上 下
177 / 507
第2章 人の人生を変えるなら、人に人生変えられるかくご位してやがれ

水野 雪 前編<177>

しおりを挟む


「ユキの彼女?」




サイドを短く刈り上げ、長い茶髪の髪をふわふわさせた奇抜な髪型に、狂犬みたいに鋭い目をして、とがった鼻先に薄い唇で、見た目は格好良い部類でも、ユキとは対照的な冷たそうな男だった。




私が、今までで、一番好きで、唯一愛してたって言えるくらい、好きになれた人。




「違います」




物珍しそうな顔で私を見下ろすその男は、ユキよりリンゴ1個分位背が高かった。



体つきも割と華奢なユキより、大きかった。



ていうか、ゴリラだと思った。



顔の良い、ライオン色した、どう猛なゴリラ。




「ここに住んでるんですか?」



「居候」




なんでまた。



最初にそう聞いたとき私はあんまり、良い気持ちじゃなかった。



黒のタンクトップにダメージジーンズで、一体何してる人なんだろうと思った。



ずいぶん日焼けしているし。




その日は、ユキの家でBBQをして、ユキの家族と私たち家族やご近所さんも来ていて、みんな和気藹々としていた。



私は、知らない顔ぶれだったその男に、声をかけてみたのだが、まさかユキの家に居候してる従兄だったなんて思いもしなかった。






でも、不意に傍に寄った時、その男からはふわりとバニラみたいな薔薇の匂いがした。



私はそれが嫌いじゃなかった。
しおりを挟む

処理中です...