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本編
第132話
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広大な田畑を左手に見て、泥と雪で汚れた畦道を走っていく。
シートに凭れたシュンヤはおもむろに胸ポケットをさぐると、折れ曲がった煙草を一本取り出し火をつける。開いた窓から顔を出して紫煙を風に流しながら、溜息のように言った。
「着替えちまったのかよ。着物、似合ってたのに」
彼が手放しで褒めるのはめずらしいことだったが、まっすぐに前を向いたままのチカルの横顔に喜びの色は見えない。
「病院に和装で行くなんて悪目立ちしてしまうし……リイコに頼んで服を借りたの」
言葉を発するにつれ、声が小さくなっていくのが自分でもわかる。こうしてふたりきりになると、彼によって刻まれた痛みやソファにこぼれた血の色の記憶が甦り、強い嫌悪と憎しみが湧いてくるのを感じた。
「置手紙を見てから来たのか?」
ハンドルを握る手に汗が滲む。厭悪の感情が怒りに変わりそうになるのをおさえて、チカルは淡々とした口調で答えた。
「そうよ。荷造りする時間も惜しくて、仕事帰りの格好のまますぐに家を出てきたの……」
「へえ……」
ぼんやりと相槌を打った彼は、再び窓の外に煙を逃がす。連絡を無視していたことについて、いよいよ詰問されるかと身構えたが、意外なことになにも言ってこない。
シュンヤの実家の前まできて、車を停めた。彼はしんどそうな様子で下車すると、運転席側に回り込む。軽く手を挙げたのでそのまま行ってしまうかと思いきや、ふいに動きをとめてこちらを覗き込んできた。一瞬ためらったが、窓を下げる。
「どうしたの?……なにか渡すものとか伝言とか、ある?」
「必要なものは昨日ぜんぶ揃えて持ってったから平気。じいちゃんに、チカルが向かうこと連絡しとくわ。スマホめったに見てくれないから気付かないかもしんないけど」
淡々とした口調で言った彼は薄い唇を引き結ぶ。そうして黙ったまま、チカルの顔を見つめた。痛いくらい凝視してくるその視線がゆっくりと左耳に移動したのを見て、彼女は思わず全身を強張らせる。
「それ」
シュンヤは顎先で傷を覆っているテープを示し、
「もしかして病院行ったのか?」
「血が止まらなかったから……」
「大袈裟なんだよ。そんなのほっとけば治るのに」
責めるような口調で言われたが、チカルは特別な反応を見せない。固まったままでいる彼女をつまらなそうに見ていたが、やがて踵を返し門をくぐっていった。
チカルはハンドルを力いっぱい握ったまま俯き、震える息を吐く。やがて下唇をきつく噛んで顔を上げると、アクセルを踏み込んだ。
雪化粧した山を越え、閉鎖された観光施設やひと気のない商店街を慎重に走り抜けていく。チカルがまだ10代の頃は活気があったこの通りも、今やシャッターを下ろした店舗だらけになってしまった。飲み屋や飲食店が集まっていた一角にも人の気配はなく、すっかり寂れている。
一時間ほど行った先、市街地にある駅の近くまで来ると少しずつ人通りが多くなり、真新しい看板や電光掲示板で賑やかになってきた。しかしこうして見渡してみると、この街もすいぶん様相が変わってしまったと彼女は思う。父と行った映画館も行きつけだったCDショップも、どこにあったのか、もうわからない。
父や友人たちの思い出の場所が次々と消えていくさみしさに、体が芯から冷えるようだった。彼女は暖房のつまみを高温の方に捻ったが、壊れているのか冷たい風しか出てこない。震えながら奥歯を噛み締めて、さらに車を走らせる。
ヤスケが入院している市立病院は繁華街の中心地から10分ほど離れた場所に建っている。循環器センターとリハビリセンターが併設されおり、県内でも有数の大病院である。そこの6階、一般病棟の個室にヤスケは入院していた。
