんな空気には気付かず、真剣な顔で続ける。
「この色は、静かで落ち着いているけど、芯が強い。……セリーヌに似合うと思うんだ」
王妃は口元を押さえ、(やだこの子……素直すぎてもう……!)と内心転げ回る。アレクシスは頭を抱え、(うちの弟はバカなのか天才なのか……!)と呻く。文官たちは机の下で両拳を握りしめ、(殿下ァァァ!それはもうプロポーズに等しいィィ!)と心の中で絶叫していた。
そのとき。
「……まあ、素敵な色ですね」
控えめな声がした。振り返ると、そこにセリーヌがいた。採寸のために呼ばれており、ちょうど扉から入ってきたところだったのだ。
「せ、セリーヌ!?」
「で、殿下……!?」
一斉に場がざわめく。王妃とアレクシスは心の中で叫んだ。
(い、今の聞かれた!?聞かれてたよね!?)
しかし、当のセリーヌは全く気付いていなかった。ただ真面目に、仕立て屋と同じ方向を見て頷いている。
「殿下がお選びになったのですね。落ち着いた青、とても上品ですし……舞踏会にふさわしいと思います」
──スルー!?
全員が机の下で崩れ落ちる。
(な、なぜだセリーヌ嬢!気付いて!あれは王子の魂の叫びなんだ!)
一方、カインはというと、セリーヌに「いいと思う」と言われて顔を真っ赤にしていた。
「そ、そうか……なら、よかった。似合うと思ったんだ。」
「はい。ありがとうございます」
仕立て屋は咳払いをして、話を続ける。
「それでは、採寸に入りましょう」
セリーヌは軽く礼をして、裾を整えながら立ち上がる。採寸が始まると、カインはなぜか固まってしまた。メジャーをあてられ、肩や腰の寸法を測られていくセリーヌを、視線のやり場に困りながら見守るしかない。
(ちょ、ちょっと待て俺!見ちゃいけない!けど……でも!……なぜだ、足が動かない!)
と、脳内で葛藤しつつ、ずっと突っ立ってしまう。場が静まった瞬間。
「……カイン?」
低めの声で王妃が扇子を“パチン”と閉じ、扇子の先でカインの頭をはたく。
「女性の採寸に立ち会うなど……失礼だと思わない?」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
カインは飛び上がり、そのまま部屋を飛び出した。
――が、廊下に出たところで、待っていたアレクシスと激突。
「おわっ!?カイン!?……お前、何やってんだ」
「ち、違う!俺は!……俺はただ、採寸を……!」
「採寸を見る趣味でもできたのか?」
「ちがあああうううっ!!」
必死の弁解に、廊下の隅で控えていた文官軍はこらえて肩を震わせ、王妃と仕立て屋は中で静かにため息。セリーヌだけが「殿下、大丈夫でしょうか……?」と真顔で心配していた。
やがて採寸が終わり、カインが呼ばれる。仕立て屋が満足げにメモを取る。
「完成までに数日いただきます。ですが、必ずや殿下のお心にかなう仕上がりに」
「……よろしく頼む」
カインは疲れ切ったように真顔で頷いた。セリーヌ本人はドレスの色の意味に全く気付かないまま、穏やかに「どうなるのかしら」と心を弾ませていた。
その後も装飾品選びが進んだが、「イヤリングもドレスの色に合わせるといいな」「ネックレスも同様だ」とカインの追撃は止まらない。居合わせた側付き文官も侍女も王妃もまともに集中できなかった。セリーヌはもカインも本気で「似合う色を選んだだけ」と思っている。
――爆弾を投下したことに、本人たちだけが気づいていないのだった。
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