「最強とひまわり」

蛙鮫

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「大規模作戦」

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忌獣対策本部の中にある大広間。その中で多くの戦闘員達が椅子に腰掛けていた。
 会議室で着席している無数の戦闘員。室内全般に異様な緊張感が漂っていた。

「これより鳥籠掃討作戦の説明をする」
 天王寺健が眉間に皺を寄せて、強い語気で話し始めた。

「えー 数日前、鳥籠の本部が発見された。調査隊の話によると百体以上の忌獣及び、度々目撃談があった幹部を複数人確認。これらの情報を集めると 迦楼羅かるらがいる可能性が高い」
 その瞬間、周囲が騒がしくなり始めた。迦楼羅。鳥籠の首領であり最強の敵だ。
 これまで多くの戦闘員達がこいつに破れてきた。

「良いか! この作戦には迦楼羅がいる! 心してかかれ!」
 天王寺がそういうと他の戦闘員達が一斉に声を上げた。

 彼らの目は鋭く、まるで獲物を狙う猛獣のような形相だ。

 忌獣や宿主を生み出した全ての元凶。それをようやく討ち取れる瞬間が来たのだ。

「作戦決行は十二月十日! 午後十九時! その日まで各々準備を済ましておくように」
 俺は内心、ため息を零した。作戦の決行日。それは恵那の出産予定日だった。

 自室の中、俺は一人一枚の紙とにらみ合っていた。

 俗にいう遺書というやつだ。大きな作戦の時、隊員達が必ず書くものだ。

 でも俺は今までろくに書いた事がない。書く意味も死んで悲しむ人はいないと思っていた。

 今までこんなにも決断するのに迷ったことはない。  

 どうする。大規模な作戦だ。この作戦の結果で忌獣対策本部の今後の方針も変わっていくだろう。俺は思いの丈を綴った。

 書き終えて、リビングに戻ると恵那が愛おしそうにお腹を撫でていた。

「ソラシノ君。蹴ったよ」 

「ああ、そうか」
 恵那の腹を通して、まだ見ぬ我が子を撫でる。この子に会うためにも俺は生きなければならない。そして、伝えなければならない。

「恵那。聞いてくれ」

「うん」
「近々、大規模な作戦が行われる。そして、決行される日が出産日なんだ。だから立ち会えない」
 今回の主戦力の中には俺の名前も記されていた。それはつまり拒否権は一切行使されないもの。

「そっか。なら別々の場所でそれぞれの戦いってやつだね」

「ああ」

「行って来て。ソラ君。みんなを助けて」
 恵那の穏やかな目。その強い眼差しは俺の中で揺らいでいた決心を確固たるものにするには十分だった。

 彼女だってこれから命をかけるのだ。俺も死ぬわけにはいかない。絶対、生きて帰る。そして、三人で新しい日々を送る。

「必ず帰ってきてね」

「任せろ」
 愛する妻とこれから生まれてくる我が子に誓った。

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