深夜のコンビニで私の世界が変わった話

よつ丸トナカイ

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3 大役を任されて。そして悲しみ

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ここで世界が滅びたら、物語は面白くない。
申し訳ないが設定を変えさせてもらって、時間を少し戻す。


「そうです。そしてさらに大切な事なのですが、世界で失われた人々の数が80億人なのです。その数字の半分の数字40億、つまり体重が40kgで年齢がその半分の20歳でなければならないのです。これが絶対条件です!」

私は勇者が提示した条件を聞いて驚いた。
「そんな、ささいな条件が世界救うのですか!!」
「この世界は多種多様な繋がりを持っており複雑に絡み合っている。だから『ささいな条件』と思える事でも重要なカギとなるのだ」

その勇者の言葉は、やっぱり理解できない。でも歴代最強の勇者様が言っているのだから。それを信じてみよう。



勇者は掛け声を上げた。
「それでは、今から二人で協力して、大魔王を倒し、世界を取り戻すぞ! おーー!」

私も鋭い眼差しとやる気で応えた。
「おーー!です!」



私は勇者の手を握り静かに勇者を見つめた。
勇者は魔術発動の準備を整え詠唱を唱えた。

「ダダダ、大魔王! 大魔王は大っ嫌い♪ 
いつも私の前に現れて、悪戯ばかりするー♪
『もう、あなたの事見たくもないんだからね、あっち行って!』
ヤー!」

私は勇者の手伝をしたことに後悔した。
これから色んな勇者が登場する映画やアニメを見ることになるだろう。
だが、それらの素晴らしい作品は、このリアルな勇者像に私の中で置き換わってしまう。

勇者が、歌なのか詠唱なのか不明な物を唱え終えた瞬間、二人を光が包み込んだ。
その光は強くなり一本の光の柱となり上空へと消えていった。



勇者は、膝から崩れ落ち荒い呼吸で話した。
「せ、成功だ。これで、大魔王は消滅した。確実に気配はなくなった」

私は意味が分からない。だけど、とりあえず無言で拍手してあげた。



勇者は足を震わせながら立ち上がり、紙袋から魔道具を取り出した。
それを見て私は言葉を失った。

勇者が手に持っているのは「ケミカルライト」である。
そう、アイドルコンサートとかで観客が持っている光るあの棒「ケミカルライト」である。



勇者は説明した。
「私が人類救済の魔術を詠唱します。そしてタイミングを教えますから、あなたが詠唱してください。」

私はうなずいた。


「詠唱内容は『もっと、もっと、ヒューヒューヒュー』です」



(これなんかの詐欺?私は何をやらされているの?)
そんな気持ちを抑えながら、力強くうなずいた。


勇者はさらに説明を続けた。
「一度の魔術発動により、2億人が復活します。つまり40回の魔術発動が必要となります」

その言葉を聞いて私は気が遠くなった。
そんな変な事を20回もしなければいけないのかー。



勇者は心を静め、人類救済魔術発動するための詠唱を始めた。
あと、変な踊り付きで。

「みんなは、どこへ、行ったかな♪
私ひとりじゃ、さびしいの♪
あそこかな? ここかな? あっちかな?
ほら、ほーら、みーつけた♪」
『みんな、集まれー!もっともっと私の周りに集まって!!!!』 」

そして勇者は合図した。
「今です!」

私は、変な詠唱を聞いて気絶しそうになったが正気に戻り、詠唱を唱えた。
「『もっと、もっと、ヒューヒューヒュー』」

ケミカルライトを胸の前で力いっぱい振った。意外と疲れる。

「あっ、もう少し上、顔のあたりで振ってください。あなたは胸が大きいから、その方が良いでしょう」


セクハラ的なダメ出しをもらった。
顔の前でケミカルライトを振り続けていたら、急にその光が強くなり周りを強く照らし始めた。



その光は二人を包み、街を包み、日本を包み、最終的には地球を丸ごと包んでいった。



勇者は、再度膝から崩れ落ちた。
そして荒く呼吸をしながら私を見つめ微笑んだ。
「う、上手くできましたね。これで、2億人の生命が復活しました。」

そう言うと、勇者は完全に床に倒れ込んでしまった。
私は彼を抱きかかえ涙を流しながら叫んだ。
「勇者様、ありがとう! この地球の人々を救ってくださって!」


勇者は抱きかかえられながら笑顔で見つめる。そして弱々しく言葉を発した。
「まだ、終わっていません。これからが本番です。頑張りましょう。
この世界の人々の命、この勇者の命に代えてでも救って見せる!」

勇者は歯を食いしばり、立ち上がった。そして詠唱を続けた。
その勇者の姿に応じるかのように、涙を流し女性店員も詠唱を唱えた。


「・・・私の周りに集まって!!!!」
『もっと、もっと、ヒュー・・・・』
ピカー!!




最後の40回目の魔術発動が終った時、二人は力尽き、天井を見あげ、涙を流していた。

「勇者様、やりましたね。世界を救いました。私も頑張りましたよ!」
「あなた・・・は、とても・・・頑張りまし・・・た。ありがと・・・。」

私は涙が止まらなかった。大魔王を倒し、世界の人々を復活させたこと。
そして、この大役をやり遂げた事。
彼女の涙は悲しみでない。嬉しさ、喜び。そして未来への希望の雫なのである。


「勇者様は、これから自分の世界へ戻られるのですか」
私が尋ねるが勇者の返事はない。

「勇者様?」

私は勇者を見ると。…冷たくなっていた。



「勇者様―――――――!!」
大声で叫び、大粒の涙をこぼした。この涙は先程とは違い悲しみの涙だ。

彼女の叫びは街の騒音にかき消され、涙は降ってきた雨と交じり合った。
そう、世界中が勇者の死を悲しんでいるかの様に・・・。




深夜のコンビニ、全く客がいなくて暇だ。
だからワンオペでもいいのに二人体制。やる事が更にない。
今のご時世、深夜のコンビニ強盗対策が必要だから、しょうがないけど。

コンビニの店長が横にいる女性店員に熱く語っている。


「ねえ、今話したコンビニを舞台にした異世界小説。
僕が考えて小説コンテストに応募したんだ。
結構自信作だけど受賞するよね? 
ひょっとして僕、『先生』って呼ばれる?
サインの練習もしないと!」

未来を見つめた店長の目は輝いていた。

女性の店員は自らの絶壁な胸を押さえながら店長を睨みつけていた。



そして、ゆっくりと口を開いた。
「つまらない。才能無し。そして変態!」


店長は泣いていた。

- おわり -
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