転生姫は竜を飼う

みりん

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父へ

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 王都リヴェルタ。



 その中心にそびえる白き王城の上空に、巨大な影が現れた。



 ――黒竜《カルト=ゼルド》。



 その背には、かつて“無能王女”と呼ばれた少女――柚葉の姿があった。



くたびれたメイド服をきた女性が空をみて呟いた....

 「……おかえりなさいませ、“姫様”」




 広場に集められた兵士たちが、恐怖と混乱の中で剣を構える。




 「撃てぇぇぇ!! 竜を撃ち落とせッ!!」



 無数の魔法弾と矢が、空に放たれる。



 だが――

 「《領界無効:ゼロスペース》」




 柚葉が呟くと、空間ごと“魔法が届かない領域”に変わった。
 矢も魔法も、空中でパラパラと崩れ落ちる。


 「まるで……神の領域だ……」


 兵士たちが立ちすくむ中、柚葉はゆっくりと降り立つ。



 そこに現れたのは、国王。

 彼女の実の“父”――レオン・リヴェルテ王。



 「……貴様、まだ生きていたか。黒き災いを連れて戻るとは……やはりお前は呪われた娘だったのだな」



 「そっか。じゃあ――証明してみせるよ。あんたたちが捨てた“私”が、何を手に入れたのか」



 柚葉が指を鳴らすと、王城中に紋章の光が走る。


 「《王権拒絶式:断罪回廊》」



 王族しか入れないはずの玉座の間の封印が、強制解除された。



 「なっ……! 王族以外には発動しないはずの……!?」


 「ううん。私はもう、ただの“姫”じゃない。世界に一つしかない“ゼロの鍵”を持つ存在なんだよ」


 その瞬間、玉座の間が闇に包まれ、次いで蒼い輝きが世界を貫いた。


 柚葉が一歩踏み出すたび、空間が波打つ。




 そして――




 「《断罪の詩(うた)》:王に選ばれなかった者より、選ばれなかった王へ」



 詠唱すら必要ない、概念魔法の発動。


 王の冠が、砕けた。
 その瞬間、国王は跪き、動けなくなった。




 「これが、“私を捨てた代償”だよ。……じゃあ、バイバイ、“お父様”」



 柚葉は黒竜に乗り、何事もなかったように王城を後にする。



 その背に、誰も手出しできる者はいなかった。


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