「最強とひまわり」

蛙鮫

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「海へ」

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「熱い」
 照りつく夏の暑さで目を覚ました。肌に張り付く汗とシャツ。

 カーテンの隙間から指してくる灼熱の日差し。暑くなることは理解していたが、まさかここまでとは思わなかった。

 あまりの暑さに上半身を起こした。体の水分が足りないせいか、少しふらつきながら窓に指をかける。

 窓を開けた瞬間、夏の暑さと蝉達の大コーラスが聞こえて来た。虫の音の大きさに少し驚きながらも、果てしない青空に目を向けた。

「夏が来たか」
 広がる青い空に夏を感じていると携帯が鳴った。北原だった。

「もしもし」

「海いこ!」

「了解」
 なんの前触れもなしに海に行くことになった。早速、出かけるための準備に取り掛かった。

 待ち合わせの場所で待機していると北原と庭島にやって来た。

「こいつにいきなり誘われた」

「同じく」

「だって夏だよ! 晴れだよ! 海行かないと!」
 北原の周りから太陽ばりの熱気を感じる。彼女のこの海への思いはなんなのだろうか。そんなこんなで俺達は海に向かった。

「海だー!」
 水着姿に着替えた彼女が叫んだ。周りにいる来客達が驚いてこっちを見ていた。

 俺と庭島は周囲に会釈して、彼女を海に放り込んだ。

 海でしばらく遊んだ後、海の家に立ち寄った。

「いらっしゃい。おや」

「先生」
 店主はどこかで見た顔だった。松阪先生だった。はちまちとエプロン姿で焼きそばを作っていたのだ。

「何をしているんですか?」

「ああ、ここの海の家は私の知り合いが取り仕切っていてね。手伝って欲しいと言われたんだよ」

「そうだったんですか」
 俺は注文をすると松阪先生が目にも止まらない速さで調理を始めた。

「学生生活を満喫しているようだね」
 松阪先生が庭島と北原の方に目を向けた。

「おかげさまで」

「噛み締めたまえよ。若人」
 松阪先生が笑みを浮かべて、注文した商品を手渡してくれた。

 濃厚なソースが混ぜ込まれた焼きそばと脳が凍りつくように冷たいかき氷。満足するまで口の中に放り込んだ。

 すると突然、北原が足元から水鉄砲を取り出して、打って来た。顔が濡れたので彼女を海に放り込んだ。

 高校二年の夏は一年同様に海を満喫している。どこまでも広い青の狭間で俺達は夏を満喫していた。

 やがて辺りは茜色に染まって、ビーチには人がいなくなっていた。昼間とは違い、どこか寂しくなった浜辺に三人で座り込んだ。

「海、楽しかったね」

「うん」

「そうだな」
 僅かに沈黙が流れる。いや、沈黙を楽しんでいると言ったほうがいいのか。暖かな夕陽とさざ波の音が心地よい。どうか少しでも長く続いて欲しい。そう願っている自分がいた。


「また行きたいな」
 夕日が沈むまで三人でずっと夕日を眺めていた。
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