27 / 115
「特別授業」
しおりを挟む
ハンプティ・ダンプティ壊滅後、隼人と結巳は特別に三日間の休暇を取るように言われた。
幹部との激闘は尋常ではないくらい、体が堪えたので彼にとっては非常にありがたかった。
隼人は宿舎の布団の上で静かに天井を眺めていた。鎌鼬の事を思い出していたのだ。
「すげー強かった」
初めて戦った鳥籠の幹部。隼人自身、実力の高い事自体は頭の片隅に置いいていいたが予想をはるかに上回っていた。
「あんな強い奴が後、何人もいるのか」
鳥籠壊滅の夢が僅かに遠のいた気がした。幹部一人を倒すのに多大な負傷を負ったのだ。
そして、鎌鼬を倒した後、自分達の窮地を救ってくれた男を思い出していたのだ。
「北原ソラシノ」
脳裏に焼き付いた彼の圧倒的な強さ。今の自分では手も足も出ないと思わせるほどの実力が伺えた。
隼人は三日ぶりに学園の校舎に足を運んだ。教室の扉の前まで来たやけに騒がしい事に気がついた。
気にせず教室の扉を開けた。生徒達は結巳の席を取り囲むようにして立っており一斉にこちらに目を向けてきた。
教室は静かになり、隼人はいつも通り席に着いた。しかし、何かが違った。殺意や嫉妬などの負の感情を感じないのだ。
すると一人の男子生徒が駆け寄ってきた。
「なあ、聖堂寺さんと幹部の人と一緒に鳥籠の幹部倒したって本当か?」
「ああ、それがなんだ?」
隼人は僅かに警戒しながら、答えると男子生徒の目が輝いた。
「お前らすげえよ!」
「やっぱ本当だったんだ!」
男子生徒の言葉に反応して、他の生徒達も騒ぎ始めた。
「幹部倒したんだろ!? うちの父さん。職員だから耳に入ったんだよ」
十六歳の青年と聖堂寺の令嬢が鳥籠の幹部を倒した。対策本部と学園内ではその話題で持ちきりだったのだ。
「まっ、まあな」
隼人は迫ってきた無数の同級生に動揺を隠せずにいた。結巳の方に目を向けると彼女も同様に狼狽えているように見える。
「ねえ。松阪くん。よかったらなんだけど剣術教えてもらえない? 私も松阪くんと同じ近距離型なんだ」
「えー私もー」
「すまない。人に教えられるほど器用じゃないんだ」
嘘だ。結巳を相手にしていたので指南する事は造作もない。ただ面倒なのだ。
突然、視界の端から威圧感を覚えた。視線を向けると結巳が怪訝そうな表情を浮かべていた。
しばらくすると担任の星野奏が入室していた。すると一斉に隼人や結巳の周りにいた生徒達が着席していく。
「えー。みなさん。おはようございます。本日は特別講師を連れてきました。ではどうぞ」
静かに教室の扉が開いた。入室してきた人間を見て、隼人は鳥肌が立ち上がった。
「初めまして。本日、特別講師として来ました。北原ソラシノです。よろしく」
「あの人が北原ソラシノ」
「嘘だろ」
「本物かよ」
特別講師の自己紹介とともに教室から黄色い声や驚愕の声が上がった。
対策本部の戦闘員やそれを目指す者なら誰もが憧れる人物。その本人が今、目の前にいるのだ。
「あの時の」
隼人は彼に救われて以来、気になり彼についての情報を頭に入れていた。
北原ソラシノ。忌獣対策本部最強の戦闘員。僅か十四歳で対策本部に特例で入り、初陣で忌獣五十体以上を討伐。
六年前の『鳥籠』との抗争では幹部数名を単独で討伐し、さらには首領である迦楼羅《かるら》を瀕死寸前まで追い詰めるなどの功績を挙げた。
「本日は北原戦闘員直々に訓練を指導してもらいます。みなさん心してかかるように」
「はい!」
その場にいた生徒達が一斉に返事をした。訓練場に移動したのちソラシノによる指導が始まった。
刀剣、細剣型などの近距離型の聖滅具の扱い方や弓や銃などの遠距離型など様々な事を彼から学んだ。
「じゃあ、そこの三人。聖滅具を起動させて僕にかかって来てくれ」
ソラシノが男子生徒三人を指名し、自分にかかってくるように指示を出した。
「容赦しませんよ?」
「ああ、本気でかかってくるといい」
「いくぞ! 二人とも!」
男子生徒の声に二人が反応するとともに走り出した。一方、ソラシノは何一つ持っていない。
「何をするつもりだ」
隼人はソラシノの様子に目を見張る。男子生徒が勢いよく、攻撃を仕掛けた。
ソラシノはいとも容易く三人の攻撃を交わしていく。まるで見切っているような動作だ。
「さて。そろそろ仕留めに入るか」
ソラシノが一人の攻撃をかわした瞬間、男子生徒を足払いした。そして、襲いかかる二人も一人目と同じく地面に倒してしまった。
「三人とも。お疲れ。悪くなかったよ」
ソラシノが朗らかな笑みを作った。隼人は鳥肌が立った。三人がかりの攻撃を息も切らさず、交わす体力と制圧のタイミングを読む判断力。
そして、相手を制圧するその速さ。隼人が今まで見て来た人間達を遥かに上回っている。
「さて、次の人は?」
「俺です」
隼人は緊張感を胸に重い足取りでソラシノの前に立った。
「君はあの時の」
ソラシノが隼人を思い出したような素振りを見せた。
「松阪隼人です。よろしくお願いします」
「鳥籠の幹部を打ち取った実力。見せてもらおう」
ソラシノが鋭い眼光を隼人に向けて来た。隼人も負けじとソラシノを睨みつけて、闘志を燃やした。
