3 / 10
3話 高校時代の思い出
しおりを挟む
高校のころ、僕は鹿内のことが好きだった。友達じゃなく、恋愛対象として。好きになったのは、ほんの些細なきっかけ。
鹿内とは高校3年間ずっと同じクラスだった。最初の印象は、隣の席の派手な見た目のやつ。属しているグループも違うから最低限しか関わらないだろうし、変に目をつけられないようにしよう――入学当初はそんなことを思っていた。
次の印象は、面白くてコミュ力が高いやつ。授業でのペアワークやグループワークでは僕やほかの人が話しやすいように話題作りをしてくれたり、意見を聞いてくれたり。日直当番の日はその日あった面白い話を聞かせてくれたりもした。性別問わず鹿内は人気になり、僕も彼のことを好きになっていったけど、その時点ではまだ人として好きってくらいだったと思う。
だけど、気づかないうちに僕の中に鹿内への想いは募っていっていた。それが溢れたのは、ある日の日直当番のとき。しばらく雨が続き、その日も朝からずっと雨で、僕はなんとなく気分が晴れずにいた。日誌も書き終え担任に提出に行こうかと思っていると、鹿内が僕を呼んだ。
「オタクくん、外見て」
なんだと思いながら言われたとおり窓に近づき、外を見る。気づけば雨が上がっていた。ほらあそこ、と鹿内が指さした方を見ると、空には綺麗にかかった虹。
「すごいな……」
小さく呟く。もっと気の利いたことを言えればいいのだが、そんな感想しか出てこなかった。
「すっごい綺麗だよね」
鹿内の顔を見ると、キラキラした瞳で虹を眺めていた。その顔が綺麗なのに可愛く見えて、ぶわっと胸が熱くなる。
(ああ、好きだな……)
自然に、そんな言葉が心に浮かんだ。その日から、僕は鹿内のことが恋愛的な意味で好きになった。
だけど当時の僕は告白なんてもちろんできない。彼女が出来たり別れたりしていた鹿内は異性愛者だろうし、自分が初めて好きになったのが男だという事実を僕はなかなか受け入れられずにいた。一時の気の迷いだと、憧れと恋愛を混同しているんだと何度も葛藤して。高3になるころようやく自分の気持ちを受け入れたが、ずっと彼を好きだった自分に笑ってしまったのを覚えている。
人の気持ちに敏い鹿内は僕の想いに気づいていたと思う。軽蔑はしなかったようで、けれどそのことに触れてこなかった。自分の気持ちが許されているような気がして、ますます彼に惹かれていったのだ。告白はできないまま卒業して、いつか懐かしむ日が来るだろうと、少しだけ痛む心を抱えながら卒業までの日々を過ごした。
卒業まであと少し、というころ。僕と鹿内の最後の日直当番の日。あとは日誌を書くだけ、という段階で、鹿内は僕に話しかけてきた。
「ねえオタクくん。もうすぐ卒業しちゃうね」
「そうだな。あっという間だった気がする……」
受験も終わり、鹿内と会うのもあとは卒業式の日くらいだろう。なにも言えないまま卒業して失恋するのは寂しいけれど、すごく楽しい3年間だった。
「オタクくん。もうすぐ卒業だし……お祝いとして、なにか欲しいものはない?」
「はは、なんだそれ。親戚かよ」
鹿内はずっと優しくて、いいやつだ。最後まで僕を気にかけてくれる。笑って返すと、なんとなく視線を感じた。隣を向くと、見惚れるくらい綺麗な顔で彼は僕を見ている。
「……オタクくん。なんでもいいよ。してほしいこと……言って?」
その言葉に、僕はゴクリと生唾を飲んだ。彼の言っている意味がわかり、耳まで熱くなるのを感じる。
これはきっと鹿内の最後の優しさだ。僕を軽蔑もからかいもしなかったけど、気持ちを受け入れてはくれないであろう彼の最後の気遣い。
僕は震える声で、呟いた。
「……手、繋いでほしい。日誌書き終わるまで」
キスしてほしいとお願いするとか好きだと伝えるとかは、とてもできなかった。情けないけど、鹿内の中で嫌な思い出にはしてほしくなかったから。
「うん……わかった」
少し目を見開いたあとすぐに眉を下げて笑った鹿内は、僕の手をぎゅっと握ってくれた。指を絡めて、恋人繋ぎ。緊張で手汗が酷かったであろう僕の手を、まったく気にすることなく繋いでくれて、僕は泣きそうになった。
それから僕が日誌を書き終えるまで、鹿内と僕の手は繋がれたまま。書き終えた文字が震えていて、思わず笑ってしまった。
次に鹿内と会ったのは卒業式。あの日のことなんてなかったかのように、これまでと同じように話しかけてきて、彼のスマホで一緒に写真を撮った。あとで送るねと言っていたが、彼とは連絡先を交換していなかったため当然ながら送られてきていない。
成人式のときもちらりと見かけたが、人に囲まれていた鹿内に話しかけることはもちろんできず。中学は別だったから、成人式の座る場所も式のあとの集まりも別々で。それからあの日コンビニで再会するまで、彼と会うことはなかった。
鹿内とは高校3年間ずっと同じクラスだった。最初の印象は、隣の席の派手な見た目のやつ。属しているグループも違うから最低限しか関わらないだろうし、変に目をつけられないようにしよう――入学当初はそんなことを思っていた。
次の印象は、面白くてコミュ力が高いやつ。授業でのペアワークやグループワークでは僕やほかの人が話しやすいように話題作りをしてくれたり、意見を聞いてくれたり。日直当番の日はその日あった面白い話を聞かせてくれたりもした。性別問わず鹿内は人気になり、僕も彼のことを好きになっていったけど、その時点ではまだ人として好きってくらいだったと思う。