ノックすると、中から元気な返事が聞こえてくる。チカルはわずかに引き戸を開けて、
「失礼します」
声を掛けつつ入室した。
「来たか」
「ヤスケ先生」
チカルは横たわっているヤスケを見るなり駆け寄る。彼女の顔は迷子になった子どものようだ。愛弟子の曇る表情に光を与えようとするかのように、彼はいつもの明るい笑顔で迎える。
「布団の上からすまないね。まだ痛みが酷くて体が動かせんのだよ」
言いながらも上体を起こそうと片肘を立てたので、チカルは慌ててそれを制止する。
「無理なさらないでください」
「やれやれ……私も焼きが回ったな」
おとなしく元通りに横たわると、ヤスケは白い眉の下の瞳をチカルに向け自嘲する。
「最近入門した若手に稽古をつけてやろうと思ってな。すこし張り切ったらこのざまだ」
詳しく話を聞くと、どうやらその若手というのは東京から移住してきた男で、恋人と共に村にやってきたという。何年も前に持ち主が逝去し、売りに出されるも買い手が付かずに放置されていた民家を住まいとしているらしい。
軽トラックを貸してもらえないかとヤスケのところに来たのがきっかけで交流が始まり、村長であるヤスケの長男――つまりシュンヤの父だ――と3人で酒を酌み交わす仲になった。その席でヤスケが合気道の師範だという話が出たことで彼が興味を持ち、稽古をつけることになったという。
「真面目で、なかなか熱心な男なんだ。こちらもつい熱が入ってしまった」
おどけて言うので、チカルはようやく少しだけ笑った。
「騒ぎを聞きつけたマリちゃんが救急車を呼んでくれたんだ。そのうえ、ツヤコが来てくれるまで傍についていてくれてね……ありがたいやら面目ないやら……」
その名を聞いて思い出したチカルはバッグを開け、
「母から預かってきました。お見舞い品の代わりに」
中から見舞金の入った袋を出して手渡す。礼と共に受け取った彼は、チカルからのものもあるのを見て申し訳なさそうな顔になる。
「ここに運ばれる前は、これで現役も最後かと覚悟を決めたよ。ただのぎっくり腰だと知らされたときはまだ教える側でいられると喜んだが……弟子にこんな気遣いをさせてしまっては、引退の方が相応しいのかもしれんな」
「そんなことおっしゃらないで」チカルは悲痛な顔で続ける。「骨折でなくて本当によかった。私の祖父はそれが原因で寝たきりになってしまったから……」
「そうだったな」
しんみりとつぶやく彼の目が哀しみに伏せられる。
チカルは父を17歳で亡くし、その数年後に祖父も亡くしている。物静かなタイプだったが、統率力があり心優しく、村の皆が一目置く存在だった。同じく寡黙な父とは、母と祖母のあずかり知らぬところで絆を育んでいたようだ。父の葬儀を終え、喪服も脱がぬまま縁側にひとりたたずみ嗚咽を漏らしている祖父の背中をチカルは覚えている。男児に恵まれなかった彼にとっては、父は実の息子同然だったのだろう。あの日から祖父は、少しずつ生きる気力を失っていったように思う。
「亡くなってから20年……」椅子を引き寄せて座ったチカルは、ヒールの爪先に視線を落とす。「父も祖父もいない家で、母と祖母はますます元気になっていくみたい」
「悲嘆に暮れているよりも強かなくらいの方がいいじゃないか」
「それでも限度というものがありますわ。うちは強すぎます」
ヤスケは苦い笑みを刻み、話題を変える。
「ところでナルカミから聞いたぞ。弟弟子を“見事”諫めたそうだな」
言葉にわずかな棘を感じ、チカルは縮こまる。
「つまらない私情でした」
「そうとわかっているのなら多くは言うまい」頭を垂れたままのチカルを見遣って、「ナルカミにはきつく灸を据えてある」
静かな声に相槌を打ち、チカルは苦しく目を閉じる。
「――未熟な私を、どうか叱ってください。男との圧倒的な力の差を前にしたときや、女だからという理由で男の庇護下に置かれたとき……未だ、女である自分を厭わしく思ってしまうのです。この性別で生まれたことへの怒りやかなしみに襲われて、私は……」
言葉が続けられず、下唇を噛んだ。
膝の上に置かれた拳がかすかに震えているのを見て、ヤスケは口を開く。
「どうあがいても敵わないものに対して恐れを感じるか?」
尋ねられた彼女は更に背を丸めた。
「はい」小さな顎を引き、消え入りそうな声で答える。「恐怖心を持つなど、武道家として恥ずべき事ですが」
「恥と思うことはない。恐れの感情とは生涯の友であるべきだ」
「先生……」
「恐怖も怒りも苦しみもかなしみも、抗わず受け入れてやるがいい。いつかすべてを許せる日がくる」
ヤスケの言葉を噛み締めるチカルの脳裏には、タビトの姿がある。
彼は孤独に凍えるこの胸の奥に入り込み、足跡を残していった。もしも出会っていなければ、シュンヤから与えられた恐怖と向き合うことすらできなかっただろうと彼女は思う。
「許しの先に、答えはあるのでしょうか」
チカルがつぶやいたそのとき、ノックの音と共に看護師が入ってきた。
「回診です。申し訳ありませんがデイルームでお待ちください」
「いえ……そろそろおいとまさせていただきます」
ヤスケに振り向き、淑やかに頭を下げる。
「くれぐれも無理せずお大事になさってください」
「チカル」
部屋を出ようとしたところを呼び止められ振り向いた。視線の先にいるヤスケは、窓からのやわらかい光に照らされ、穏やかな顔でこちらを見つめていた。
息を飲んだまま固まっているチカルを前に、ヤスケは目を細める。まるでまぶしいものでも見るかのように。
「また会いに来てくれるね?」
問いかけられるも即座に答えられずにいると、2人の看護師が足早に入室してきた。彼らが忙しなく準備を始め――ヤスケはコントラクトカーテンの向こうに消えてしまう。
チカルは喉に声を詰まらせたまま、病室を後にしたのだった。
シートに凭れたシュンヤはおもむろに胸ポケットをさぐると、折れ曲がった煙草を一本取り出し火をつける。開いた窓から顔を出して紫煙を風に流しながら、溜息のように言った。
「着替えちまったのかよ。着物、似合ってたのに」
彼が手放しで褒めるのはめずらしいことだったが、まっすぐに前を向いたままのチカルの横顔に喜びの色は見えない。
「病院に和装で行くなんて悪目立ちしてしまうし……リイコに頼んで服を借りたの」
言葉を発するにつれ、声が小さくなっていくのが自分でもわかる。こうしてふたりきりになると、彼によって刻まれた痛みやソファにこぼれた血の色の記憶が甦り、強い嫌悪と憎しみが湧いてくるのを感じた。
「置手紙を見てから来たのか?」
ハンドルを握る手に汗が滲む。厭悪の感情が怒りに変わりそうになるのをおさえて、チカルは淡々とした口調で答えた。
「そうよ。荷造りする時間も惜しくて、仕事帰りの格好のまますぐに家を出てきたの……」
「へえ……」
ぼんやりと相槌を打った彼は、再び窓の外に煙を逃がす。連絡を無視していたことについて、いよいよ詰問されるかと身構えたが、意外なことになにも言ってこない。
シュンヤの実家の前まできて、車を停めた。彼はしんどそうな様子で下車すると、運転席側に回り込む。軽く手を挙げたのでそのまま行ってしまうかと思いきや、ふいに動きをとめてこちらを覗き込んできた。一瞬ためらったが、窓を下げる。
「どうしたの?……なにか渡すものとか伝言とか、ある?」
「必要なものは昨日ぜんぶ揃えて持ってったから平気。じいちゃんに、チカルが向かうこと連絡しとくわ。スマホめったに見てくれないから気付かないかもしんないけど」
