44 / 54
「卒業」
しおりを挟む
暖かな風と桜舞う空の下。卒業の日を迎えた。ついにこの日が来たのだ。どこかで聞いた事がある。学生生活はあっという間に終わるものだと。
確かにその通りだ。ましてや俺の場合はこの学校しか行ってないので余計に早く感じた。
先生と他生徒から拍手喝采を浴びながら、卒業証書を受け取っていく。俺も卒業証書を受け取り、席に戻った。
「みんな! ありがとう!」
恵那が涙を流しながら、友人達と熱い抱擁を交わしている。その光景を庭島と俺は近くの階段に座って、見ていた。
「俺達にはまだ不要だな」
「むしろこれからだよ。対策本部の訓練はかなり厳しいと思うけどできそう?」
「おうよ! 根性と筋肉には自信がある」
庭島が自慢げに力こぶを見せてきた。まあ、彼ならなんとかなるだろう。
「でも、学生生活は本当に終わったんだな」
「ああ」
学生生活。色々な事があったけどとても楽しかった。人間社会。友人。恋人。それらを知る事が出来た。彼らとの日々を忘れることはないだろう。
卒業式の後、クラスメイトのみんなでファミレスに行って卒業祝いの打ち上げをした。思い出話や時折、ふっかけられるおふざけに頰が緩んだ。
ああ、もっと一緒にいたい。もっとみんなと色々な事がしたかった。みんなと時間が楽しければ、楽しいほどこんな思いが胸の奥から溢れてきた。ありがとう。みんな。解散の時間まで俺達は楽しい時間を過ごした。
解散した後、俺は庭島と恵那と帰っていた。辺りは暗くなっており、静けさが漂っていた。
「もうこの三人で歩くのも最後か」
「だな」
「まあ、俺達は職場同じだけど」
「うまくいけばね」
「うるせえ」
庭島のバツの悪そうな顔に思わず、笑みを浮かべた。
「私。この三人に会えてよかったよ。本当に。本当に」
彼女の小さな肩が小刻みに揺れている。
俺は恵那の頭を撫でた。俺も庭島も同じだ。この三人で過ごせた三年間は俺の一生に強く刻まれるだろう。
「それじゃあ。今度は対策本部で」
「ああ」
俺は庭島と熱い握手を交わして、別れた。その後、恵那を送るために彼女の家に向かった。泣きつかれているのか、彼女は先ほどより静かだ。
静まり返った帰り道を二人で歩いていく。遠くで聞こえる車の走行音や不意に吹く風の音が聞こえる。数分前の賑やかさとはかけ離れた静寂。
彼女の顔に目を向けると彼女の目元は赤くなっていた。喜びや悲しみ。今日という日で様々な感情を宿した流れた。俺は彼女の手をそっと握ると、彼女も静かに握り返した。
確かにその通りだ。ましてや俺の場合はこの学校しか行ってないので余計に早く感じた。
先生と他生徒から拍手喝采を浴びながら、卒業証書を受け取っていく。俺も卒業証書を受け取り、席に戻った。
「みんな! ありがとう!」
恵那が涙を流しながら、友人達と熱い抱擁を交わしている。その光景を庭島と俺は近くの階段に座って、見ていた。
「俺達にはまだ不要だな」
「むしろこれからだよ。対策本部の訓練はかなり厳しいと思うけどできそう?」
「おうよ! 根性と筋肉には自信がある」
庭島が自慢げに力こぶを見せてきた。まあ、彼ならなんとかなるだろう。
「でも、学生生活は本当に終わったんだな」
「ああ」
学生生活。色々な事があったけどとても楽しかった。人間社会。友人。恋人。それらを知る事が出来た。彼らとの日々を忘れることはないだろう。
卒業式の後、クラスメイトのみんなでファミレスに行って卒業祝いの打ち上げをした。思い出話や時折、ふっかけられるおふざけに頰が緩んだ。
ああ、もっと一緒にいたい。もっとみんなと色々な事がしたかった。みんなと時間が楽しければ、楽しいほどこんな思いが胸の奥から溢れてきた。ありがとう。みんな。解散の時間まで俺達は楽しい時間を過ごした。
解散した後、俺は庭島と恵那と帰っていた。辺りは暗くなっており、静けさが漂っていた。
「もうこの三人で歩くのも最後か」
「だな」
「まあ、俺達は職場同じだけど」
「うまくいけばね」
「うるせえ」
庭島のバツの悪そうな顔に思わず、笑みを浮かべた。
「私。この三人に会えてよかったよ。本当に。本当に」
彼女の小さな肩が小刻みに揺れている。
俺は恵那の頭を撫でた。俺も庭島も同じだ。この三人で過ごせた三年間は俺の一生に強く刻まれるだろう。
「それじゃあ。今度は対策本部で」
「ああ」
俺は庭島と熱い握手を交わして、別れた。その後、恵那を送るために彼女の家に向かった。泣きつかれているのか、彼女は先ほどより静かだ。
静まり返った帰り道を二人で歩いていく。遠くで聞こえる車の走行音や不意に吹く風の音が聞こえる。数分前の賑やかさとはかけ離れた静寂。
彼女の顔に目を向けると彼女の目元は赤くなっていた。喜びや悲しみ。今日という日で様々な感情を宿した流れた。俺は彼女の手をそっと握ると、彼女も静かに握り返した。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
双五、空と地を結ぶ
皐月 翠珠
ファンタジー
忌み子として生まれた双子、仁梧(にこ)と和梧(なこ)。
星を操る妹の覚醒は、封じられた二十五番目の存在"隠星"を呼び覚まし、世界を揺るがす。
すれ違う双子、迫る陰謀、暴かれる真実。
犠牲か共存か───
天と地に裂かれた二人の運命が、封印された星を巡り交錯する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる