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第4章 裏切りと脅迫と忘却
snitch on ブルータス(告げ口をしたのは、身近で意外な人物) 後編<381>
しおりを挟む「セイとテン。お前ら、二人を俺が何で面倒見たと思う?」
竹中さんが不意に私とテンに問いかけた。
私とテンは首を傾げた。
「お前ら、いっつも商店街をうろちょろして、危なっかしいところはあったが、親の言う事、黙って聞いてたろ。他の店のガキんちょとは違った。お前ら二人は、こだわったんだ」
何にだよ。
私は眉を細め、テンは俯いた。
「両親に頼らず自分の居場所を作った。何でもするから何かさせろって、俺の店で、俺の言う事は、時には不承不承ながらでも全部聞いた。俺が任せる仕事を全部こなして、怒られたってちゃんと謝れたし、意見がある時はきちんと言葉にして来た。不貞腐れて投げ出す事はしなかった。嫌みを言っても、ちゃんと受け止めた。テンはソウが来てから、少しソウに甘えてたが。特にセイは、絶対に途中で物事を投げ出さなかった。要領はテンの方が良かったが、お前は何でも、やって来た」
そう言って、竹中さんはカビリアンの親マスターに視線を据えた。
「高校でカビリアンのマスターがセイを店に雇ったのは、お前が学費に困ってたからだけじゃねぇ。お前みたいに、イクヤにやって欲しいって、カビリアンのマスターが思ったからだ」
カビリアンの親マスターは、竹中さんの言葉に続いて口火を切った。
「高校卒業したら、セイは石崎の店を継ぐんだと思ったんだけどな?」
私は顔をしかめた。
「父さんと母さんが仕事が好きで、一生懸命なのは分かってた。でも、寂しかったから、私はお父さんやお母さんみたいには、なりたくなかった」
私は泣いていた。
何で、今更泣けれるのか不思議だった。
子どもの頃から、寂しくて心の中はぐちゃぐちゃだったけど、喚いてどうにかる、ごねてどうにか出来る。
それで、一体何が変わるのか?
それがあまりに不毛に思えて、私は、両親に期待する事を避けて、逃げて、忘れようとしてきた。
なのに、何で今更、それを悔しいと思ってしまうのか?
それがどうして、今更になってこんなに泣けるのか、分からなかった。
「それを子供の頃にちゃんと言えなかったのが、お前の一番の悪さだ。セイ」
気が付くと、お父さんとお母さんも、目に涙を浮かべていた。
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