26 / 54
「わがまま」
しおりを挟む
休日。俺は一人、北原を待っていた。久しぶりにデートというやつだ。ここのところ、作戦が忙しく二人で出かける時間が取れなかった。
「ごめーん!」
北原が飛び回る子犬のような躍動でこちらに向かって来た。
「いいよ。時間には間に合っているし」
「そかそか! それで今日はどこに行きますかな!」
「そうだな。今日は」
それから俺は考えていた事を次々と実践した。映画館。最近の若者に人気の店。
ゲームセンター。インターネットと周りにいる人達のデート風景から得た情報を元に彼女をエスコートした。
「あー 疲れた!」
「少し休むか」
一息つこうと街のはずれにある公園のベンチに腰掛けた。青空が澄み渡るほど、広がっており、近くでは子供達が走っていた。
「こうして二人で出かけられるのも久しぶりだし、楽しいね!」
「すまないな。あまり出かけられなくて」
「いいよいいよ! ソラシノ君がやっている事って凄く大切だから!」
「理解があって助かる」
彼女には感謝している。この年頃だと交際相手と色々な行きたいだろう。
「ただ、一つだけ。わがまま聞いてもらっていい?」
「ああ」
すると彼女が俺の左肩に頭を寄せて来た。
「このまましばらくいていい?」
「いいよ」
「あはは。やったー」
快諾すると恵那が安堵したような笑顔を浮かべた。数秒後、左肩から寝息が聞こえた。
歩き回った疲労と温かな日差しが眠気を誘ったのだろう。彼女が目覚めるまで、満足がいくまで俺はここにいよう。
辺りが夕焼けに照らされた頃、目が覚めた。俺が。目を開けると彼女の顔が近くにあった。
「あっ! 起きた!」
どうやら彼女の膝を借りていたようだ。彼女のわがままを聞くつもりが逆に彼女を頼ってしまった。
「すまん。寝てしまった」
「いいよ! 私も十分ゆっくりできたし!」
彼女の膝からゆっくりと頭を起こして、夕日に目を向けた。
「それにしても意外と可愛い寝顔だったね」
「どうも」
今まで自分の寝顔なんて気にした事はなかったが、こうして口にされるとなんともむず痒い。そんな俺は揶揄うように茜色の夕日が俺を照らした。
夕飯を終えて、北原を家まで送っていた。昼間とは彼女はどこか静かだった。疲れたというのも理由の一つだろうが、多分別だ。
「ありがとうソラシノ君! じゃあまた、月曜日」
北原が踵を返して、部屋に向かおうとする。その背中にどこか寂しさを覚えた。
「あのさ」
「どうしたの?」
「これは、俺のわがままなんだけどさ」
生唾を飲んで、声を絞り出した。
「もう少しいたい」
「えっ?」
「明日の朝は訓練だけど早めに出れば問題ない。だから、もう少し一緒にいないか?」
俺の言葉を察したのか、彼女の顔色が一気に明るくなった。
「うん! 分かった! でも、ごめん! ちょっと! 待って!」
ドアの向こう側から心配になりそうなくらい、大きな物音がいくつか聞こえた。
「ごめーん!」
北原が飛び回る子犬のような躍動でこちらに向かって来た。
「いいよ。時間には間に合っているし」
「そかそか! それで今日はどこに行きますかな!」
「そうだな。今日は」
それから俺は考えていた事を次々と実践した。映画館。最近の若者に人気の店。
ゲームセンター。インターネットと周りにいる人達のデート風景から得た情報を元に彼女をエスコートした。
「あー 疲れた!」
「少し休むか」
一息つこうと街のはずれにある公園のベンチに腰掛けた。青空が澄み渡るほど、広がっており、近くでは子供達が走っていた。
「こうして二人で出かけられるのも久しぶりだし、楽しいね!」
「すまないな。あまり出かけられなくて」
「いいよいいよ! ソラシノ君がやっている事って凄く大切だから!」
「理解があって助かる」
彼女には感謝している。この年頃だと交際相手と色々な行きたいだろう。
「ただ、一つだけ。わがまま聞いてもらっていい?」
「ああ」
すると彼女が俺の左肩に頭を寄せて来た。
「このまましばらくいていい?」
「いいよ」
「あはは。やったー」
快諾すると恵那が安堵したような笑顔を浮かべた。数秒後、左肩から寝息が聞こえた。
歩き回った疲労と温かな日差しが眠気を誘ったのだろう。彼女が目覚めるまで、満足がいくまで俺はここにいよう。
辺りが夕焼けに照らされた頃、目が覚めた。俺が。目を開けると彼女の顔が近くにあった。
「あっ! 起きた!」
どうやら彼女の膝を借りていたようだ。彼女のわがままを聞くつもりが逆に彼女を頼ってしまった。
「すまん。寝てしまった」
「いいよ! 私も十分ゆっくりできたし!」
彼女の膝からゆっくりと頭を起こして、夕日に目を向けた。
「それにしても意外と可愛い寝顔だったね」
「どうも」
今まで自分の寝顔なんて気にした事はなかったが、こうして口にされるとなんともむず痒い。そんな俺は揶揄うように茜色の夕日が俺を照らした。
夕飯を終えて、北原を家まで送っていた。昼間とは彼女はどこか静かだった。疲れたというのも理由の一つだろうが、多分別だ。
「ありがとうソラシノ君! じゃあまた、月曜日」
北原が踵を返して、部屋に向かおうとする。その背中にどこか寂しさを覚えた。
「あのさ」
「どうしたの?」
「これは、俺のわがままなんだけどさ」
生唾を飲んで、声を絞り出した。
「もう少しいたい」
「えっ?」
「明日の朝は訓練だけど早めに出れば問題ない。だから、もう少し一緒にいないか?」
俺の言葉を察したのか、彼女の顔色が一気に明るくなった。
「うん! 分かった! でも、ごめん! ちょっと! 待って!」
ドアの向こう側から心配になりそうなくらい、大きな物音がいくつか聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
双五、空と地を結ぶ
皐月 翠珠
ファンタジー
忌み子として生まれた双子、仁梧(にこ)と和梧(なこ)。
星を操る妹の覚醒は、封じられた二十五番目の存在"隠星"を呼び覚まし、世界を揺るがす。
すれ違う双子、迫る陰謀、暴かれる真実。
犠牲か共存か───
天と地に裂かれた二人の運命が、封印された星を巡り交錯する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる