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野良猫
しおりを挟むレノムリティス国、レノマリの街。
この街は活気のある
とても過ごしやすい街だと
他国や他の街に評判らしい。
ただ、一つの事を
気にしなければの話だが。
街の中心にある噴水広場から
少し歩いた住宅街、
そこには宿屋や高そうな家、
廃墟ビルが複数建っている。
その廃墟ビルは今にも崩れそうなため
立ち入り禁止になっていて
入り口が塞がれている。
誰も入ることなどできないはずの
そのビルの中に誰かが居ると噂されている。
+++
ふと、何かの気配を感じ目を覚ます。
自分以外に誰か居る、
そぅ感じ取る事に時間など必要なかった。
「………。そこにいる奴、誰だ」
「………。」
返事がない。
それもそぅかと思いながらも
もぅ一度問いただす。
「もぅ一度だけ言う。誰だ」
月の明かりが射す光の奥の暗闇に
睨みを利かせると相手は両手を上げながら
明るい場所へと歩いてきた。
「そんなに怒んなさんなって、先客が居たとは思わんかったからな。すこーし様子を見てただけなんよ」
出てきたかと思えばいきなり喋りだす。
話す事が嫌いな自分にとっては
あまり相性の良くない相手だと思った。
「ここは俺の縄張りだ。寝床を探してるのなら他所を当たれ」
「そーゆー訳にはいかん」
「何?」
「だって俺、この街に来たばっかやもん。行く宛ないし、それにここ静かで気に入ったし」
やはりコイツは気にくわない奴だ、
と再認識する。
見逃してやると言っているのに
気に入ったから嫌だと断られたのだ。
ふざけている。
「なら、どぅする」
「? どぅするって?」
本気でいっているのだろうか。
野良猫同士がが寝床を火種に行うのは
ひとつしかないだろうにと
思いながらも表情には出さずに
相手を見据えたまま答える。
「ここは俺のテリトリーだ。そこに勝手に入ってきて見逃してやると言っているのに断ったのはお前だ。お前はここを寝床にしたいんだろ? 生憎と俺はここを譲る気はない」
「ぅんぅん」
何でこんな奴にいちいち
説明しなければならないのだろぅ…。
「……、だったら縄張りと寝床を賭けて争うしかないだろ」
「? 何で争う必要があるん?」
「は?」
相手の言葉に呆れ
数秒だけ固まってしまった。
何で?さっきの説明聞いてなかったのか?
コイツ。
「一緒に住めばいーやん、ここめっちゃ広いんやし。ビルなんやし」
「……、このビルは少しでも衝撃を加えると壊れる危険性がある。この部屋はその中でも一番丈夫な部屋だ。お前が他の部屋に行って何かしようものならビルごと崩れるかもしれない」
「ほへぇ~…、そんな危ないとこやったんかぁ…」
「だから出ていけ」
はやくここから出ていってほしい。
「ぃやいや、何でそんな危険なとこに住んで…」
「ここが落ち着くからだよ」
「でも…、」
他の人からすれば
触れば壊れてしまう可能性のあるビルに
何故、居座るのか不思議でしかないだろぅ。
でもここは一番 自分にとって
落ち着く場所なのだ。
だから、誰がなんと言おうと
ここから動くつもりはない。
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