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「ひまわりの少女」
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聞き慣れない言葉が耳に流れ込んできた。入学。学校という教育機関で学びを得るために入る事だ。
俺とは無縁の場所と思っていたが何故、松阪先生はこのような提案をしてきたのだろう。
「金剛杵学園ですか? あの学校で行われる実技と学問のカリキュラムなら既に終えていますが」
「いや、私の知り合いが高校を運営していてね。そこに編入してほしい」
「何故ですか? その学校の中に敵対勢力がいるとか」
「いやいや、そういう事ではない。学んで欲しいのさ。外の世界を」
「学ぶ?」
「君は今までこの施設で過ごして忌獣対策本部の命令通り、忌獣を駆逐する日々を送ってきた。君はまだ若い。知って欲しいのさ。君の知らないこの世界のことを」
そう言って松阪先生が微笑んだ。
「それがご命令なら」
俺は松阪先生に頭を下げた。
一ヶ月後、制服という慣れない服装に袖を通して、俺は施設の外に出た。
十六歳にして初めての学生生活。忌獣討伐とは違った緊張感を覚えた。
上を見上げると雲一つない晴天が俺の目に映った。心地よさを覚えながら、俺は足を進めた。
高校までは電車を使って向かうらしい。伝えられた情報を頼りに改札をくぐって、電車に乗った。
電車に乗るのはかなり久しぶりだ。電車の中のモニターではニュースが流れていた。忌獣関連の事だ。
テレビの中では忌獣の特徴と被害者のことがニュースキャスターの口からつらつらと述べられていた。
百年も昔から存在する異形の存在。周りの人も凄惨なことがあったにもかかわらず、ニュースには目を向けない。
きっとこの日常に慣れてしまっているのだ。ニュースから目をそらすとあるものが視界に入った。
少し離れたところに茶色の髪色をした小柄な女子高生と小太りの中年の男が立っていた。
しかし、距離があまりに近かったのだ。人が多いにしてはあまりにも距離が近すぎる。
そして、男の手が明らかに女子高生の下半身部分で動いていた。女子高生は怯えているのか、歯を食いしばって辺りに目を向けていた。
間違いない。痴漢だ。確信した俺は女子高生と男の元に向かった。
「おい。あんた。痴漢だろ」
女子高生の尻を触っていた男の手を掴んだ。男が目を見開いて、驚いた様子で俺を見ている。
「おい! 離せ!」
「暴れるな。次の駅で降りるぞ。君も一緒に」
「はい」
電車が次の駅に着いた時、俺は男と女子高生とともに駅に降りた。抵抗する男を抑えながら、駅員のところへ向かった。その間、女子高生は顔を伏せたままだ。
痴漢した男は警察の御用になった。
「大丈夫?」
「はい。ありがとうございました」
女子高生が俺に頭を下げた。涙を流していたのか、目元はほんのりと赤くなっていた。
「あの、その制服。うちの高校ですよね」
「ん? あっ」
彼女に言われて気がついた。彼女とブレザーの色合いが同じだったのだ。
「見ない顔ですけど、ひょっとして転校生ですか?」
「ああ。今日から通うことになって」
「あの、良かったら、学校まで案内させてください。助けてもらったお礼がしたんです」
彼女が少し顔を赤くして、俺を見た。おそらく勇気を出して、俺に恩を返そうとしてくれているのだろう。
学校の場所自体は把握済みだが、彼女の気持ちを無下には出来ない。
「ならお願いしようかな」
俺がそう答えると彼女が水をもらった花のように生気を取り戻して、明るい表情を浮かべた。
「任されました! 私、 北原恵那! よろしく!」
「ソラシノだ」
「よろしくね! ソラシノ君!」
その笑顔にひまわりのような温かさを感じた。
俺とは無縁の場所と思っていたが何故、松阪先生はこのような提案をしてきたのだろう。
「金剛杵学園ですか? あの学校で行われる実技と学問のカリキュラムなら既に終えていますが」
「いや、私の知り合いが高校を運営していてね。そこに編入してほしい」
「何故ですか? その学校の中に敵対勢力がいるとか」
「いやいや、そういう事ではない。学んで欲しいのさ。外の世界を」
「学ぶ?」
「君は今までこの施設で過ごして忌獣対策本部の命令通り、忌獣を駆逐する日々を送ってきた。君はまだ若い。知って欲しいのさ。君の知らないこの世界のことを」
そう言って松阪先生が微笑んだ。
「それがご命令なら」
俺は松阪先生に頭を下げた。
一ヶ月後、制服という慣れない服装に袖を通して、俺は施設の外に出た。
十六歳にして初めての学生生活。忌獣討伐とは違った緊張感を覚えた。
上を見上げると雲一つない晴天が俺の目に映った。心地よさを覚えながら、俺は足を進めた。
高校までは電車を使って向かうらしい。伝えられた情報を頼りに改札をくぐって、電車に乗った。
電車に乗るのはかなり久しぶりだ。電車の中のモニターではニュースが流れていた。忌獣関連の事だ。
テレビの中では忌獣の特徴と被害者のことがニュースキャスターの口からつらつらと述べられていた。
百年も昔から存在する異形の存在。周りの人も凄惨なことがあったにもかかわらず、ニュースには目を向けない。
きっとこの日常に慣れてしまっているのだ。ニュースから目をそらすとあるものが視界に入った。
少し離れたところに茶色の髪色をした小柄な女子高生と小太りの中年の男が立っていた。
しかし、距離があまりに近かったのだ。人が多いにしてはあまりにも距離が近すぎる。
そして、男の手が明らかに女子高生の下半身部分で動いていた。女子高生は怯えているのか、歯を食いしばって辺りに目を向けていた。
間違いない。痴漢だ。確信した俺は女子高生と男の元に向かった。
「おい。あんた。痴漢だろ」
女子高生の尻を触っていた男の手を掴んだ。男が目を見開いて、驚いた様子で俺を見ている。
「おい! 離せ!」
「暴れるな。次の駅で降りるぞ。君も一緒に」
「はい」
電車が次の駅に着いた時、俺は男と女子高生とともに駅に降りた。抵抗する男を抑えながら、駅員のところへ向かった。その間、女子高生は顔を伏せたままだ。
痴漢した男は警察の御用になった。
「大丈夫?」
「はい。ありがとうございました」
女子高生が俺に頭を下げた。涙を流していたのか、目元はほんのりと赤くなっていた。
「あの、その制服。うちの高校ですよね」
「ん? あっ」
彼女に言われて気がついた。彼女とブレザーの色合いが同じだったのだ。
「見ない顔ですけど、ひょっとして転校生ですか?」
「ああ。今日から通うことになって」
「あの、良かったら、学校まで案内させてください。助けてもらったお礼がしたんです」
彼女が少し顔を赤くして、俺を見た。おそらく勇気を出して、俺に恩を返そうとしてくれているのだろう。
学校の場所自体は把握済みだが、彼女の気持ちを無下には出来ない。
「ならお願いしようかな」
俺がそう答えると彼女が水をもらった花のように生気を取り戻して、明るい表情を浮かべた。
「任されました! 私、 北原恵那! よろしく!」
「ソラシノだ」
「よろしくね! ソラシノ君!」
その笑顔にひまわりのような温かさを感じた。
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