「トカゲになった僕は異世界で英雄を目指す」

蛙鮫

文字の大きさ
27 / 45

「トカゲと魔王軍の襲来」

しおりを挟む

 竜吾は予想外の事態と緊張で心が震えていた。彼の心境に反応するように街の方も騒がしくなっていた。

 おそらく住民達も察したのだろう。わらわらと家の中から顔を出して来た。

「殿下! ご無事ですか!」
 数名の兵士がレイニスのみを案じて、駆け寄って来た。

「ああ、僕は問題ない。それより市民達には家の外に一歩も出ないように伝えてくれ!」

「はっ!」
 兵士達が敬礼をすると、一斉に街の方に向かって行った。これでなんとか住民のみの安全はひとまず確保された。

「アイナ! 竜吾! 王国の門ん前に行こう! レイニス殿下は王宮の方にお戻り下さい」

「分かった。三人とも無事でいてくれ!」

「はい!」
 レイニスに別れを告げると竜吾達は走り始めた。

 竜吾達は急いで、王国の正門前に進んでいると、向かい側から馬に乗った兵士が荒く息を吐きながら。竜吾達の元にやって来た。

「レティール殿からご報告です! 現在、北のほうからものすごい数の魔物の群れが向かっているとのことです!」

「何だと」
 突然、突きつけられたさらなる緊急事態に竜吾は戸惑った。門前につくと夥しい数のゾンビ達が正門を叩いていた。

「キエエエエエ!」
 ゾンビ達が奇声を発しながら、勢いよく門を叩いている。

「アーノルド団長! 勢いが止まりません! 奴ら、地中からいきなり姿を現したんです」

「外壁にも隊をなして、よじ登ろうとしているんです。弓で応戦していますが、いつまで持つか」
 アーノルドの額から汗がにじんでいた。荒れ狂うゾンビの群れを見て、竜吾は数時間前の事を思い出した。悪寒を感じた時である。

 自分がもう少し、早く察して伝えていれば防げたかもしれない。竜吾は静かに己の不甲斐なさを噛み締めた。

 竜吾達は外壁の上に移動して、弓で応戦している兵士達と合流した。

「弓がもうなくなりそうです! 武器の補給を遠征に頼んでいますが、持ちそうにありません!」

「まるで最初仕組まれていたような感覚ですね」

「もしかして、目的は魔泉かもしれないな。そして、このゾンビは我々を足止めするための妨害工作というわけだ」

『今まで攻め込んで来なかったのは魔物達をかき集めるためか』
 竜吾は内臓が冷えるような異様な緊張感に襲われた。まるでこれから始めまるであろう血戦を予期しているような気がした。

「とりあえず、我々は王都のゾンビどもを片付けましょう! 竜吾! 力を貸して!」

 アイナの一言で竜吾は我に返った。落ち込んでばかりではいられない。

 竜吾はアイナとアーノルドに触れて、マナを流し込んだ。

「おおっ! みるみるうちに力が湧いて来たぞ! さすがだな!」

「行きますよ!」
 アイナがアーノルドとともに外壁からゾンビ達がはびこる陸地に飛びこんだ。

「はあ!」

「ギャアア!」
 彼女が剣を振った瞬間、光の斬撃が辺りのゾンビを蹴散らしていく。飛びかかってくる無数のゾンビをもろともしないその圧倒的な力に竜吾は感心した。

「騎士団長としてここをゾンビに通らせるわけにはいかん!」
 アーノルドが外壁に張り付いていたゾンビ達を瞬く間に切り刻んだ。元々、腕の立つ騎士が竜吾の強化でさらに動きが早くなっている。

 竜吾は驚いた。二人でゾンビの群れを圧倒しているのだ。
 
「俺達も加勢するぞ!」
 正門近くのゾンビが少なくなったおかげで他の兵士たちも参加しやすくなった。

「アイナ! 竜吾! 二人は魔泉のある森に行ってくれ!」

「でっ、でも強化されているといえ、かなり数です」

「ここにいるのは騎士団長とそのしごきで日頃から鍛えられている精鋭達だ。安心してくれ!」
 アーノルドの信念のこもったような視線が竜吾の心を揺れ動かした。

『行こう。アイナ。彼らなら大丈夫だ!』

「分かった! 騎士団の皆様、どうかご武運を!」
 アイナが竜吾を連れて、レティールとエーナがいる森の方に向かった。



 竜吾とアイナは凄まじい速度で森へと向かっていた。森の方は今ごろ、凄惨な光景で満ちているであろう。

『もうすぐ、森に着くよ』

「うん!」
 その瞬間、凄まじい爆発音が耳に入った。音のする方に首を向けると黒煙が空に昇っていた。焦燥感に駆られたのか、アイナの足が先ほどより早くなった。


 現場にたどり着くとそこはまさに戦場だった。魔物と騎士団が血みどろの激闘を繰り広げていたのだ。

 その中で見覚えのある人物を二人見つけた。

「レティールさん! エーナさん!」

「おお、二人とも来てくれたのか」

「アイナさん。竜吾。街の方にもやはり奴らの手が」

『足止めをくらったよ。それで彼らが魔王の側近かな』
 竜吾は視線を反らすとそこには二つの人影があった。一人は端正な顔立ちと色白の肌が特徴の吸血鬼。ノワールだ。

 その横にいるのはフード姿の人物だ。竜吾は直感的に死人使いのラゼルだと気づいた。それとともに恐ろしい事実に気づいた。

「あの人。街で見た人だ」
 アイナがそう言うとフードの中から青の髪が見えた。その人物はフードで目元を隠しながら、不気味な笑みを浮かべている。

「おや、君達は勇者の子孫と聖竜の転生体と言われているトカゲ君だね。それによく見るとエルフもいるじゃないか! エルフは好きだよ。肉をあまり食べないから血に臭みがないんだよね」
 ノワールが竜吾達に陽気な笑みを向けた。一見、親しみやすい優男にも見えたが、竜吾は感じ取っていた。この吸血鬼から漂う吐き気を催すような血の匂いを。

「ここに足を踏み入れた事を後悔させてあげる」
 アイナが剣を構えて、戦闘の意思を示した。相手は魔王の幹部。おそらく今まで戦って来た魔物とは比べ物にならないほど強い。

「この蛮族どもが」
 レティールが眉間に皺を寄せていた。理由は周囲を見れば、一目でわかった。のどかな森の中に野蛮で凶悪な魔王のしもべ達が侵入して来たからである。

「この吸血鬼は私とエーナで相手をします。あなた達はラゼルをお願いします」

「了解!」
 竜吾とアイナはレティール、エーナと別れて一人、不気味に佇む死人使いの元に走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。 仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて―― 「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」 「片手で抜けますけど? こんな感じで」 「200キロはありそうな大根を片手で……?」 「小麦の方も収穫しますね。えい」 「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」 「手刀で真空波を起こしただけですけど?」 その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。 日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。 「これは投擲用大根だ」 「「「投擲用大根???」」」

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...