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「……ちょっと、ジーク様。このドレス、真珠が三万個くらい縫い付けられているのではないかしら? 重すぎて、私の華奢な肩が悲鳴を上げていますわよ」
王都の大聖堂。ステンドグラスから差し込む七色の光が、真っ白なウェディングドレスに身を包んだ私を照らしていました。
本来なら、一生に一度の晴れ舞台に涙し、感動に震える場面です。
ですが、私の今の関心事は「この後の披露宴という名の立ち仕事に、私のふくらはぎが耐えられるか」という一点に尽きていました。
「我慢してください、リリル。この日のために、王都で一番の職人たちが寝る間を惜しんで作り上げた逸品です。……あなたは今、世界で一番……いいえ、私の人生で最高に美しいですよ」
隣に立つジーク様は、まばゆいばかりの白銀の礼装を纏い、いつにも増して彫刻のような美形っぷりを披露していました。
「ふ、ふん。当たり前ですわ。私の美しさは、日頃の徹底した睡眠とジーク様が運んでくる高カロリーな食事の賜物ですもの。……でもジーク様、誓いの言葉は三文字以内で終わらせてちょうだい。立ちっぱなしは美容の大敵ですわよ」
「善処しましょう」
ジーク様は苦笑いしながら、私の手を取って祭壇へと進みました。
聖堂内には、多くの参列者が詰めかけていました。
かつて私に「ざまぁ」と言い放ったヒースクリフ王太子とマリアナ様も、最前列でどこか遠い目をして座っています。
(……あら、殿下。そんなに羨ましそうな顔をなさらないで。あなたには、あの『過労死確定』の王座がお似合いですわよ!)
公爵家を勘当された時は「どん底」だと思っていましたが、蓋を開けてみれば、私は今、最も自由で、最も愛されている女性としてここに立っています。
司祭様が厳かに語りかけ、誓いの儀式が始まりました。
「ジーク・ヴァルトマン。汝は、いかなる時もリリルを愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「誓います。彼女の眠りを守り、そのわがままを一生、隣で受け入れることを」
(……あら。少し余計な言葉が混じっていた気がしますけれど、合格点ですわね)
「リリル・フォン・アストレア。汝は、いかなる時もジークを愛し、夫として支えることを誓いますか?」
私は一瞬、大きく息を吸い込みました。
周囲の貴族たちが、固唾を飲んで私の言葉を待っています。
「ええ、誓いますわ! 私が飽きるまで、彼を私の専用枕として所有し、彼の財産を美味しいお菓子へと変換し続けることを……ここに高らかに宣言いたしますわよ!」
「……はは、リリルらしい」
参列者から「おお……」「流石、伝説の悪役令嬢……」という溜息が漏れる中、儀式はクライマックスへと進みました。
「では、誓いのキスを」
司祭様の言葉と共に、ジーク様がゆっくりと私のヴェールを上げました。
近づいてくる、整った顔。
彼の瞳の中に、真っ赤な顔をして、それでも必死に虚勢を張っている私の姿が映っていました。
(……ああ。これで、本当に決まるのね)
ジーク様が、私の腰をそっと引き寄せました。
私たちの唇が重なる、その直前。
私は、彼だけに聞こえるような微かな声で、心の底からの「喜び」を漏らしました。
「…………これで、ついに一生ニート……勝ち組確定ですわ……」
「……っ、ふふ……っ!」
誓いのキスの最中だというのに、ジーク様が肩を震わせて吹き出しました。
「リリル……あなたという人は、本当に……」
「な、なんですの! 真面目な誓いですわよ!」
ジーク様は私を力強く抱き寄せると、そのまま深く、深すぎるほど情熱的なキスを交わしました。
周囲からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こります。
「おめでとう、総監督!」「最高の夫婦だぜ!」「団長、末長くお幸せに!!」
騎士たちの野太い叫び声が、厳かな聖堂の空気を一気に賑やかな祭りのように変えていきました。
私はジーク様の腕の中で、ようやく本当の「安心感」に包まれていることに気づきました。
(……ふふ。悪役令嬢として追放されて、どうなることかと思ったけれど。……人生、何が起こるか分かりませんわね)
私はジーク様の腕をギュッと掴み、参列者に向かって最高に傲慢で、最高に幸せな笑みを浮かべました。
「おーっほっほっほ! 皆様、見ていらっしゃいな! 私はこれから、世界で最も幸せな『ぐうたら夫人』として、歴史に名を刻んで差し上げますわよ!」
隣で笑い続けるジーク様。
