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第2章 人の人生を変えるなら、人に人生変えられるかくご位してやがれ

CROWNは、その日開店5周年を迎えました。後編<114>

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「私、タクシーで帰りますね。怒らせてごめんなさい」




もうこうなったら、私が帰れば、不機嫌の原因が居なくなって、それで冬野さんが困らないそう思った。




「ストップ!」




私はベッドを降りようと身を起こしたが、冬野さんは体の向きを変えると私の両手を掴んで私を見上げた。




表情は強張っていて、怒り的感情を伺わせた。





「確かに、怒ってるさ。怒ってるけど、帰るなんてないだろ?」



「だって、どうしたら良いか分かんないんだもん」



「そんなの簡単だよ。俺の事、ほんの少しでも千波より良いって思ってるなら、俺の方が好きだって、すぐ答えてよ。じゃぁとか最悪だよ」




和らがない表情の中で、少しだけ悲しそうな気がするのは気のせいだろうか?



私、冬野さんを悲しませた?




「ごめんなさい」

「どっちのごめん? 千波が好きって事? 俺の事、好きじゃないって事?」




私は世界で一番冬野さんが好きだ。




だから、ずっと逃げてきた、避けてきた、忘れようとしてきた。



私が自分の中のモットーに従じて3年間、会社を辞めた冬野さんの事を探さず、気にせず、忘れようとしたのは、本当に怖かったからだ。



だから、本当に好き。



分かってる。





「どっちも違う。ユキが好き。ずっと好きだった。ちなは違う」




冬野さんは、ふぅっと息を吐いて、肩から滑り落ちた毛布を私の肩にかけた。




「千波の家に何度も泊ったんだよね。なのにさ、あいつとは、本当に何もないの?」

「……」



何もないと思っている。

だがちなは私が酔ってキスしたと言ってた。




「千波から、付き合おうとか言われなかった? 俺は、千波は君を好きだと、いや好きだったと思うよ」



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