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「戦いの後」
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雲ひとつない青空の下。松阪隼人は慰霊碑を静かに眺めていた。
無数に刻まれた英雄達の名の中に隼人の親友である鳳鷹の名前も刻まれていた。
「母が彼も入れるべきだと対策本部に掛け合ってくれたの」
「首長には頭が上がらないな」
結巳が慰霊碑に目を向けながら、口元に笑みを作った。先月の激闘を共に生き抜いた戦友だ。
壮絶な激闘から一ヶ月。未だに倒壊した建物の撤去作業とヴリトラの解体作業が行われていた。
対策本部では大勢の負傷者と死者が出た。しかし、対策本部の職員、自衛隊、警察などの公的機関の活躍により市民から死者が出る事はなかった。
聖堂寺光と迦楼羅こと鳳鵙が引き起こした災害。通称『蛇災』の件は日本のみならず世界でも報道された。
「美香さんは大丈夫か?」
「ええ。兄さんの訃報を聞いたときは酷く取り乱していたけど、今は落ち着いているわ」
実の息子に組織を追放されたとはいえ、やはり思うところはあるのだろう。隼人自身、美香には非常にお世話になったので無事を聞けて安堵感を覚えた。
「これから聖堂寺家はどうなるんだろうな。対策本部の歴史とかあの怪物の事は世の中に知れ渡っているし」
「聖堂寺は潰れるでしょうね。でも対策本部はしばらく残るわ。忌獣はまだいるもの」
鳥籠が壊滅し、迦楼羅もいなくなった事で鳥籠と手を組んでいた組織は大打撃を受けた。
しかし、忌獣は残っている。この残った問題を終わらせるために対策本部は必要なのだ。
「今から行くのよね」
「ああ、情報収集兼再会だ」
隼人は結巳とともに忌獣の居住地などを知っているであろう証人の元へ向かっていた。
しばらくすると白が強調された大型の施設が見えた。 忌獣対策本部が管理する鳥籠関係者を収容する施設だ。
入管許可書をもらい、無機質な廊下を進んで行く。しばらくすると面会室が見えて来た。
面会相手との施食を遮るようにアクリルガラスで仕切りが作られる。隼人と結巳は用意されていた椅子に座りながら、相手を待っていると向こう側の扉が開いた。
「あっ、来てくれたんだ。二人とも」
隔たれたガラスの向こう、白一色の服を着た白峰揚羽の姿があった。
「一ヶ月ぶりだな。白峰」
「大丈夫?」
「うん。思った以上に丁重に扱ってもらっているよ」
あの戦いの後、白峰揚羽は鳥籠の工作員で活動していたという事もあり、対策本部が管理する収容施設に収監される事になった。
ただ、隼人と共に迦楼羅とヴリトラを止めた事と忌獣関係の情報提供という条件に罪は大幅に緩和されている。
白峰揚羽の情報により鳥籠と密接に繋がっていた組織。そして忌獣の数をほぼ把握することが出来た。
「おそらくあと一年もすれば忌獣は完全に根絶できると思う」
「そうか。ありがとう。でも本当に良かったのか。もっと意見すれば罪だって軽くなったかもしれない」
「鳥籠の元で情報を流していたのは事実だから。それにみんなと関わったおかげで私はより自分の犯した罪の重さを理解できた。だから償いたいの」
「何か出来ることは」
「うーん。じゃあ面会来てよ。いつでも良いからさ」
白峰が白い歯を見せて、笑った。そこにいたのは自分達の側で笑顔を見せていた彼女だった。
いつかガラス越しではなく、直接彼女に会いたい。隼人は心の中で願った。
結巳と別れた後、隼人は祖父である松阪シライの家に向かっていた。辺りは茜色に染まっており、夜の訪れを予感させていた。
「爺ちゃんいるか?」
戸を開けて声をかけても、返事がない。そのまま上がり、辺りを見渡すと奥の縁側に人影が見えた。
シライだ。近くにはビール缶が置かれて、空をじっと見つめていた。
「爺ちゃん」
「おお。すまん。気づかなかった」
シライの顔は飲酒の影響でほんのりと赤くなっていた。辺りには空になったビール缶が数巻置かれている。
「一日ここで飲んでいたのか?」
「まあな。こんな日は久しぶりだ」
シライが再び、缶ビールを口にする。隼人自身、酒を飲む祖父は数回しか見た事がなかったので内心、少し驚いていた。
「やっぱりビールは冷えているものに限るな」
胡座をかいて、泡があふれた発泡酒を喉に流し込んで行く。脳裏にかつて友と交わした約束が過ぎる。
「ありがとうな。迦楼羅と倒してくれて」
「ああ、まあ」
「これで死んでいったみんなも報われる」
シライが隼人の方を向いて、優しい笑みを浮かべた。みんなというのはおそらく迦楼羅に挑んで、命を散らした戦闘員達の事だ。
「願いは叶わなかったな」
シライが掠れて消えそうな小さな声で呟くと、押し流すようにビールを飲み干すと缶を握りつぶした。
その目は僅かに潤んでいるように見えた。
無数に刻まれた英雄達の名の中に隼人の親友である鳳鷹の名前も刻まれていた。
「母が彼も入れるべきだと対策本部に掛け合ってくれたの」
「首長には頭が上がらないな」
結巳が慰霊碑に目を向けながら、口元に笑みを作った。先月の激闘を共に生き抜いた戦友だ。
壮絶な激闘から一ヶ月。未だに倒壊した建物の撤去作業とヴリトラの解体作業が行われていた。
対策本部では大勢の負傷者と死者が出た。しかし、対策本部の職員、自衛隊、警察などの公的機関の活躍により市民から死者が出る事はなかった。
聖堂寺光と迦楼羅こと鳳鵙が引き起こした災害。通称『蛇災』の件は日本のみならず世界でも報道された。
「美香さんは大丈夫か?」
「ええ。兄さんの訃報を聞いたときは酷く取り乱していたけど、今は落ち着いているわ」
実の息子に組織を追放されたとはいえ、やはり思うところはあるのだろう。隼人自身、美香には非常にお世話になったので無事を聞けて安堵感を覚えた。
「これから聖堂寺家はどうなるんだろうな。対策本部の歴史とかあの怪物の事は世の中に知れ渡っているし」
「聖堂寺は潰れるでしょうね。でも対策本部はしばらく残るわ。忌獣はまだいるもの」
鳥籠が壊滅し、迦楼羅もいなくなった事で鳥籠と手を組んでいた組織は大打撃を受けた。
しかし、忌獣は残っている。この残った問題を終わらせるために対策本部は必要なのだ。
「今から行くのよね」
「ああ、情報収集兼再会だ」
隼人は結巳とともに忌獣の居住地などを知っているであろう証人の元へ向かっていた。
しばらくすると白が強調された大型の施設が見えた。 忌獣対策本部が管理する鳥籠関係者を収容する施設だ。
入管許可書をもらい、無機質な廊下を進んで行く。しばらくすると面会室が見えて来た。
面会相手との施食を遮るようにアクリルガラスで仕切りが作られる。隼人と結巳は用意されていた椅子に座りながら、相手を待っていると向こう側の扉が開いた。
「あっ、来てくれたんだ。二人とも」
隔たれたガラスの向こう、白一色の服を着た白峰揚羽の姿があった。
「一ヶ月ぶりだな。白峰」
「大丈夫?」
「うん。思った以上に丁重に扱ってもらっているよ」
あの戦いの後、白峰揚羽は鳥籠の工作員で活動していたという事もあり、対策本部が管理する収容施設に収監される事になった。
ただ、隼人と共に迦楼羅とヴリトラを止めた事と忌獣関係の情報提供という条件に罪は大幅に緩和されている。
白峰揚羽の情報により鳥籠と密接に繋がっていた組織。そして忌獣の数をほぼ把握することが出来た。
「おそらくあと一年もすれば忌獣は完全に根絶できると思う」
「そうか。ありがとう。でも本当に良かったのか。もっと意見すれば罪だって軽くなったかもしれない」
「鳥籠の元で情報を流していたのは事実だから。それにみんなと関わったおかげで私はより自分の犯した罪の重さを理解できた。だから償いたいの」
「何か出来ることは」
「うーん。じゃあ面会来てよ。いつでも良いからさ」
白峰が白い歯を見せて、笑った。そこにいたのは自分達の側で笑顔を見せていた彼女だった。
いつかガラス越しではなく、直接彼女に会いたい。隼人は心の中で願った。
結巳と別れた後、隼人は祖父である松阪シライの家に向かっていた。辺りは茜色に染まっており、夜の訪れを予感させていた。
「爺ちゃんいるか?」
戸を開けて声をかけても、返事がない。そのまま上がり、辺りを見渡すと奥の縁側に人影が見えた。
シライだ。近くにはビール缶が置かれて、空をじっと見つめていた。
「爺ちゃん」
「おお。すまん。気づかなかった」
シライの顔は飲酒の影響でほんのりと赤くなっていた。辺りには空になったビール缶が数巻置かれている。
「一日ここで飲んでいたのか?」
「まあな。こんな日は久しぶりだ」
シライが再び、缶ビールを口にする。隼人自身、酒を飲む祖父は数回しか見た事がなかったので内心、少し驚いていた。
「やっぱりビールは冷えているものに限るな」
胡座をかいて、泡があふれた発泡酒を喉に流し込んで行く。脳裏にかつて友と交わした約束が過ぎる。
「ありがとうな。迦楼羅と倒してくれて」
「ああ、まあ」
「これで死んでいったみんなも報われる」
シライが隼人の方を向いて、優しい笑みを浮かべた。みんなというのはおそらく迦楼羅に挑んで、命を散らした戦闘員達の事だ。
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その目は僅かに潤んでいるように見えた。
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