1 / 11
解任
しおりを挟む
「リーラ・ラヴァンド!君を保健副委員長から解任する!」
「…え?」
アマント王国・国立ソルセルリ魔法学校・保健室。
保健室と言っても、普段用の第1保健室とは別に、実技授業で怪我人が出た時に備えて、8床のベッドが並べられている広々とした第2保健室。
現在は患者のいないその部屋で、週に1度の保健委員会会議が行われていた。
「…どういうことでしょうか?委員長…」
「君はもう我が委員会に不要な人間だということだ!」
私の問いに、金に近い黄土色の髪をオールバックにした青年、保健委員会委員長、ドクトー・ホピタルが言い放つ。
室内にいる10人強の他の保健委員達は、椅子に着席したまま困った表情で成り行きを見ている。
「不要とは、どういうことでしょうか?私はちゃんと副委員長として働いていたつもりなのですが―」
「何を言っている!役立たずが!我が校には君程度の薬師はいくらでもいる!君なんていてもいなくても同じだ!調子に乗るな!」
「…」
確かに。
わたしの薬師としての能力そのものは人並だ。
でも私には、アレがある。
「しかも、君には現在、委員会費の横領の疑いがかかっている!」
「なっ…!?していません!そんな事!」
薬師としての能力について言われるのは我慢できたが、横領は聞き捨てならない。
やってない、そんな事。
「しらばっくれるな!先月の委員会費が普段より大幅に高かった!やっていないと言うなら、何に遣われたのか説明しろ!」
「先月って…学内剣術大会があったので怪我人が多かったのと、委員長、あなたが薬の調合を間違えて、使えなくなった薬を大量に破棄しなくちゃならなくなって、薬草を買いなおしたからですよ。忘れたんですか?」
しかし、出費の説明をしても
「その程度の出費で、こんなに高額になるものか!言い訳するな!」
「えぇ…」
包帯や薬草の値段も全く把握できていないらしい。
あれだけ使えばまとまった金額になるわよ。
でも私は、呆れつつも別のことを考えていた。
仮に私が遣い込んだと本当に思っていたとして、この委員長は私を追い出すだろうか?
副委員長であり、薬師である私がいなくなったら、保健委員会の仕事が大変になるのは目に見えている。
いや、どうせ大変になったら他の委員をこき使うつもりなんだろうけど。
それでも委員長の性格から考えて、メリットよりデメリットの方が大きいと彼は感じると思うんだけど。
私を追い出そうとしている理由は何なの…?
しかし、私の疑問は彼の次のセリフで解けた。
「君のような卑しいマネをする女は委員会にふさわしくない!
僕は、君より遥かに有能な人材をスカウトしてきた!
―入りたまえ」
委員長がドアに向かって声をかける。
私と、10数名の委員達はバッとドアに注目した。
―カチャリ
「失礼します」
呼ばれて、女子生徒が入室してきた。
この子、知ってる。
ケリル・ゲリゾンという女子だ。
土のような暗い色の茶髪をぎゅっとお団子にしている私と違って、ミルクティーのような淡い色の茶髪をふんわりとリボンで横結びにしている。
そして、髪型と似合いのふんわりとした控えめな笑顔で室内を進み、委員長の隣に立った。
ケリルが隣に立つとすぐに、委員長は彼女の肩を抱いた。
…ああ、そういうこと。
「彼女の名はケリル・ゲリゾン。
優秀なヒーリングの力の持ち主だ。
リーラ・ラヴァンド、君よりずっとこの委員会、この学校に貢献してくれるだろう。
君のように包帯やら薬草やらの経費すら必要ない。
君が居座っていた副委員長の席には彼女の方がふさわしい。
すぐに出ていくなら横領の件については大目に見てやる。
分かったらとっとと出ていけ!」
委員長―いえ、ホピタルは言いたいことをベラベラ喋って偉そうに胸を張った。
…ダメだ、こりゃ。
でも最後にこれだけは。
「先月の出費は必要経費です!」
この一言だけは言って、私は保健室から出て行った。
10数人の委員達の同情の目に見送られながら。
「…え?」
アマント王国・国立ソルセルリ魔法学校・保健室。
保健室と言っても、普段用の第1保健室とは別に、実技授業で怪我人が出た時に備えて、8床のベッドが並べられている広々とした第2保健室。
現在は患者のいないその部屋で、週に1度の保健委員会会議が行われていた。
「…どういうことでしょうか?委員長…」
「君はもう我が委員会に不要な人間だということだ!」
私の問いに、金に近い黄土色の髪をオールバックにした青年、保健委員会委員長、ドクトー・ホピタルが言い放つ。
室内にいる10人強の他の保健委員達は、椅子に着席したまま困った表情で成り行きを見ている。
「不要とは、どういうことでしょうか?私はちゃんと副委員長として働いていたつもりなのですが―」
「何を言っている!役立たずが!我が校には君程度の薬師はいくらでもいる!君なんていてもいなくても同じだ!調子に乗るな!」
「…」
確かに。
わたしの薬師としての能力そのものは人並だ。
でも私には、アレがある。
「しかも、君には現在、委員会費の横領の疑いがかかっている!」
「なっ…!?していません!そんな事!」
薬師としての能力について言われるのは我慢できたが、横領は聞き捨てならない。
やってない、そんな事。
「しらばっくれるな!先月の委員会費が普段より大幅に高かった!やっていないと言うなら、何に遣われたのか説明しろ!」
「先月って…学内剣術大会があったので怪我人が多かったのと、委員長、あなたが薬の調合を間違えて、使えなくなった薬を大量に破棄しなくちゃならなくなって、薬草を買いなおしたからですよ。忘れたんですか?」
しかし、出費の説明をしても
「その程度の出費で、こんなに高額になるものか!言い訳するな!」
「えぇ…」
包帯や薬草の値段も全く把握できていないらしい。
あれだけ使えばまとまった金額になるわよ。
でも私は、呆れつつも別のことを考えていた。
仮に私が遣い込んだと本当に思っていたとして、この委員長は私を追い出すだろうか?
副委員長であり、薬師である私がいなくなったら、保健委員会の仕事が大変になるのは目に見えている。
いや、どうせ大変になったら他の委員をこき使うつもりなんだろうけど。
それでも委員長の性格から考えて、メリットよりデメリットの方が大きいと彼は感じると思うんだけど。
私を追い出そうとしている理由は何なの…?
しかし、私の疑問は彼の次のセリフで解けた。
「君のような卑しいマネをする女は委員会にふさわしくない!
僕は、君より遥かに有能な人材をスカウトしてきた!
―入りたまえ」
委員長がドアに向かって声をかける。
私と、10数名の委員達はバッとドアに注目した。
―カチャリ
「失礼します」
呼ばれて、女子生徒が入室してきた。
この子、知ってる。
ケリル・ゲリゾンという女子だ。
土のような暗い色の茶髪をぎゅっとお団子にしている私と違って、ミルクティーのような淡い色の茶髪をふんわりとリボンで横結びにしている。
そして、髪型と似合いのふんわりとした控えめな笑顔で室内を進み、委員長の隣に立った。
ケリルが隣に立つとすぐに、委員長は彼女の肩を抱いた。
…ああ、そういうこと。
「彼女の名はケリル・ゲリゾン。
優秀なヒーリングの力の持ち主だ。
リーラ・ラヴァンド、君よりずっとこの委員会、この学校に貢献してくれるだろう。
君のように包帯やら薬草やらの経費すら必要ない。
君が居座っていた副委員長の席には彼女の方がふさわしい。
すぐに出ていくなら横領の件については大目に見てやる。
分かったらとっとと出ていけ!」
委員長―いえ、ホピタルは言いたいことをベラベラ喋って偉そうに胸を張った。
…ダメだ、こりゃ。
でも最後にこれだけは。
「先月の出費は必要経費です!」
この一言だけは言って、私は保健室から出て行った。
10数人の委員達の同情の目に見送られながら。
0
あなたにおすすめの小説
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~
放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」
最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!?
ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。
ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。
しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。
こんな謎運命、回避するしかない!
「そうだ、結婚しよう」
断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる