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「黒い感情」
しおりを挟む緊張感漂うヘリコプターの中、隼人は生唾を飲んだ。自身の予想が当たったからだ。
「駄目だ」
隼人は却下した。しかし理解もしている。これは私情。この悲劇を終わらせる有効な手段を己の身勝手さで放棄しようとしているのだ。
「でも隼人。これしかない」
鷹の淀みのない真っ直ぐな瞳がこちらに向けられる。
隼人の口から思わずため息が漏れた。
再会出来た親友と今度は本当に別れることになる。それが隼人にはとても受け入れがたい事だったのだ。
しかし、これ以外にこの問題を解決する術はない。
「本当にそれしかないの?」
「文献によるヴリトラの頭は非常に硬い。今の体力のない僕達では脳を破壊するのは不可能だ。だけど影焔という爆発的な火力が隼人なら望みはある」
「わかった」
苦虫を噛むように歯を食いしばって、同意した。
「ヴリトラの頭頂部に向かってください。終わらせます」
「了解だ」
柘榴に伝えると、ヘリコプターはヴリトラの頭頂部に向かった。ヴリトラは町の近くまで迫っている。
もはや一刻の猶予も残されていないのだ。
「二人はどうする?」
隼人は結巳と揚羽に問いかけた。人手があったほうが良いがこれ以上、無理強いは出来ない。
「私はいくわ。前に言ったでしょ。貴方を一人にしないと」
「私もだよ。初めて出来た友達だからね」
二人は真剣な目で首を縦に振った。
「みんな。もう着くぞ」
柘榴の言葉で再び、機内に緊張感がほとばしる。ヘリコプターはヴリトラの首部分に近づいていた。
街へ進んでいるヴリトラの頭頂部が見えて来たのだ。
「今だ!」
隼人は仲間を連れて、ヘリコプターから飛び降りた。受け身をとって着地するとすぐさまヴリトラの脳に向かった。
不安定な足場としばらく進んでいるとヴリトラの頭が見えた。赤黒く全身と同じく硬い鱗に覆われている。
「見えたな」
「でも、そう簡単に行かせてはくれないみたいだよ」
踏み出そうとした時、周囲から無数の忌獣がわらわらと姿を現した。
それとともに隼人の脳裏に無数の人間の姿が悲鳴をあげながら、足元にしがみつく光景が浮かんだ。
直感で聖堂寺によって命を奪われた者達だと理解した。怒りを滲ませた者や苦悶に満ちた表情を浮かべる者。
ひたすら泣き続ける者など数え切れないほどの人間の意識が脳裏を駆け巡る。
「助けて」
「苦しい」
「殺さないで」
「許さない」
絶望と悲しみに満ちた声が頭の中になだれ込んで来る。数百年にも渡って行われてきた負の連鎖。
それを表す絶望の声が聞こえて来るのだ。
「あんたらも開放してやるから、黙って通せ!」
呪われた因果を断ち切るために隼人は聖滅具を構えた。
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