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第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた

very✕Berry✕heavy<63>

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「そう言えば、さっきベランダに出て気付いたんですけど、ワイルドベリー育ててるんですね」



「そうだよ。クラウン開店祝いに、ここのテナントのオーナー、竹中さんって言うんだけどその人に貰ったんだ」



「はへっΣ(;゚∀゚)ノ」



「どうしたの」



まさかの竹中さんが、この物件のオーナーって事に、衝撃を受けています。



油断も隙もない、事実におののいてます。



「ちなみに、ここの家賃って高いんですか?」



本当は、ハウマッチ(いくらですか)?なテンションだが、流石に野暮すぎて聞けなかった。




「う~ん。結構相場の割りには安いと思うけど、正直、安くはないかな。儲けがギリギリ、商才の無い俺が不甲斐ないだけだけど」

「これから、繁盛すると良いですね」




私は、本心からそう言葉をのべ、遠い目をした。

走馬灯の様に甦る、冬野さんが言う竹中さんと言う人との思い出を回顧したのだ。



働かざる者なんとやら、親が仕事で行けないはずだった花火大会に、ジュースの売り子として連れていって貰ったっけ。

親が仕事で何処にも行けない夏休み、海水浴と言う名の海の家での下宿生活。




楽しかったな。



暑かったけど。




いかんいかん。



今は冬野さんとお店の話をしてるんだから、ちゃんときかなきゃ。






「繁盛させるよ。取り敢えず、今月はもう先月の売上越えてて、センちゃんのバイト代差し引いても純利益が出そうだし、これも全部、君のお陰だよ。うちの店、跡形もない位変わった気がする」

「意味分かりません」



たかが、2週間で変わったことって、フードメニューとマキさんの駆除(たぶんもう来ないだろう)とセンちゃんと言う新人が増えたこと位だ。



「あっでも、君の妹のテンちゃんが作ってくれた守り神のお陰もあるかも」



「ハシビロコウのぎょぎょんちゃんですね。それは否めません。わたし、大好きなんですから、大事にしてくださいね」



私が笑顔で言うと、冬野さんも笑顔を浮かべた。綺麗な笑顔。



直視したから、明日、失明するかもしれない。

冬野さんの笑顔、美しすぎて。




「ぇ、俺とぎょぎょんちゃんどっちが好き」



…(゜〇゜;)



答えないとダメ。



どうしよう。



「……両方です」



私が言うに困りつつも、何とか弾き出した回答に冬野さんは悪戯っぽく笑った。



「しまった。今のはどっちの方がって聞くのがmustだったね」




つまり、どっちが選ばせて、私の反応を楽しむつもりだったんですね。



私は、うまくその魔の手を掻い潜れたことにほっと安堵した。

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