転生姫は竜を飼う

みりん

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灰の旗、初陣

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 夜明け前。

 薄明かりに照らされた砦の外に、無数の影が迫る。




 「確認した限り、武装した盗賊が120名。狙いは――砦の地下に眠る“精霊核”だと思われます」





 ジェイドが報告する声は、いつも通り冷静だった。




 「ふーん、砦が宝の地図の上にあるってバレちゃったか」

 リーネがポーションを撫でながら笑う。




 「ここ、やっと“居場所”になったのに。壊されたらムカつくなぁ」



 ミュリナは微笑みながら唄を口ずさみはじめる。



 柚葉は皆を見回して、言う。




 「よし、作戦はこう――
  “誰も死なせない”、でも“誰にも砦は渡さない”。それでいこう」




---





戦闘開始――!






 盗賊団の斥候が森に踏み込んだ瞬間、





 ドカァァン!!




 ――森ごと爆発。


 「ようこそ、私の実験場へ!」
 リーネが満面の笑みで叫ぶ。




 木に仕込まれたマナ地雷、煙幕、閃光弾。

 盗賊たちは進軍すらままならない。




 そこに現れたのは――




 「突破するぞッ!!」
 騎士団式の正面突撃陣形で走る盗賊隊長。




 だが、その前にジェイドが一人、立ちはだかった。



 「――通さない」



 次の瞬間、盾と剣が十字に閃き、5人を一瞬で吹き飛ばす。



 「馬鹿な! なんで一人で――」
 「俺は、“主”の盾だからな」





---

砦上空



 空には旋律が舞っていた。

 ミュリナの呪歌――“風を裂く調べ”。




 「♪ 絡めるは夢、ほどけるは影……」




 彼女の歌声に包まれた敵たちは、幻影と混乱に陥る。





 「な、なにが本物だ……!」
 「やめろ! この音、頭に入ってくる!」





 幻覚の中に、静かに浮かび上がるのは――柚葉。




 「さあ、最後は……私の番だね」



 柚葉が掌を上げると、空に光の輪が展開される。




 「《領界展開:ゼロ・スペース》」





 光と闇、風と雷、すべての魔法を“無”に還す領域。

 そこに盗賊たちは一歩も踏み出せなかった。




 「選んでいいよ。“ここから出ていく”か、“帰る力も失う”か」




 ――数分後、盗賊団は全員、戦意喪失して降伏した。





---




戦いのあと





 「……あれが“灰の旗”? たった5人で、あの戦力を……」




 噂は瞬く間に周囲の街にも広がった。

 そして柚葉は、砦の石壁に一文を刻んだ。






 “居場所のない者よ、ここに来い。”



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