淡々とした口調で言った彼は薄い唇を引き結ぶ。そうして黙ったまま、チカルの顔を見つめた。痛いくらい凝視してくるその視線がゆっくりと左耳に移動したのを見て、彼女は思わず全身を強張らせる。
「それ」
シュンヤは顎先で傷を覆っているテープを示し、
「もしかして病院行ったのか?」
「血が止まらなかったから……」
「大袈裟なんだよ。そんなのほっとけば治るのに」
責めるような口調で言われたが、チカルは特別な反応を見せない。固まったままでいる彼女をつまらなそうに見ていたが、やがて踵を返し門をくぐっていった。
チカルはハンドルを力いっぱい握ったまま俯き、震える息を吐く。やがて下唇をきつく噛んで顔を上げると、アクセルを踏み込んだ。
雪化粧した山を越え、閉鎖された観光施設やひと気のない商店街を慎重に走り抜けていく。チカルがまだ10代の頃は活気があったこの通りも、今やシャッターを下ろした店舗だらけになってしまった。飲み屋や飲食店が集まっていた一角にも人の気配はなく、すっかり寂れている。
一時間ほど行った先、市街地にある駅の近くまで来ると少しずつ人通りが多くなり、真新しい看板や電光掲示板で賑やかになってきた。しかしこうして見渡してみると、この街もすいぶん様相が変わってしまったと彼女は思う。父と行った映画館も行きつけだったCDショップも、どこにあったのか、もうわからない。
父や友人たちの思い出の場所が次々と消えていくさみしさに、体が芯から冷えるようだった。彼女は暖房のつまみを高温の方に捻ったが、壊れているのか冷たい風しか出てこない。震えながら奥歯を噛み締めて、さらに車を走らせる。
ヤスケが入院している市立病院は繁華街の中心地から10分ほど離れた場所に建っている。循環器センターとリハビリセンターが併設されおり、県内でも有数の大病院である。そこの6階、一般病棟の個室にヤスケは入院していた。
ノックすると、中から元気な返事が聞こえてくる。チカルはわずかに引き戸を開けて、
「失礼します」
声を掛けつつ入室した。
「来たか」
「ヤスケ先生」
チカルは横たわっているヤスケを見るなり駆け寄る。彼女の顔は迷子になった子どものようだ。愛弟子の曇る表情に光を与えようとするかのように、彼はいつもの明るい笑顔で迎える。
「布団の上からすまないね。まだ痛みが酷くて体が動かせんのだよ」
言いながらも上体を起こそうと片肘を立てたので、チカルは慌ててそれを制止する。
「無理なさらないでください」
「やれやれ……私も焼きが回ったな」
おとなしく元通りに横たわると、ヤスケは白い眉の下の瞳をチカルに向け自嘲する。
「最近入門した若手に稽古をつけてやろうと思ってな。すこし張り切ったらこのざまだ」
詳しく話を聞くと、どうやらその若手というのは東京から移住してきた男で、恋人と共に村にやってきたという。何年も前に持ち主が逝去し、売りに出されるも買い手が付かずに放置されていた民家を住まいとしているらしい。
軽トラックを貸してもらえないかとヤスケのところに来たのがきっかけで交流が始まり、村長であるヤスケの長男――つまりシュンヤの父だ――と3人で酒を酌み交わす仲になった。その席でヤスケが合気道の師範だという話が出たことで彼が興味を持ち、稽古をつけることになったという。
「真面目で、なかなか熱心な男なんだ。こちらもつい熱が入ってしまった」
おどけて言うので、チカルはようやく少しだけ笑った。
「騒ぎを聞きつけたマリちゃんが救急車を呼んでくれたんだ。そのうえ、ツヤコが来てくれるまで傍についていてくれてね……ありがたいやら面目ないやら……」
その名を聞いて思い出したチカルはバッグを開け、
「母から預かってきました。お見舞い品の代わりに」
中から見舞金の入った袋を出して手渡す。礼と共に受け取った彼は、チカルからのものもあるのを見て申し訳なさそうな顔になる。
