「黒炎の隼」

蛙鮫

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「二対一」

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 聖堂寺結巳は緊迫していた。目の前の森から数体の忌獣が姿を現したからだ。

 少し前に森から男子生徒と女子生徒が出て来た。女子生徒の証言によれば松阪隼人が戦っていると事だ。

 結巳は彼の無事を祈るとともに眼前の的に殺意を向けた。

「打ち取る!」
 細剣を構えた瞬間、忌獣達がこちらに走って来た。

氷柱アイシクル!」
 結巳の声とともに忌獣の真下から氷柱がいつも生えて来て、串刺しにした。数体が聞くに耐えない絶叫が上げながら絶命したが、一体を取り逃がしてしまった。

 合宿所はなんとしても守らなければならない。教官がともに応戦してくれているが、いつまで持つか分からない。

「グオ!」

「がはっ!」
 突然、森から出現した忌獣の奇襲に対応できず、教官が攻撃を食らってしまった。

「教官!」

「大丈夫だ! これしきの傷」
 結巳は肩から血が流れる教官を痛ましく思いながら、彼を傷つけた忌獣を睨んだ。

「よくも!」

「ゲルル」

「ケコケコ」
 教官を傷つけた忌獣の横からさらに二体の忌獣が出現した。結巳が武器を構えた瞬間、何かの光が忌獣達を貫いた。

 忌獣達が声を上げることもなく、地面に倒れた。

「一体、何が」

「おや、大丈夫か? お嬢」

「貴方は!」

 森の中から忌獣対策本部の幹部、ザクロが姿を現した。メキシカンポンチョに身を包んで、腰には拳銃型の聖滅具を備えていた。

「なぜ、ここに」

「この島に鳥籠の関係者が向かっているって、本部に連絡あったらしくてな。半信半疑で来てみりゃこのざまだ」

「周辺の忌獣の確認だ!」

「了解!」
 すると森の方から次々と忌獣対策本部の戦闘員が姿を現した。

「ザクロさん。今、松阪君が森の中に向かったので参戦しています」

「分かった。合宿所周辺は俺に任せろ」
 結巳は合宿所をザクロ達に任せて、隼人を探しに森に行った。



 隼人は突然、現れた結巳の存在に驚いていた。

「聖堂寺! 合宿所の方は!」

「今、本部から対策本部の応援がこの島に来た」

 結巳がそう言った瞬間、周囲が一気に騒がしくなった。結巳が隼人に軽く笑みを浮かべた後、尊の方に目を向けた。

「あなた。鳥籠の回し者ね」

「そっ。迦楼羅様の勅命を受けてさ。そこの銀髪の男の子を処分しにきたってワケ。あと君って聖堂寺家なの?」

「ええ。偉大なる聖堂寺の血を引くものよ」

「いやー君も後から殺しに行こうとしていたんだけど、まさかそっちからきてくれるなんてね」
 尊が指を鳴らして、鋭い目でこちらに見つける。その目には確かな殺意が宿っていた。

「気をつけろ。あいつは動作で発生した微かな風や衝撃波を何十倍にもして、相手にぶつけてくる」

「なるほど、なら動きを止めるしか」

「させないよ!」
 尊が力強く、片手を横に振った。その瞬間、凄まじい風が隼人と結巳を襲った。

 隼人は衝撃を躱しながら、距離を詰めて行く。彼の能力は近距離でのみ発揮する。結巳のように近距離、遠距離両方に対応できるほど器用ではない。

「僕の能力は攻撃だけじゃない」
 地面を勢いよく蹴り、その衝撃で素早く接近してきたのだ。

「こういう使い方もできるのさ」

「なっ!」
 隼人の鳩尾に尊の膝蹴りがめり込んだ。口の中に血の味が広がるのを感じながら、後方に飛んで行った。

「松阪君! よくも!」
 結巳が眉間にシワを寄せて、冷気を纏った刀身で斬りかかった。しかし、いともたやすく避けられて、攻撃をもろに受けてしまった。

「やっぱり女は弱い」

「聖堂寺!」
 森の方に飛んで行った結巳を心配しつつ、目の前にいる敵を警戒する。異能が予想以上に厄介である事を知った。

 しかし、負けるわけにはいかない。ここで自分が倒れれば対策本部の人間が討伐出来たとしても、甚大な被害は避けられないのだ。

「影焔!」
 隼人はゆっくりと立ち上がり、刀身を強く振るった。

 刀身が黒い炎に包まれて、体自体も一気に熱くなった。

「それが君の異能か」

「ああ、ここでお前を打ち取る」
 隼人はそう言いながら、刃先を尊に向けた。
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