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第1章.嘘つき預言者の目覚め
43 街道の盗賊団 ③
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「なぁ…やたら長い行軍だと思わね?」
くせのある鳶色の髪と更に赤味がかった瞳の少年は、双眼鏡を使い小高い丘の上からアウロニア帝国の軍列を見下ろした。
腕をぐねぐねと生物のように動かし
「大蛇みてえだ」
自分の言葉を気に入ったように笑った。
口調とはかけ離れたいるが、とても端正なつくりの顔立ちと口元に印象的な黒子がある少年だ。
ニキアス程では無いけれど、背も高く戦士のような細身の筋肉の付き方をした肢体である。
「なぁ、そう思わないか?タウロス」
黒子の少年は隣のしっかりと鎧を装着し、巨岩のように佇む大男に向かって訊いた。
「…そうですね、ただ隊列の編成が分かりやす過ぎますな」
『捜して見れば宝物の護衛団がどこなのか直ぐ分かる』と、見かけのわりには高い声で少年へ返答した。
「ふ…そうだな、でもやり易いのはかえってありがてえぜ。目的は金品と玉璽だしな。狙いがピンポイントでいける」
少年は黒子のある端正な口元をニヤリと歪めて笑った。
それは歳のわりに大人びた表情だった。
「将軍殿は誰だ?どうだ?あのエロ親父さんか?」
少年は双眼鏡を動かし行軍の最初の方を確認すると小さく呟いた。
「あん…嘘だろ?あの黒仮面…見覚えがあるぜ」
少年のおどけた口調から一気に冷たい刃の様なそれに変わる。
「面白れえ展開になったな…よーし、準備しろタウロス」
「方針変更だ――やるぞ」
黒子の少年はタウロスの方を向き、ニヤリとしてニキアスとは対照的な白い仮面を被ると手の平を組んでぽきぽきと指を鳴らした。
*********
思っていたよりも行軍は順調に進んでいる。
ニキアスは思った。
(順調すぎるくらいだ)
街道の行軍はスムーズで、兵らは皆緊張を解きながら進んでいる。
このままいけばハルケ山の真横を通り順調にアウロニアへ入れるだろう。
(マヤはどうしているだろうか?)
気になってユリウスへ様子を見に行かせたが特に不便はなさそうだ。
「ただ何故かしきりに街道の様子を気にしています」
ユリウスが言うには、マヤがこの街道を通る際に何かを気にしていて、少し落ち着かなそうだったとの事だ。
(盗賊団の事だろうか)
「何かの内容は言っていたか?」
「いえ…ハッキリとは分からないと」
しかしマヤはとても不安そうに言ったという。
『とても嫌な感じがするんです。何かの視線に…少しずつからめ捕られていくような』
「そんな事を…」
(預言者として何か感じるところがあるのか)
一瞬マヤの処に行って確認したかったが、マヤには『分からない』と言われるだけだろう。
ニキアスはその代わりにユリウスへ
「各隊に、気を緩めるなと周りに気を配れと伝達しろ」
と命令をしたのだった。
*********
(何だろう…この感じ)
わたしは妙な胸騒ぎと、気持ちの悪い感覚がつき纏うのを感じていた。
まるでずっと誰かに見られているようだ。
『監視されている』というか――。
実際今は馬車の中で傍にいるのはナラだけなのだが、常に見られている様な感覚が気になって仕方がない。
(感覚的な物だから誰にも説明出来ないのがつらいな…)
「ナラ…誰か外から見てる?」
とわたしは何度か彼女に訊いたが、彼女はキョトンとするだけで
「いえ…どなたもいらっしゃらないですよ」
と馬車の覗き窓から外を確認しながら言った。
「きゃっ…!」
ガタンッと一際大きく馬車が揺れて、わたしは車体に伝わる振動で座席から飛ばされそうになった。
馬車の椅子に捕まりながらナラが言った。
「大丈夫ですか?マヤ様…そろそろハルケ山の近くを通るそうですから余計に揺れますよ」
「わ…わかったわ」
(そうか…だからなのね)
ニキアスと馬で来た時にもハルケ山近くの道路の舗装が粗くなっていたのを思い出した。
しばらくはこの馬車酔いしそうな振動に耐えなければいけないのだろう。
その時微かに聞き覚えのある――犬の遠吠えが聞こえたような気がした。
くせのある鳶色の髪と更に赤味がかった瞳の少年は、双眼鏡を使い小高い丘の上からアウロニア帝国の軍列を見下ろした。
腕をぐねぐねと生物のように動かし
「大蛇みてえだ」
自分の言葉を気に入ったように笑った。
口調とはかけ離れたいるが、とても端正なつくりの顔立ちと口元に印象的な黒子がある少年だ。
ニキアス程では無いけれど、背も高く戦士のような細身の筋肉の付き方をした肢体である。
「なぁ、そう思わないか?タウロス」
黒子の少年は隣のしっかりと鎧を装着し、巨岩のように佇む大男に向かって訊いた。
「…そうですね、ただ隊列の編成が分かりやす過ぎますな」
『捜して見れば宝物の護衛団がどこなのか直ぐ分かる』と、見かけのわりには高い声で少年へ返答した。
「ふ…そうだな、でもやり易いのはかえってありがてえぜ。目的は金品と玉璽だしな。狙いがピンポイントでいける」
少年は黒子のある端正な口元をニヤリと歪めて笑った。
それは歳のわりに大人びた表情だった。
「将軍殿は誰だ?どうだ?あのエロ親父さんか?」
少年は双眼鏡を動かし行軍の最初の方を確認すると小さく呟いた。
「あん…嘘だろ?あの黒仮面…見覚えがあるぜ」
少年のおどけた口調から一気に冷たい刃の様なそれに変わる。
「面白れえ展開になったな…よーし、準備しろタウロス」
「方針変更だ――やるぞ」
黒子の少年はタウロスの方を向き、ニヤリとしてニキアスとは対照的な白い仮面を被ると手の平を組んでぽきぽきと指を鳴らした。
*********
思っていたよりも行軍は順調に進んでいる。
ニキアスは思った。
(順調すぎるくらいだ)
街道の行軍はスムーズで、兵らは皆緊張を解きながら進んでいる。
このままいけばハルケ山の真横を通り順調にアウロニアへ入れるだろう。
(マヤはどうしているだろうか?)
気になってユリウスへ様子を見に行かせたが特に不便はなさそうだ。
「ただ何故かしきりに街道の様子を気にしています」
ユリウスが言うには、マヤがこの街道を通る際に何かを気にしていて、少し落ち着かなそうだったとの事だ。
(盗賊団の事だろうか)
「何かの内容は言っていたか?」
「いえ…ハッキリとは分からないと」
しかしマヤはとても不安そうに言ったという。
『とても嫌な感じがするんです。何かの視線に…少しずつからめ捕られていくような』
「そんな事を…」
(預言者として何か感じるところがあるのか)
一瞬マヤの処に行って確認したかったが、マヤには『分からない』と言われるだけだろう。
ニキアスはその代わりにユリウスへ
「各隊に、気を緩めるなと周りに気を配れと伝達しろ」
と命令をしたのだった。
*********
(何だろう…この感じ)
わたしは妙な胸騒ぎと、気持ちの悪い感覚がつき纏うのを感じていた。
まるでずっと誰かに見られているようだ。
『監視されている』というか――。
実際今は馬車の中で傍にいるのはナラだけなのだが、常に見られている様な感覚が気になって仕方がない。
(感覚的な物だから誰にも説明出来ないのがつらいな…)
「ナラ…誰か外から見てる?」
とわたしは何度か彼女に訊いたが、彼女はキョトンとするだけで
「いえ…どなたもいらっしゃらないですよ」
と馬車の覗き窓から外を確認しながら言った。
「きゃっ…!」
ガタンッと一際大きく馬車が揺れて、わたしは車体に伝わる振動で座席から飛ばされそうになった。
馬車の椅子に捕まりながらナラが言った。
「大丈夫ですか?マヤ様…そろそろハルケ山の近くを通るそうですから余計に揺れますよ」
「わ…わかったわ」
(そうか…だからなのね)
ニキアスと馬で来た時にもハルケ山近くの道路の舗装が粗くなっていたのを思い出した。
しばらくはこの馬車酔いしそうな振動に耐えなければいけないのだろう。
その時微かに聞き覚えのある――犬の遠吠えが聞こえたような気がした。
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