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第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた

very✕Berry✕heavy<57>

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3年も前なのに、まだ私は、こんな記憶を夢にみるんだ。





私は、その夜、冬野さんと同じ会社で働いて居た頃の夢を見た。







「石ちゃん。おはよう」




毎日、デスクでそう声をかけられる度、冬野さんの姿を見ると私は決まって目眩に襲われていた。





フワフワした栗色の髪。




白い肌で、綺麗な顔。



キツネみたいに凛とした輪郭に、猫みたいにキラキラした目。形の良い唇。



それで微笑まれたり、しかめられたら、ドキドキしてしまう。




「聞いたよ。今月の回収率の表彰、債権管理部のメンバーごぼう抜きしたって」

「……たまたま、まぐれです。何でわざわざ言いに来るんですか?」




冬野さんが来ると、他の人が寄って来るし、マキさんにチクられるじゃないですか。




この部にも、何人マキさん信者がいるか分かったもんじゃない。




「あ、実はね。今度の表彰さ、債権回収は異例の営業二課の石ちゃん。営業表彰僕なんだよ。課長に二人で恒例の代表者の受賞の挨拶をどっちがするか決める様言われて来たんだ」






「……私、有給取るので」

「チャレンジャーだね。僕、今年に入ってからその挨拶3回目なんだよね」

「一年12ヶ月。私、入社してから月間営業表彰に冬野さんが居なかった月を知りません」

「一回位、石ちゃんの挨拶みたいよ。ねえ、お願い」

「有給取ります」




よくよく考えてみればいつもそうだ。





私がNOと言えない要求には、冬野さん、いつも綺麗な微笑みを投げ掛けてきた。





「……なら良いけど、表彰式は君のお世話になった次長の最終出社日だよ。最後の餞(はなむけ)に僕なら出るけどね。じゃあ、僕で返事して」

「すみません。冬野さん、今回は私に譲って下さい」




顔をしかめる私の頭を撫でて冬野さんは言った。




「大好きな石ちゃんの晴れの姿。僕も楽しみにしてるから」




そんな好きは、お世辞か社交辞令に取るだろう?





……昔の記憶を夢に見た。




冬野さんの好き何て知らない。



私は理解できない、難しくて、面倒な事に対して徹底しているポリシーがある。



逃げる、避ける、忘れることだ。




忘れよう。






冬野さんとのキスも?






昨夜の事も?





さすがに無理だよ。





自分の状況を理解したまま、ぐっすり寝て起きた。
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