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目覚める「欠けた魔力」
しおりを挟む「主よ、その身に宿る“無”……それは、空(くう)にして全(ぜん)だ」
黒竜・カルト=ゼルドはそう言った。
「え、意味がわかんないんだけど……私、無属性で何もできない“ハズレ”だったんじゃ――」
「違う。そなたは“すべての属性を拒絶する者”だ」
“無”とは、欠けたものではない。
“全てに染まらぬ”という、究極の純粋。
「そして、そなたの魂には鍵がある。かつて世界を滅ぼしかけた“原初の魔法”――その封印が、転生によって揺らぎ始めている」
「ま、まって、私そんなやばいもん宿してるの……!?」
「だが安心せよ。我が監視下で制御することが可能だ。そなたが望むならば、力を開放してみせよう」
そのとき、柚葉の視界に淡い蒼い光が走った。 手のひらから、まるで星の粒のような“なにか”がふわりと浮かぶ。
(あれ……これ、私が……?)
大地が震え、空気が張りつめる。
黒竜が神妙な顔で唸る。
「……やはり、異常だ。“秩序の神”が恐れ封じた力……!」
柚葉の目に映ったのは、かすかに輝く《輪》。
それはすべての魔法属性を内包しつつ、同時に拒絶する「ゼロの魔法陣」。
全魔法適応・変質・消去・複製・逆転――
「ちょっとチートすぎない……!?」
しかし、同時にこの力は世界の均衡を壊す“危険”でもあった。 だからこそ、黒竜は言う。
「この力をどう使うか、決めるのはおまえだ。復讐か、救済か。あるいは――」
柚葉は静かに拳を握る。
「やるなら、全部守る。それが一番カッコいいでしょ?」
今この瞬間、“ただの追放姫”は終わりを告げた。
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