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はじまりの村 アストレア

旅支度④

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 アストレアにある店で手に入るアイテムは、当たり前ながら大層な効果のあるものではなかった。剣や盾は今の職業ジョブでは装備できないものだったし、そもそも魔法職としての力は縛りプレイ用アイテムを使わないといけないレベルの力なのだから、杖や本も必要ないだろう。防御力は紙装甲クソ弱だが、それについても仕様的には問題がない。となるとあとはせいぜい2人とはぐれた時に自力では治せない状態異常バステの回復アイテム程度だが、これについてもやはり、死ねば変わらず新しい身体が生成されるから、基本的には必要ないのだろう。もはや呪いである。

 結局、店の中ではラブリエルたちが店内の客や店主と会話するのをぼんやりと眺めた以外は、ドクダミ草と見た目が変わらない毒消し草程度しか買わなかった。それを持ち運ぶカバン(これは装備とは別になっているようだ)がドクダミ臭くなるのはリアリティがある。毒で死ねばまた実績解除されるのだろうが、痛み以外の症状はあると分かった以上、あまり長く苦しむのも避けたい。

 地下牢では店主もちゃっかりとオレを犯していたのは覚えている。見た目が特徴的で、他の村人とは二回りほど違う筋骨隆々の大男だった。山賊に引けを取らない棍棒ナニを携えそれはもう酷く痛ぶられたのを記憶している。顔を覚えるのは苦手だが下半身の特徴と性癖は割と覚えられるのは何故だろうか。生前からの謎である。ラブリエルたちに救出されたのちに店で顔を合わせた際、他の客とラブリエルたちが会話している間に腕を掴まれ、半ば無理やりレジ内に引き摺り込まれる形で再び襲われ、そういう時に従順に身体を明け渡す癖があるオレは、されるがままに怒張したを咥えていた。

「店の内装グラフィックと店主の顔は基本あまりどこも変わらないんですけど、各々この世界の中で生きている人間キャラですからね!意思疎通もセックスも出来ますよ!」

 それをいつの間にか店主の背後に回って眺めていたラブリエルが言うと、店主は大層驚いた顔で背後を振り向き、バツが悪そうにモノをしまいながら、レジに入るのはやめてくれよ、と呟いた。ラブリエルとしては助け舟のつもりだったのかもしれないが、そもそもそれなら店に入る必要はなかったように思う。いや、ツボを割らせた時点でほぼラブリエルのせいである。

「別にセックスしたいわけじゃないんだよな…」

 口に入った陰毛を拭い、床になすりつけてレジを出た背中に店主が舌打ちをした。
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