幹部との激闘は尋常ではないくらい、体が堪えたので彼にとっては非常にありがたかった。
隼人は宿舎の布団の上で静かに天井を眺めていた。鎌鼬の事を思い出していたのだ。
「すげー強かった」
初めて戦った鳥籠の幹部。隼人自身、実力の高い事自体は頭の片隅に置いいていいたが予想をはるかに上回っていた。
「あんな強い奴が後、何人もいるのか」
鳥籠壊滅の夢が僅かに遠のいた気がした。幹部一人を倒すのに多大な負傷を負ったのだ。
そして、鎌鼬を倒した後、自分達の窮地を救ってくれた男を思い出していたのだ。
「北原ソラシノ」
脳裏に焼き付いた彼の圧倒的な強さ。今の自分では手も足も出ないと思わせるほどの実力が伺えた。
隼人は三日ぶりに学園の校舎に足を運んだ。教室の扉の前まで来たやけに騒がしい事に気がついた。
気にせず教室の扉を開けた。生徒達は結巳の席を取り囲むようにして立っており一斉にこちらに目を向けてきた。
教室は静かになり、隼人はいつも通り席に着いた。しかし、何かが違った。殺意や嫉妬などの負の感情を感じないのだ。
すると一人の男子生徒が駆け寄ってきた。
「なあ、聖堂寺さんと幹部の人と一緒に鳥籠の幹部倒したって本当か?」
「ああ、それがなんだ?」
隼人は僅かに警戒しながら、答えると男子生徒の目が輝いた。
「お前らすげえよ!」
「やっぱ本当だったんだ!」
男子生徒の言葉に反応して、他の生徒達も騒ぎ始めた。
「幹部倒したんだろ!? うちの父さん。職員だから耳に入ったんだよ」
十六歳の青年と聖堂寺の令嬢が鳥籠の幹部を倒した。対策本部と学園内ではその話題で持ちきりだったのだ。
「まっ、まあな」
隼人は迫ってきた無数の同級生に動揺を隠せずにいた。結巳の方に目を向けると彼女も同様に狼狽えているように見える。
「ねえ。松阪くん。よかったらなんだけど剣術教えてもらえない? 私も松阪くんと同じ近距離型なんだ」
「えー私もー」
「すまない。人に教えられるほど器用じゃないんだ」
嘘だ。結巳を相手にしていたので指南する事は造作もない。ただ面倒なのだ。
突然、視界の端から威圧感を覚えた。視線を向けると結巳が怪訝そうな表情を浮かべていた。
しばらくすると担任の星野奏が入室していた。すると一斉に隼人や結巳の周りにいた生徒達が着席していく。
「えー。みなさん。おはようございます。本日は特別講師を連れてきました。ではどうぞ」
静かに教室の扉が開いた。入室してきた人間を見て、隼人は鳥肌が立ち上がった。
「初めまして。本日、特別講師として来ました。北原ソラシノです。よろしく」
「あの人が北原ソラシノ」
「嘘だろ」
「本物かよ」
特別講師の自己紹介とともに教室から黄色い声や驚愕の声が上がった。
対策本部の戦闘員やそれを目指す者なら誰もが憧れる人物。その本人が今、目の前にいるのだ。
「あの時の」
隼人は彼に救われて以来、気になり彼についての情報を頭に入れていた。
北原ソラシノ。忌獣対策本部最強の戦闘員。僅か十四歳で対策本部に特例で入り、初陣で忌獣五十体以上を討伐。
六年前の『鳥籠』との抗争では幹部数名を単独で討伐し、さらには首領である迦楼羅《かるら》を瀕死寸前まで追い詰めるなどの功績を挙げた。
「本日は北原戦闘員直々に訓練を指導してもらいます。みなさん心してかかるように」
「はい!」
その場にいた生徒達が一斉に返事をした。訓練場に移動したのちソラシノによる指導が始まった。
刀剣、細剣型などの近距離型の聖滅具の扱い方や弓や銃などの遠距離型など様々な事を彼から学んだ。
「じゃあ、そこの三人。聖滅具を起動させて僕にかかって来てくれ」
ソラシノが男子生徒三人を指名し、自分にかかってくるように指示を出した。
「容赦しませんよ?」
「ああ、本気でかかってくるといい」
「いくぞ! 二人とも!」
男子生徒の声に二人が反応するとともに走り出した。一方、ソラシノは何一つ持っていない。
「何をするつもりだ」
隼人はソラシノの様子に目を見張る。男子生徒が勢いよく、攻撃を仕掛けた。
ソラシノはいとも容易く三人の攻撃を交わしていく。まるで見切っているような動作だ。
「さて。そろそろ仕留めに入るか」
ソラシノが一人の攻撃をかわした瞬間、男子生徒を足払いした。そして、襲いかかる二人も一人目と同じく地面に倒してしまった。
「三人とも。お疲れ。悪くなかったよ」
ソラシノが朗らかな笑みを作った。隼人は鳥肌が立った。三人がかりの攻撃を息も切らさず、交わす体力と制圧のタイミングを読む判断力。
そして、相手を制圧するその速さ。隼人が今まで見て来た人間達を遥かに上回っている。
「さて、次の人は?」
「俺です」
隼人は緊張感を胸に重い足取りでソラシノの前に立った。
「君はあの時の」
ソラシノが隼人を思い出したような素振りを見せた。
「松阪隼人です。よろしくお願いします」
「鳥籠の幹部を打ち取った実力。見せてもらおう」
ソラシノが鋭い眼光を隼人に向けて来た。隼人も負けじとソラシノを睨みつけて、闘志を燃やした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる