99 / 115
「臆病者」
しおりを挟む聖堂寺光が弓を光り輝く矢を何発も打ってきた。
「この閃光。ヘリを落としたのはこの技か」
「その通りです」
隼人と結巳とともに攻撃を躱してながら、反撃の隙を伺っていく。
「私が突破口を開くから、松阪君が兄さんを攻撃して!」
「了解」
結巳からの提案を承諾すると、隼人はすぐさま攻撃に備えた。
「氷壁!」
結巳が地面に剣を突き刺すと、氷の壁が生えるように出現した。氷の壁につき次と光の矢が突き刺さっていく。
結巳が攻撃を防いでいる隙に隼人が刀身で手のひらに傷をつけた。
「影焔!」
彼の血を吸った黒炎が凄まじい勢いで燃え上がり始めた。同時に体が熱くなり、軽くなる。
「はああああ!」
全速力で食らいつく隼人。しかし、それを予見していたように光が攻撃を躱した。
「甘いですよ」
「氷柱
結巳の言葉に反応するように地面から氷の針がいくつも飛び出してきた。光が氷柱をなぎ倒すのに意識を持って行かれている隙に距離を詰める。
「失せなさい! 結巳!」
光の放った閃光が結巳の左肩を捉えて、彼女が後方に吹き飛んだ。しかし、結巳に意識が向いたおかげで隼人は食らいつくことに成功した。
「はああああ!」
隼人の振り下ろした刃と光が上げた刀身が重なった。刃と刃。心と心がぶつかり火花を散らしている。
「中々、重い一撃ですね」
「ご所望なら、もっと強く出来るぞ」
刃をぶつけながら、軽口を叩く隼人。そして、その言葉に笑みを返す光。隼人はその作り笑いに憤りと虚しさを覚えた。
「失うものが何もない世界とか言っていたな」
「それが何ですか?」
「詭弁だろうが」
「詭弁?」
「あんたは他人との関わりを恐れたただの臆病者だ」
隼人の言葉を聞いて、光の表情が僅かに崩れた。
「臆病者はあなたもでしょう。松阪隼人。一六で幹部に比肩する強さを手に入れたあなただって他者との関わりを断つ事で手に入れた。そんなあなたが私を攻め立てる資格などありません!」
光が声を荒げながら、抵抗を続ける。失い続けた人間の断末魔のような叫びが周囲に轟いた。
「そうだ。俺は臆病者だ。失う怖さを知って、人との関わりをやめたあんたと同じ臆病者だ」
心に渦巻く感情を次々と吐き出して行く。自分の不甲斐なさ。弱さ。それをこの数ヶ月で身に沁みて、理解した。
「だからこそ! 臆病者に聖堂寺が大事にしているモノで溢れているこの世界を壊させるわけにはいかない! 何も奪わせない! 何も傷つけさせない!」
「松阪君」
後方でゆっくりと息を整える結巳が隼人の胸の内を聞いて、ほんのり涙を浮かべていた。
「ほざけ!」
隼人は何度も刃を交えた。剣を通して伝わる互いの感情。剣撃の強さから隼人は光の情念がどれほど強いか感じ取る事が出来た。
「失う怖さから逃げたあんたとは違って、こいつは逃げなかった! こいつはもうあんたなんかよりもよっぽど強いんだよ!」
隼人は口の端から血を流しながら、言葉を吐き出していく。それは彼女を側で見て来た彼だから言える事だ。
「影焔!」
隼人が怒号にも似た叫び声を上げると、それに反応するように黒炎が更に燃え盛った。
その瞬間、耐久力を超えたのか。光の聖滅具が音を立てて、真っ二つに割れたのだ。
そして、そのまま流れるように黒炎に包まれた刀身が光を切り裂いた。
「がああああああああ!」
光が叫び声を上げながら、後方に下がった。傷口を抑えながら、歯を食いしばっている。
未だに燃え続ける黒炎が光の傷口を焼いている。
「これしきの事で!」
「いや。終わりだ」
隼人は冷静に言葉を吐いた。何故なら光の背後で結巳が細剣を構えていたからだ。
隼人との激闘に気を取られて、気がつかなかったのだ。
「氷結斬
結巳が凍てつく刀身で実兄の背中を切りつけた。
「がはあああ!」
光の背中から氷の結晶が生えて、光が足元から地面に倒れた。背中から出ている氷が彼の血が染みて、赤く染まった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる