君と桜を見たあの日から

緒夢 來素

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第一章 彼女との出会い

撮影会。

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  俺と瀬良さんは、先輩に送るメッセージアルバムを作成する上で、四季の風物詩の写真を集める事にした。

  入部してから今までの写真を順番に流して確認し、二人の撮った写真の中で良作をピックアップしていく。

「水原くん、春の写真はどんなの撮ったの?うちも見せるから、ちょっと見せてよ」土曜日の朝から俺達は、カメラを取りに学校に来た。部室に入ると中は静まり返っていて、開いた窓のカーテンが風で揺れていた。来ていたのは俺と瀬良さんの二人だけである。

俺達の通う鷺ノ宮中学は、部活動強制参加という校則があり、運動部の多い学校が故に限られた文芸部の中から選択する事は容易だった。

あれは俺が中学一年の春の事だった。部活見学で校舎内を回っていた時、特に入りたい部活もなかった俺は、適当に歩いて体育館の横を通り過ぎた。すると視界に瀬良さんの姿が入り少し俺は足を止めた。

しばらく暇だったので、なんとなく外から眺めていると、瀬良さんと目が合った。

「水原くん!もう部活決めた?まだやったら、うちと見学でも行こうよ!」

体育館から飛び出し、勢いよく飛び付いて来るなり俺を捕まえた。

これじゃただのストーカーである。別に瀬良さんを追っていた訳では無いが、思春期という事もあり、異性と二人で居る光景を他人に見られるのが恥ずかしいと思い、静かに手を振り解いた。

「瀬良さんは、バスケ部入るの?」

俺は恥ずかしさを誤魔化す為、咄嗟に彼女に質問を投げかける。すると彼女は何も言わず、どこか俺の背中を突き出すようにして押して行った。

「水原くんは何処か入りたい部活の候補とかあったりするの?」俺は運動部以外ならなんでも良かった。けど、彼女はせっかく運動神経が良いのに俺についてくるのは、すごく勿体ない事だと思った。

「瀬良さんは、運動部で探したら良いよ。俺は文化部に絞ってるからさ」男としてダサさの極みである。女子に運動が負けて、プライドでもあるのか彼女が運動が出来ることに嫉みを抱いていた。ふと彼女の顔を見ると、彼女は笑っていた。何か変な事を言ったのかと思い、少し疑問に感じたが、しばらくして彼女は話し始めた。

「うち、運動は確かに好きだけど、水原くんの居ない部活は楽しくないよ。だから、うちは君が居ない運動部に興味はないかな」変わった人である。俺なんかと連んで何が楽しいのか、俺には理解できなかった。

校舎の中に入り、"新入部員歓迎"と書かれた紙を三人の先輩が掲げていた。両サイドに二人、一人は綺麗な写真を四枚大きな紙一枚に敷き詰めるようにして貼られていた。川から飛び出す瞬間の鳥、虹や夕日、一面に咲くチューリップやコスモス、向日葵が咲く花畑は俺の目を釘付けにし、俺は柄にもなく感動してしまった。

それから数日が経ち、クラブ見学期間が過ぎて正式に写真分入部することとなった。そして、当然といって良いのか彼女も何故か入部届を出したのか、新入部員集会に参加していた。

俺達が初めてカメラを持って写真を撮ったのは、学校の裏にある公園で、まだ咲いていた桜の木があった。調べると紅華と呼ばれる桜の一種で、束になった桜で応援する時に使う"ポンポン"みたいで少し可愛かったのを今でも覚えていた。そして、ソメイヨシノとはまた別の美しさが感じられた。

  「俺は四月下旬か五月の上旬辺りに撮った"紅華"にしようと思う!瀬良さんは?」彼女はというと、顔を横に振り少し残念そうにカメラを見ていた。恐らく春は特に写真は撮っていなかったのだろう。その代わりと言う訳ではなかったが、夏の写真に自信があったらしく

「水原くん!コレ見て!夏の写真はこれで決定でいいよね!これにしよ!いいよね!」さっきまでの下がっていたテンションから、打って変わって彼女から笑顔が戻り、俺にカメラを手渡しては、胸を張ってみせた。

 そう、 夏といえば花火や海といった物が頭に浮かぶ。そして地元の花火大会が今年で無くなるらしく、去年撮った花火大会の写真だった。

「うちが撮った花火綺麗やと思わん?今年が最後や思うと、少し寂しくなるなぁ」

そして次々と四季の写真がピックアップされ、スムーズに話は進み、秋は紅葉に、冬は雪景色に決定した。

  「また、雪合戦しようね?」彼女は窓から外の景色を眺めながら、落ち着いたトーンでそういった。
 俺は、彼女が少し元気がなさげに見えると、どうも調子が狂うようでむず痒くなった。それは、人間だし毎日元気で居ろと言われても無理がある。それでも気になって仕方がなかった。彼女に元気になってもらう為、ある場所を思い出した。

「柚葉、良かったらこの後、駄菓子屋行かないか?」俺は席を立ち、カメラを収納し荷物をまとめ彼女を引っ張るようにして部室を後にした。

「水原くん、急にどうしたの?駄菓子屋は良いけど、そんなに急いで何かあったの?」彼女の目から、確かに涙が流ていた。

校門を出て駄菓子屋の前までやって来た。

「おばあちゃん、来たよ!」駄菓子屋の店員は、実は俺の祖母だったりする。母方の祖母で、俺は暇があったら遊びに行っていた。

「よく来たね、良かったらお嬢ちゃんも中で食べて行くかい?」普段は入れない駄菓子屋の家の中を、親戚である俺は入ることが出来る。まあ当然と言えば当然なのだが、俺達は祖母に甘えて何個か駄菓子を買って、中に入って食べに行った。
俺は冗談混じりに彼女に

「瀬良さん、ビックリした?ちょっとVIP感あって良いでしょ?」彼女は少し驚いた表情で目を見開くなり

「うち駄菓子屋の中入ったん初めてやわ、なんやありがと!」誘ってよかったと改めて思った。

しばらくして、彼女を家まで送った。
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