私は彼の温もりを感じながら、これから始まる「永遠の休日」という名の新生活に、胸を躍らせるのでした。
王都の大聖堂。ステンドグラスから差し込む七色の光が、真っ白なウェディングドレスに身を包んだ私を照らしていました。
本来なら、一生に一度の晴れ舞台に涙し、感動に震える場面です。
ですが、私の今の関心事は「この後の披露宴という名の立ち仕事に、私のふくらはぎが耐えられるか」という一点に尽きていました。
「我慢してください、リリル。この日のために、王都で一番の職人たちが寝る間を惜しんで作り上げた逸品です。……あなたは今、世界で一番……いいえ、私の人生で最高に美しいですよ」
隣に立つジーク様は、まばゆいばかりの白銀の礼装を纏い、いつにも増して彫刻のような美形っぷりを披露していました。
「ふ、ふん。当たり前ですわ。私の美しさは、日頃の徹底した睡眠とジーク様が運んでくる高カロリーな食事の賜物ですもの。……でもジーク様、誓いの言葉は三文字以内で終わらせてちょうだい。立ちっぱなしは美容の大敵ですわよ」
「善処しましょう」
ジーク様は苦笑いしながら、私の手を取って祭壇へと進みました。
聖堂内には、多くの参列者が詰めかけていました。
かつて私に「ざまぁ」と言い放ったヒースクリフ王太子とマリアナ様も、最前列でどこか遠い目をして座っています。
(……あら、殿下。そんなに羨ましそうな顔をなさらないで。あなたには、あの『過労死確定』の王座がお似合いですわよ!)
公爵家を勘当された時は「どん底」だと思っていましたが、蓋を開けてみれば、私は今、最も自由で、最も愛されている女性としてここに立っています。
司祭様が厳かに語りかけ、誓いの儀式が始まりました。
「ジーク・ヴァルトマン。汝は、いかなる時もリリルを愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「誓います。彼女の眠りを守り、そのわがままを一生、隣で受け入れることを」
(……あら。少し余計な言葉が混じっていた気がしますけれど、合格点ですわね)
「リリル・フォン・アストレア。汝は、いかなる時もジークを愛し、夫として支えることを誓いますか?」
私は一瞬、大きく息を吸い込みました。
周囲の貴族たちが、固唾を飲んで私の言葉を待っています。
「ええ、誓いますわ! 私が飽きるまで、彼を私の専用枕として所有し、彼の財産を美味しいお菓子へと変換し続けることを……ここに高らかに宣言いたしますわよ!」
「……はは、リリルらしい」
参列者から「おお……」「流石、伝説の悪役令嬢……」という溜息が漏れる中、儀式はクライマックスへと進みました。
「では、誓いのキスを」
司祭様の言葉と共に、ジーク様がゆっくりと私のヴェールを上げました。
近づいてくる、整った顔。
彼の瞳の中に、真っ赤な顔をして、それでも必死に虚勢を張っている私の姿が映っていました。
(……ああ。これで、本当に決まるのね)
ジーク様が、私の腰をそっと引き寄せました。
私たちの唇が重なる、その直前。
私は、彼だけに聞こえるような微かな声で、心の底からの「喜び」を漏らしました。
「…………これで、ついに一生ニート……勝ち組確定ですわ……」
「……っ、ふふ……っ!」
誓いのキスの最中だというのに、ジーク様が肩を震わせて吹き出しました。
「リリル……あなたという人は、本当に……」
「な、なんですの! 真面目な誓いですわよ!」
ジーク様は私を力強く抱き寄せると、そのまま深く、深すぎるほど情熱的なキスを交わしました。
周囲からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こります。
「おめでとう、総監督!」「最高の夫婦だぜ!」「団長、末長くお幸せに!!」
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私はジーク様の腕の中で、ようやく本当の「安心感」に包まれていることに気づきました。
(……ふふ。悪役令嬢として追放されて、どうなることかと思ったけれど。……人生、何が起こるか分かりませんわね)
私はジーク様の腕をギュッと掴み、参列者に向かって最高に傲慢で、最高に幸せな笑みを浮かべました。
「おーっほっほっほ! 皆様、見ていらっしゃいな! 私はこれから、世界で最も幸せな『ぐうたら夫人』として、歴史に名を刻んで差し上げますわよ!」
隣で笑い続けるジーク様。
私は彼の温もりを感じながら、これから始まる「永遠の休日」という名の新生活に、胸を躍らせるのでした。
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