転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

パッチーナ攻防戦 25

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 さて、茨のこの魔法の解析・解除を始めるかな…



「た、大変です!保護した子が1人消えました!目撃情報によると、救出隊の片耳のない獣人が連れ去ったとのことです!」



 今度は何……片耳のない獣人?もうしかいないじゃん…そう確信し、責任者である彼を見る。…うん。見事な青褪めた表情だ。


「すぐさま回収してきます!」


 シャーグはデュースに土下座する勢いだ。


「シャーグ…2人で探すよ。…青薔薇の他のメンバーは…ここで待機。…青薔薇は…信用できる…ここを任せられる。」


 デュースは上空を見上げ、解析を始める。人探し・荊の回避・魔法解除を同時並行しながら行うつもりだ。これならキャスと代わってもらった方が仕事量は少なかったはずだ。ここに残った意味がない…まぁ、こうなる運命だったと割り切るしかない。


「アイツはもう処分します。」


 シャーグは覚悟を決めたとばかりに呟く。


「それは…ダメ。」


「これはアイツの分隊長としての決定です。」


「今は…救出隊の一員。…救出隊…隊長は?」


「それは貴方ですが…」


「これが片付いて…彼が居なかったら…悲しむ子がいる。…処分するなら…あの子ティアが気づかないよう…離れた地で…密かに…して。」


 別に処分するなとは言わない。それは青薔薇の勝手だ。だけど…あの子ティアの涙は見たくないから。


「…行くよ」


「承知致しました。ジラーフ!」


「何でありましょうか!」


 長身の男がシャーグの声に反応する。


「ここの指揮はお前に任せる。いいな?」


「了解であります!」


 

 デュースとシャーグは、教会を跡にするのであった。








♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
~ウォン視点~


「うえーん!怖いヨォ~」


 ウォンは保護した子供を抱え込んだまま走り続ける。上空から降りそそぐ荊を躱しながら無言で走る。そして、避難所からも離れた人気のない場所へとやってきた。


「化けの皮とっとと剥げよ。」


「うえーん。何のことか分からないヨォ~」



 ウォンは立ち止まり、抱えていた子供を放り投げた。放置されていた防衛隊が倒したのだろうカッターマンティスの鋭い鎌に突き刺さるようにして投げた。


「きゃー!……ぐさっ!血がドバドバ~痛いヨォ~ひどいヨォ~」


「………」



 ウォンは冷めた眼差しで鎌に突き刺さったはずの子供を見つめていた。それに気づいた子供は自力で鎌を体から抜き、ウォンに向き合う。


「ひどくなぁい?こいつ本当に死んでもいいって感じで投げやがったヨォ~」


「ハッ!これでただの一般人だったなら、これ以上ないやらかしだろうな。だがな、お前は普通の子供じゃないだろ。」


「んー。何か確信させるようなことしたかなぁ。記憶にないヨォ~」


 不気味な少女だとウォンは思う。ティアと同じくらいの年齢でありながら、こうも違うとは。



「…お前、笑ってただろ。」


「笑ってた?」


「救出され保護された者たちが浮かべた安堵の笑みとは違う。嫌な笑みだ。それだけじゃない。を懐に入れてやがる?それを使おうと人質だった奴らに近づこうとずっと機会を窺っていただろうが。」


「よく見ていたね。お前が私を監視し、常に行動を制御していたせいで一定の距離を取らされた。もう台無しだヨォ~。」


 ウォンは救出対象でこの少女を担当すると名乗り上げ、脱出時にはこの少女を背負い1番後方側に位置していた。不審な行為を行わせないため、腕を首に回すようにさせ、その首に回った両手首を掴み、首を絞められないように警戒しながら行動した。


「本当に油断したヨォ~。救出隊だっけ?リーダー格だけ注意しておけばいいだろうってたかを括った私の落ち度だヨォ~。」


「ハッ!あの魔法師長やシャーグ分隊長にビビってやがったもんな?その後は分かれた救出隊や攻撃隊とも合流して、戦力過多で余計に身動き出来なくなっただろうが。」


「そうなんだヨォ~。地上に出る前に行動を起こすべきだったって後悔したヨォ~。優柔不断が仇となるとは…これもぜーんぶお前のせいだヨォ?救出隊で馬鹿やって孤立していたお前なら扱いやすいって勘違いさせられたんだヨォ。雑魚かと思えば勘はいいし、戦闘に特化してる分、私と相性悪すぎて厄介な相手とか…詐欺だヨォ~。」


 メソメソと泣き真似をする少女に舌打ちするウォン。


「あーあ。どうしヨォー。お前の身体はが発動できるよう下準備されていないのに。」



 少女の懐から出てきたのは黒い魔石。いや、漆黒の魔石だ。少女はそれを宝物のように見つめる。


「美しいでしょう?見惚れちゃうよね~。これに適応させるために徐々に身体を作り変えて慣らしていたのに…悔しいヨォ~。まぁ、ヤヤの実験が本命だし、これはまた今度の機会に楽しみに取っておくしかないヨォ~。」


 ウォンは唸ると目の前の少女に問答無用で殺しに飛びかかった。少女はニヤリと笑うとその場にしゃがみこみ…


「きゃぁああーー!!!たすけてぇーーー」


 叫んだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 今月もなんとか投稿間に合った(-。-;
お待たせしました。今回はいつもより長めに書けたかな。

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感想 169

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みんなの感想(169件)

aya
2024.02.07 aya

待ってました!
いつも応援してます!
これからはどれくらいのペースで投稿する予定ですか?
先が気になります‼︎

2024.02.13 ひつ

aya様
 毎度、お待たせして申し訳ありません。楽しみにお待ちいただいき感謝です(*≧∀≦*)基本的に5の倍数のある日で1話完成でき次第更新したいと考えております。亀さんペースでの更新にはなりますが今後も宜しくお願いします(≧∀≦)

解除
ひつじ
2024.01.30 ひつじ

良かった(*≧∀≦)人(≧∀≦*)♪
今月中に更新してくれて…(*´-`)
忘れられたのかと(((UωU` *)

2024.01.31 ひつ

ひつじ様

毎度毎度、お待たせして申し訳ない(>人<;)
次回は来週の頭あたりに更新予定です!お楽しみに(*゚∀゚*)

解除
ひつじ
2023.09.20 ひつじ

おかえりなさい!
更新待ってました( ^ω^ )

2023.09.26 ひつ

ひつじ様

 お待たせしました(≧∀≦)久しぶりの更新にあたり、展開を思い出すの時間がかかってしまいました(>人<;)今月はもう1話更新できそうですのでお楽しみに☆

解除

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