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第4章 裏切りと脅迫と忘却
荒巻 美月の脅迫 後編<415>
しおりを挟む「では、ご注文を繰り返します。フードはアンティパスト、本日は4種のプレートです。生ハム原木のオリーブオイル黒胡椒仕立て。チーズ盛りは、ブルーチーズの蜂蜜がけに、ブリーチーズ。当店自慢(不本意ながら)のポテトサラダに。夏野菜のテリーヌ」
あぁ、覚えんの大変。
「続いてお飲み物ですが。マティーニは、アルコール度数25度以上でお作りします。スクリュードライバーは当店では13度前後で提供しております」
「え、酎ハイってパーセントですよね? 度だと、比率違うんですか?」
「同じと思っていただいて結構です。ビールは6パーセント前後です」
「え、無理」
瞬間、男からチッと舌打ちが聞こえて来た。
私は嫌いじゃないが、女の方の拳がギュッと握られていくのを見ながら、冬野さんはおせっかいだと思った。
こんな事で、心が閉じていく女なんて、私はつまらないと思う。
だからと言って、泡盛のコーレーグース割りをお冷のグラスで飲んで平気な奴も困るけどね。
いや、あいつ吐いたんだっけ。
途中で気づいて、私に残り飲ませようとして、私が吐いたら。
私が吐いたのに、つられて、貰いゲロ。
私のお気に入りのバッグに。
あぁ、嫌な事思い出した。
「何か、良い飲み物ないですか?」
「ブラッドオレンジジュースはいかがでしょうか? 飲まれた事、ございますか?」
「いいえ。初めて聞きます」
「では、ぜひ、いかかでしょうか?」
「そうします」
どうでも良いよ。
あんたが今夜どんな飲み物を飲んで、何を食べて、相手の男とどんな話をしてどんな感情を抱こうが。
今夜が人生の黒歴史になろうと、運命の日になろうと、何もない日常だろうとさ。
自分の人生は、自分で特別なものにして行かなきゃ。
人生全くつまらないだろ?
私はさ、向上心のない人間が、一番嫌いなんだよ。
だから、大嫌いなんだよ。
何も望まない。
欲張らない。
あの女がさ。
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