「ここに運ばれる前は、これで現役も最後かと覚悟を決めたよ。ただのぎっくり腰だと知らされたときはまだ教える側でいられると喜んだが……弟子にこんな気遣いをさせてしまっては、引退の方が相応しいのかもしれんな」
「そんなことおっしゃらないで」チカルは悲痛な顔で続ける。「骨折でなくて本当によかった。私の祖父はそれが原因で寝たきりになってしまったから……」
「そうだったな」
しんみりとつぶやく彼の目が哀しみに伏せられる。
チカルは父を17歳で亡くし、その数年後に祖父も亡くしている。物静かなタイプだったが、統率力があり心優しく、村の皆が一目置く存在だった。同じく寡黙な父とは、母と祖母のあずかり知らぬところで絆を育んでいたようだ。父の葬儀を終え、喪服も脱がぬまま縁側にひとりたたずみ嗚咽を漏らしている祖父の背中をチカルは覚えている。男児に恵まれなかった彼にとっては、父は実の息子同然だったのだろう。あの日から祖父は、少しずつ生きる気力を失っていったように思う。
「亡くなってから20年……」椅子を引き寄せて座ったチカルは、ヒールの爪先に視線を落とす。「父も祖父もいない家で、母と祖母はますます元気になっていくみたい」
「悲嘆に暮れているよりも強かなくらいの方がいいじゃないか」
「それでも限度というものがありますわ。うちは強すぎます」
ヤスケは苦い笑みを刻み、話題を変える。
「ところでナルカミから聞いたぞ。弟弟子を“見事”諫めたそうだな」
言葉にわずかな棘を感じ、チカルは縮こまる。
「つまらない私情でした」
「そうとわかっているのなら多くは言うまい」頭を垂れたままのチカルを見遣って、「ナルカミにはきつく灸を据えてある」
静かな声に相槌を打ち、チカルは苦しく目を閉じる。
「――未熟な私を、どうか叱ってください。男との圧倒的な力の差を前にしたときや、女だからという理由で男の庇護下に置かれたとき……未だ、女である自分を厭わしく思ってしまうのです。この性別で生まれたことへの怒りやかなしみに襲われて、私は……」
言葉が続けられず、下唇を噛んだ。
膝の上に置かれた拳がかすかに震えているのを見て、ヤスケは口を開く。
「どうあがいても敵わないものに対して恐れを感じるか?」
尋ねられた彼女は更に背を丸めた。
「はい」小さな顎を引き、消え入りそうな声で答える。「恐怖心を持つなど、武道家として恥ずべき事ですが」
「恥と思うことはない。恐れの感情とは生涯の友であるべきだ」
「先生……」
「恐怖も怒りも苦しみもかなしみも、抗わず受け入れてやるがいい。いつかすべてを許せる日がくる」
ヤスケの言葉を噛み締めるチカルの脳裏には、タビトの姿がある。
彼は孤独に凍えるこの胸の奥に入り込み、足跡を残していった。もしも出会っていなければ、シュンヤから与えられた恐怖と向き合うことすらできなかっただろうと彼女は思う。
「許しの先に、答えはあるのでしょうか」
チカルがつぶやいたそのとき、ノックの音と共に看護師が入ってきた。
「回診です。申し訳ありませんがデイルームでお待ちください」
「いえ……そろそろおいとまさせていただきます」
ヤスケに振り向き、淑やかに頭を下げる。
「くれぐれも無理せずお大事になさってください」
「チカル」
部屋を出ようとしたところを呼び止められ振り向いた。視線の先にいるヤスケは、窓からのやわらかい光に照らされ、穏やかな顔でこちらを見つめていた。
息を飲んだまま固まっているチカルを前に、ヤスケは目を細める。まるでまぶしいものでも見るかのように。
「また会いに来てくれるね?」
問いかけられるも即座に答えられずにいると、2人の看護師が足早に入室してきた。彼らが忙しなく準備を始め――ヤスケはコントラクトカーテンの向こうに消えてしまう。
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