聖剣転生!~短小だからって、ナメないでもらってイイですか?

トキノトキオ

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第一章 聖剣に転生?

ハニートラップ?

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 北の辺境ノーザンランドと言えども、領主の館はちょっとした城のようだった。ノイエのカラスからの報告によれば、館の外れにグレゴリオの屋敷もあるらしい。
 
「さてと……どうやって侵入するかだな……あのクソ魔法少女、本当に使えないぜ。部屋の中にすっと送り届けるくらいしやがれってんだ。だいたいが幼女のくせにエラソーなんだよ。ちっぱいのくせによ!」

 ――ミャァアァア!

「な、なんだ? 猫かよ、ひっかくな!」

 ――ミャァアア! ミャァアアア!!

「黒猫か……よしタンゴと名付けよう。タンゴ! オマエうるせーからあっち行ってろ」
「ワシじゃ、ワシ」
「え? ワシさん?」
「ノイエじゃ」
「あ、ああ~そういう……」
「ちっぱいで悪かったのぉ~短小のくせに」
「そ、そんなことは~言ってないぞ~それはそうと、カラスの次は黒猫かよ」
「うむ。これなら目立たんじゃろ?」
「うーん……それは……どうかなあ~。って、まーいいや、で? どーするんだ? どーやって忍び込むつもりだよ」
「ふむ……そうじゃなあ~正面から行くしかないかのう」
「正面から?」
「そうじゃ、変装してな。ホレ!」

 黒猫のタンゴ、あらためノイエがなにやらムニャムニャ唱えると、俺の衣装が変わった。髪型も……
 鏡に映してよくよく見てみれば。髪はなにやらピンクっぽいロン毛のカツラをつけていて、リボンで結ばれている。そして口紅に頬紅、マスカラにつけまつげをしている……
 
「って女装じゃねーかよ! なんだこれは!」
「ふむ。聞いたところ、グレゴリオは相当な女好きらしい」
「い、いや……それがなにか?」
「オヌシ、やはりバカじゃのう~。グレゴリオのところに派遣された遊女ということにすれば……すんなりと入れるじゃろうて」
「ああ、そうだろうな。そうだろうよ。そうだろうともよ! そんなこたあ薄々気が付いていたんだよ! 受け入れたくないから聞いたんだろうがよ! 嫌だ、嫌だよ~、そ、それだけは嫌なんだよ~」
「だったらオヌシが衛兵を斬りはらうか? できるのか?」
「そ、それは……俺TUEEE! だから……できるんじゃ?」
「スカタンが! それはリルルと合流してから、聖約してからって言ったじゃろーが」
「あ~~~~言ってたね、言ってましたねえ~あははは」
「だから、そのカッコウで行け! 悩殺してくるのじゃ!」
「の、悩殺ってなんだよ……」

 チキショウ、痴漢に間違われて死んで、聖剣に転生したのに、女装で悩殺とか……どうなってやがるんだよ。

「ヒュ~ウゥ~」

 館の門の両脇には門兵が居た。門兵は俺(女装した俺)を見つけると、上から下まで、そして下から上まで、なめまわすように見回したあと口笛を吹いた。

「どこへ行くのかな? お嬢さっん」
「ひゃっ」

 ち、チキショウ、門兵のヤツ、俺のケツを思いきり掴んできやがった。そ、それは……セクハラだろ! ハラスメントだろ!

「あ、あの……その……グレゴリオさまに呼ばれまして……」
「ああ~グレゴリオかあ~あいつ聖剣のくせによ~ったく」
「通ってよろしいでしょうか?」
「あ? ああ~まあ、今度俺とも遊んでくれよな!」

 ――パシッ
 
 門兵はもう一度俺のケツを撫でるように叩くと門を開けた。
 
「しかし……女子ってのは……ツライな。男にゃわからん恐怖だぜ」

 俺は逃げるように屋敷に向かって走り出した。

「おーい! そっちじゃねーぞ! 左だ、左の奥だ! グレゴリオがいるのはよ」

 そして男と言うのは情けない。こんな得体のしれない侵入者をあっさり通した挙句、道案内までしてしまうのだから。

「はぁ……はぁ……はぁ……ノイエ! ノイエ! いるんだろ? も~~~お! しねーからな! 女装なんて!」
「ミャァア~」
「みゃ~じゃねーんだよ。なに猫なで声だしてんだよ! チョーシがいいんだよ!」
「まあまあ、そう言うでない。こうして潜入できたではないか。さ、急ぐぞ」
「はいはい……っていうかさ。どうやってリルルを助けるんだよ。きっと縛られてるよな? 鎖とか、荒縄とか、高速バンドとかで!」
「ふむ。そんな時にはオヌシの色仕掛しかあるまい」

 俺はまた背筋に寒いものを感じたものの、先を急いだ。それにしても女の衣装は股がスース―して走りにくい。

「ん? なんだキサマは」
「あっは~ん」
「怪しい奴め、どこへ行く!」
「うっふ~ん」
「なに? グレゴリオさまだと?」
「おっほ~ん」

 屋敷はそれはまあ大きくてどこへ行くのか分からない、衛兵に見つかるたびに俺は……俺は……

「ずいぶんとコツをつかんできたよーじゃな。オヌシ、そっちの気があるのじゃないか?」
「う、うっせー、うっせー! うっせー! と、とにかくまずはリルルの居所を探さないとだろ!」

 と、言うことで二手に分かれて探すことにした。まあ、わざわざ猫連れで探すこともないだろう。

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