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第4章 裏切りと脅迫と忘却
嵐の後の――― 嵐 ―――― 後編<431>
しおりを挟む「夕飯、何か食べてくだろ?」
イクヤがやって来て、フードメニューの注文を取りに来た。
取り敢えず、アボカド、蒸し鶏、ゆで卵にツナなどがてんこ盛り大皿盛りのコブサラダを筆頭にオーダーを始める。
私のイチオシの、チーズ明太オムレツ。
お店の看板メニューのミートボールのマッシュポテト添え。
チナがさっぱりしたものが食べたいと言うのでサバサンド。
ソウがごはんが食べたいと言うのでパエリアを頼んだ
私はパスタが食べたくて唐辛子の利いたアラビアータを頼んだ。
「石崎さんの料理は、このお店で習った料理じゃないんですね?」
ちなの言葉に、私は苦笑した。
「このお店の料理はこのお店のだもん。私が、冬野さんに教えたのは、私がおばあちゃんから習った料理なの」
私が幼少の頃は、祖父母も両親と一緒に仕事する傍ら私を面倒を見てくれて、色んな事を教えてくれた。
お米の炊き方。
みそ汁の作り方。
お菓子の作り方。
テレビで見たフランス料理が食べたいと言って、教えてくれたのが野菜のテリーヌとエビドリア。
「やっぱ、お前おばあちゃん子な訳か?」
ソウが言った。
「中学上がる前までだけどね。 中学入ってすぐ別府に帰っちゃったらか」
何気ない話題でも、それなりに愉しめ、夕食を摂った後、帰りはソウに車で駅まで車で送って貰って、そこでチナとも別れた。
冬野さんに会いたい。
そう思いながらも、
金曜日も土曜日も、冬野さんからの連絡はなかった。
土曜日、私は手の込んだ料理を作りたくなって、豚の角煮を作りながら、休みを満喫していた。
夕方、インターフォンがなり、外に出ると、ソウが来ていた。
「どうしたの?」
「今日、今から時間あるか?」
「今度は何?」
「ついて来い」
「えっ、夕飯作ってんだけど?」
「後、どれくらいかかる?」
「30分かな。お鍋に火をかけてるから。中で話す? 今、豚の角煮作ってるの? 良かったら食べる?」
腕によりをかけて、朝スーパーの特売で買った豚バラの塊を4ブロックも煮込んでいる。
付け合わせの卵も野菜も下ごしらえは済んでいるし、ご飯も炊いていた。
テンは、火曜に電車でソウの農園のヘルプに湯布院に行っていて、家には私一人だった。
「俺は車だ」
「父さん達、夜遅いからうちの駐車場停める?」
「分かった」
「車停めたら、入ってきて。私、火を見ないと」
ソウは車を停めに行き、私は台所にもどった。
朝作って冷蔵庫に入れていたみそ汁に火を入れ直し、もう一品おかずを増やそうと。
オクラを茹でて、大振りの梅干をすりつぶして作った梅肉とおかかで和え物の小鉢を付けた。
ご飯にお味噌汁。 メインの豚の角煮と煮卵と茹でた小松菜の皿に、オクラの梅肉おかか和えの小鉢。
お茶は冷蔵庫の作り置きの麦茶を出した。
「お前、毎回こんな夕飯作ってんの?」
「休日で、手の込んだ物作りたくなった時だけ、滅多にしないよ」
差し向かいでテーブルに座り、食事をしながら、私はソウと色んな話をした。
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