だけど、気づかないうちに僕の中に鹿内への想いは募っていっていた。それが溢れたのは、ある日の日直当番のとき。しばらく雨が続き、その日も朝からずっと雨で、僕はなんとなく気分が晴れずにいた。日誌も書き終え担任に提出に行こうかと思っていると、鹿内が僕を呼んだ。
「オタクくん、外見て」
なんだと思いながら言われたとおり窓に近づき、外を見る。気づけば雨が上がっていた。ほらあそこ、と鹿内が指さした方を見ると、空には綺麗にかかった虹。
「すごいな……」
小さく呟く。もっと気の利いたことを言えればいいのだが、そんな感想しか出てこなかった。
「すっごい綺麗だよね」
鹿内の顔を見ると、キラキラした瞳で虹を眺めていた。その顔が綺麗なのに可愛く見えて、ぶわっと胸が熱くなる。
(ああ、好きだな……)
自然に、そんな言葉が心に浮かんだ。その日から、僕は鹿内のことが恋愛的な意味で好きになった。
だけど当時の僕は告白なんてもちろんできない。彼女が出来たり別れたりしていた鹿内は異性愛者だろうし、自分が初めて好きになったのが男だという事実を僕はなかなか受け入れられずにいた。一時の気の迷いだと、憧れと恋愛を混同しているんだと何度も葛藤して。高3になるころようやく自分の気持ちを受け入れたが、ずっと彼を好きだった自分に笑ってしまったのを覚えている。
人の気持ちに敏い鹿内は僕の想いに気づいていたと思う。軽蔑はしなかったようで、けれどそのことに触れてこなかった。自分の気持ちが許されているような気がして、ますます彼に惹かれていったのだ。告白はできないまま卒業して、いつか懐かしむ日が来るだろうと、少しだけ痛む心を抱えながら卒業までの日々を過ごした。
卒業まであと少し、というころ。僕と鹿内の最後の日直当番の日。あとは日誌を書くだけ、という段階で、鹿内は僕に話しかけてきた。
「ねえオタクくん。もうすぐ卒業しちゃうね」
「そうだな。あっという間だった気がする……」
受験も終わり、鹿内と会うのもあとは卒業式の日くらいだろう。なにも言えないまま卒業して失恋するのは寂しいけれど、すごく楽しい3年間だった。
「オタクくん。もうすぐ卒業だし……お祝いとして、なにか欲しいものはない?」
「はは、なんだそれ。親戚かよ」
鹿内はずっと優しくて、いいやつだ。最後まで僕を気にかけてくれる。笑って返すと、なんとなく視線を感じた。隣を向くと、見惚れるくらい綺麗な顔で彼は僕を見ている。
「……オタクくん。なんでもいいよ。してほしいこと……言って?」
その言葉に、僕はゴクリと生唾を飲んだ。彼の言っている意味がわかり、耳まで熱くなるのを感じる。
これはきっと鹿内の最後の優しさだ。僕を軽蔑もからかいもしなかったけど、気持ちを受け入れてはくれないであろう彼の最後の気遣い。
僕は震える声で、呟いた。
「……手、繋いでほしい。日誌書き終わるまで」
キスしてほしいとお願いするとか好きだと伝えるとかは、とてもできなかった。情けないけど、鹿内の中で嫌な思い出にはしてほしくなかったから。
「うん……わかった」
少し目を見開いたあとすぐに眉を下げて笑った鹿内は、僕の手をぎゅっと握ってくれた。指を絡めて、恋人繋ぎ。緊張で手汗が酷かったであろう僕の手を、まったく気にすることなく繋いでくれて、僕は泣きそうになった。
それから僕が日誌を書き終えるまで、鹿内と僕の手は繋がれたまま。書き終えた文字が震えていて、思わず笑ってしまった。
次に鹿内と会ったのは卒業式。あの日のことなんてなかったかのように、これまでと同じように話しかけてきて、彼のスマホで一緒に写真を撮った。あとで送るねと言っていたが、彼とは連絡先を交換していなかったため当然ながら送られてきていない。
成人式のときもちらりと見かけたが、人に囲まれていた鹿内に話しかけることはもちろんできず。中学は別だったから、成人式の座る場所も式のあとの集まりも別々で。それからあの日コンビニで再会するまで、彼と会うことはなかった。
157
あなたにおすすめの小説
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
久しぶりに地元へ帰ったら、昔いじめてきた男に告白された
髙槻 壬黎
BL
【狂愛執着攻め×自己肯定感低め受け】
高校の卒業式後、自分を取り巻く環境から逃げるようにして地元を出た俺──広崎恵。新天地では頼れる人もおらず、毎日の生活は苦しかったけど、それでも俺なりに満ち足りた人生を送っていた。
しかしその五年後。父親からの連絡で故郷へ帰ることになった俺は、かつての同級生──狭山鏡夏の名前を耳にする。常に人から囲まれ人気者だったその男は、俺をいじめてきた張本人だった。
だからもう会うつもりなど、二度となかった。だというのに、何故か狭山は、俺のことをずっと探していたようで────
※攻めがサイコパス気味です。受けへの愛だけはありますが、倫理観が欠落しているので苦手な方はご注意ください。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる