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62:ケイト・エスターのこれから③
「うん。ぼくの魂をこちらの世界に戻す際に巻き込んじゃって、そのせいできみは死んじゃったんだよ。きみが認識する前に身体が消滅しちゃったから、死んだときの記憶もないんじゃないかな」
「マジか……たしかに死んだときの記憶はなかったけど……」
今明かされる衝撃の死因。死んだときの衝撃がショックすぎて脳が記憶を封印したんじゃなくて、そもそも死んだことを理解する前に死んでたのか。
リオはさらに説明を続ける。リオの魂は元の身体に戻すだけでよかったが、オレは身体が消滅してしまって元に戻すことができなかったらしい。
向こうの世界は今転生にかなり時間がかかるらしく、本来の寿命よりも早く死んでしまったから詫びということですぐに転生できそうなこっちの世界にオレの魂を連れてきて転生させたそうだ。ちなみに転生先は完全にランダムだったらしい。
「ぼくが書いた小説を読んでたからこの世界でも順応できそうだからっていうのも理由だったみたい」
「うっわ……プライバシーのプの字もねえなあ……」
神はなんでも知っている。オレが読んだ小説でさえも。非公開ブックマークでさえも神の前では無意味なのだ。
「転生特典は前世の記憶だって、ぼくをこの世界に戻した神が言ってたよ」
「それは……デフォでつけてくれてよくないか?」
神はあまりにも不親切。そんな悪態を心の中で吐きながらリオが話した内容を頭で整理していく。オレはループモノ小説のモブに転生したわけじゃなく、普通に異世界転生をしたということか。
「なあ、リオに聞いてわかるかわかんねえけど……オレが転生する前、ケイト・エスターは存在しなかったってことか?」
「うん。ぼくの記憶でもエスター家は次男までだったよ」
「そっか」
転生ガチャでオレはエスター家を引き当て、ついでにオレが生まれたことで可愛い弟妹も生まれたということだな。
(オレを授かったことで両親がまた盛り上がっ……おえ、変な想像しかけた)
頭に浮かびかけた恐ろしい想像を振り払う。別のことを考えようとリオの話を頭の中で反芻していくうちに、はたと気づく。
「……なあ、そもそもなんでリオは前世というか、いろんなこと思い出したんだ……?」
リオが何度もループしていることは実際に起きたことであり、オレがこの世界では今世が1周目だということも理解した。おそらく彼がどこか大人びたのも、璃央として生きた人生の記憶がまざったからだろうと推察できる。
――だけどそもそも、いつの間に、どうやってそれらの情報をリオが得たのだろうか。
オレの質問にリオはにっこりと微笑み、ずい、と顔を近づけてきた。
「ケイとえっちしたら、思い出したんだ」
「は……?」
「えっちして一緒にイったでしょ? そのときキスしたらきみの魔力と一緒に記憶がぶわーって流れ込んできたんだよ」
唇が触れそうな距離まで顔を近づけられ、ふ、と唇に吐息を吹きかけられる。蠱惑的なリオの笑みに、心臓が跳ねた。
「えっと。魔力過多症のオレの魔力がお前に流れ込んで、なんで記憶が……?」
「なんかね、そもそもぼくが神子なのに神の声とかが聞こえてなかったのって、魔力が不足していたかららしいんだよね。それも子爵が関わってたんだけど……まあそれはいいや。で、ぼくの不足していた分の魔力をケイの魔力が補ったことで、覚醒したみたいな感じ……かな」
「なる、ほど……」
オレとセックスしたから記憶が戻ってリオは子爵家に復讐した。生涯で一度しか使えない神への願いも使って。おおよその事情を理解していくとともに、ぞわぞわと背中を駆け上がっていく恐怖にも似た感覚。
(リオの書いた小説は実話を元にした創作で、本編は完全オリジナルってことは……)
当たってほしくない予想が頭の中に浮かぶ。最初に口にした疑問を再びオレは口にする。
「な、なあ……つまりやっぱり、ループは……」
「もう起こらないよ。ぼくが願いを使っちゃったからね」
あっけらかんとした様子で微笑むリオ。オレは全身が震えるのを感じながら口を開く。
「……なんで、アミス子爵の悪事の証拠なんて……そんなの、神に願わなくたっていいだろ……グレン様たちも調べてたんだし……もっとほら、ループしてもっと前に戻るとかすれば……」
「ああ、たしかに……もっと前に戻れば……ケイを独り占めできたね」
震える声で話すオレの頬にリオは手を添える。ちゅ、と一度だけ唇が触れて、すぐに離れた。
そういうことじゃないと言おうとすると、リオが先に話し始める。
「……残念だけど、ループを願っても無理だったんじゃないかな。ぼくを神子に選んだ神はぼくを向こうの世界に送ったときに力のほとんどを使っちゃったし、別の世界に勝手に魂を送った罪で力を制限されちゃったから。ぼくが最初にしたお願いも無理って言われたから、アミス子爵の悪事の証拠にしたんだよね」
「そうなのか……ちなみに最初の願いって……」
「ケイがぼくの子供を産めるようにしてほしいってお願い」
「う……っわぁ……」
危うく知らない間に肉体改造されるところだったわけだ。それを阻止してくれた神には感謝したい。したい、が。ループが起こらないという事実に打ちひしがれ、オレはぐったりとベンチの背もたれにもたれかかった。
自分がやってしまったことを思い浮かべていると、リオがオレの肩に頭を乗せる。
「……いつかは必ず、きみにぼくの子供を産んでもらう方法を見つけるからね」
「いや、それはやめ……」
「――残念だけど、そんな日は来ないよ、アミス。ケイトは僕と添い遂げるんだから、ね」
リオのぶっ飛んだ妄想を拒否しようとすると、急に誰かの声が近づいてくる。聞き馴染みがある少し懐かしい声がした方向を見ると……。
「マジか……たしかに死んだときの記憶はなかったけど……」
今明かされる衝撃の死因。死んだときの衝撃がショックすぎて脳が記憶を封印したんじゃなくて、そもそも死んだことを理解する前に死んでたのか。
リオはさらに説明を続ける。リオの魂は元の身体に戻すだけでよかったが、オレは身体が消滅してしまって元に戻すことができなかったらしい。
向こうの世界は今転生にかなり時間がかかるらしく、本来の寿命よりも早く死んでしまったから詫びということですぐに転生できそうなこっちの世界にオレの魂を連れてきて転生させたそうだ。ちなみに転生先は完全にランダムだったらしい。
「ぼくが書いた小説を読んでたからこの世界でも順応できそうだからっていうのも理由だったみたい」
「うっわ……プライバシーのプの字もねえなあ……」
神はなんでも知っている。オレが読んだ小説でさえも。非公開ブックマークでさえも神の前では無意味なのだ。
「転生特典は前世の記憶だって、ぼくをこの世界に戻した神が言ってたよ」
「それは……デフォでつけてくれてよくないか?」
神はあまりにも不親切。そんな悪態を心の中で吐きながらリオが話した内容を頭で整理していく。オレはループモノ小説のモブに転生したわけじゃなく、普通に異世界転生をしたということか。
「なあ、リオに聞いてわかるかわかんねえけど……オレが転生する前、ケイト・エスターは存在しなかったってことか?」
「うん。ぼくの記憶でもエスター家は次男までだったよ」
「そっか」
転生ガチャでオレはエスター家を引き当て、ついでにオレが生まれたことで可愛い弟妹も生まれたということだな。
(オレを授かったことで両親がまた盛り上がっ……おえ、変な想像しかけた)
頭に浮かびかけた恐ろしい想像を振り払う。別のことを考えようとリオの話を頭の中で反芻していくうちに、はたと気づく。
「……なあ、そもそもなんでリオは前世というか、いろんなこと思い出したんだ……?」
リオが何度もループしていることは実際に起きたことであり、オレがこの世界では今世が1周目だということも理解した。おそらく彼がどこか大人びたのも、璃央として生きた人生の記憶がまざったからだろうと推察できる。
――だけどそもそも、いつの間に、どうやってそれらの情報をリオが得たのだろうか。
オレの質問にリオはにっこりと微笑み、ずい、と顔を近づけてきた。
「ケイとえっちしたら、思い出したんだ」
「は……?」
「えっちして一緒にイったでしょ? そのときキスしたらきみの魔力と一緒に記憶がぶわーって流れ込んできたんだよ」
唇が触れそうな距離まで顔を近づけられ、ふ、と唇に吐息を吹きかけられる。蠱惑的なリオの笑みに、心臓が跳ねた。
「えっと。魔力過多症のオレの魔力がお前に流れ込んで、なんで記憶が……?」
「なんかね、そもそもぼくが神子なのに神の声とかが聞こえてなかったのって、魔力が不足していたかららしいんだよね。それも子爵が関わってたんだけど……まあそれはいいや。で、ぼくの不足していた分の魔力をケイの魔力が補ったことで、覚醒したみたいな感じ……かな」
「なる、ほど……」
オレとセックスしたから記憶が戻ってリオは子爵家に復讐した。生涯で一度しか使えない神への願いも使って。おおよその事情を理解していくとともに、ぞわぞわと背中を駆け上がっていく恐怖にも似た感覚。
(リオの書いた小説は実話を元にした創作で、本編は完全オリジナルってことは……)
当たってほしくない予想が頭の中に浮かぶ。最初に口にした疑問を再びオレは口にする。
「な、なあ……つまりやっぱり、ループは……」
「もう起こらないよ。ぼくが願いを使っちゃったからね」
あっけらかんとした様子で微笑むリオ。オレは全身が震えるのを感じながら口を開く。
「……なんで、アミス子爵の悪事の証拠なんて……そんなの、神に願わなくたっていいだろ……グレン様たちも調べてたんだし……もっとほら、ループしてもっと前に戻るとかすれば……」
「ああ、たしかに……もっと前に戻れば……ケイを独り占めできたね」
震える声で話すオレの頬にリオは手を添える。ちゅ、と一度だけ唇が触れて、すぐに離れた。
そういうことじゃないと言おうとすると、リオが先に話し始める。
「……残念だけど、ループを願っても無理だったんじゃないかな。ぼくを神子に選んだ神はぼくを向こうの世界に送ったときに力のほとんどを使っちゃったし、別の世界に勝手に魂を送った罪で力を制限されちゃったから。ぼくが最初にしたお願いも無理って言われたから、アミス子爵の悪事の証拠にしたんだよね」
「そうなのか……ちなみに最初の願いって……」
「ケイがぼくの子供を産めるようにしてほしいってお願い」
「う……っわぁ……」
危うく知らない間に肉体改造されるところだったわけだ。それを阻止してくれた神には感謝したい。したい、が。ループが起こらないという事実に打ちひしがれ、オレはぐったりとベンチの背もたれにもたれかかった。
自分がやってしまったことを思い浮かべていると、リオがオレの肩に頭を乗せる。
「……いつかは必ず、きみにぼくの子供を産んでもらう方法を見つけるからね」
「いや、それはやめ……」
「――残念だけど、そんな日は来ないよ、アミス。ケイトは僕と添い遂げるんだから、ね」
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