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「僕達の海 そして空」
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童子の時は語ることも童子のごとく、思うことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり。
今我ら、鏡もて見るごとく、見るところ朧なり。
「僕達の海 そして空」
「なあコンお前のアレ見せた時幸美どんな顔した」
手漕ぎボ-トの櫂を漕ぐ彼に僕は唐突と訊ねた。
「だって幸美が見せろと言ったんだ。見せて欲しいと」
「普通見せるかぁ」
健が笑った。真っ青な空に入道雲が遥か占拠する瀬戸の海を僕達三人の「ハングリ-号」は浮遊した。倦怠する永い午後をひたすら持て余し海の静止した時間は少し甘美な情景を求めた。僕は理科室の事件を想像しながら好きな女子にアレを見せる事の出来る彼の性格に少し嫉妬した。
「幸美どんな顔をした」
「真っ赤になってのぞき込んでいた」
「毛が生えていないのに恥ずかしくなかったのか」
健が笑った。麦藁帽子から見上げる空は眩しく甘酸っぱい汗の匂いにへきへきとボートから僅か20センチの海に手を入れていた。夏の海は気怠く温いのだかボートが少し進むたびに手は少しは冷たくなった。
中学生相手に金に執拗なボート屋の老人から廃船寸前の中古の木造ボ-ドを三千円で買った。島の中学校で自作ボ-トの流行に禁止令が出ていたからだ。パテ埋めし水色のペンキを塗ったら健が
「腹減った」
と言った。ひょんな事からボ-トは「ハングリ-号」と命名された。
汽笛が鳴った。気が付くと僕達のボートはフェリーの定期航路の真ん中にいたのだ。コンが必死に漕いだ。
「ぶつかる」
僕達は麦藁帽子を被ったまま海に飛び込んだ。スクリュ-音と共に白波に揉まれ泳ぎ三人で笑った。気持ちが良かった。
「良いなぁお前」
幸美は好きだったがずっと言い出せないでいた僕は二人が少し大人になった様な気がした。ボ-トが岸に近づく頃には夏の空に陽が傾き黄昏の風は濡れたTシャツを乾かせた。金が無かったので一缶のコ-ラを三人で回し飲みした。
「また明日な」
Gパンで自転車のサドルが濡れむず痒く僕はあの事件を想像し勃起していた。
「良いなぁあいつは」
海と空の線上にぽっかりと浮かぶ島並を支配する入道雲を目指し其の日もまた僕達はボ-トを漕ぎだした。海水浴場の沖合に揺れるゴムボ-トの女子高生が僕達に手を振った。岸辺から流されたようだ。彼女達の水着が僕達には眩しく珍しく無口のまま船尾にロ-プを結び喧噪の海水浴場に向かって漕ぎだした。
「ねぇあなた達高校生」
「中学だよ」
「なぁんだ」
馬鹿にされた様な気がしてオ-ルに力が入った瞬間歪な音と共に船尾の板が壊れた。
「浸水するぞ」
ロープを外しコンがゴムボ-トを泳いで引いた。健が水を掻き出し僕は必死に岸を目指し漕いだ。何とか岸に辿り着くとクラスメイトの潤子がいた。
「なにしているのバカじゃない」
帰り道健が言った。
「俺 女は嫌いだ」
週末に台風があった。通り過ぎてから僕一人で海に行った。海辺に「ハングリ-号」がバラバラになって打ち上げられていた。
「僕達の中学の夏が終わった」
海は静かだった
今我ら、鏡もて見るごとく、見るところ朧なり。
「僕達の海 そして空」
「なあコンお前のアレ見せた時幸美どんな顔した」
手漕ぎボ-トの櫂を漕ぐ彼に僕は唐突と訊ねた。
「だって幸美が見せろと言ったんだ。見せて欲しいと」
「普通見せるかぁ」
健が笑った。真っ青な空に入道雲が遥か占拠する瀬戸の海を僕達三人の「ハングリ-号」は浮遊した。倦怠する永い午後をひたすら持て余し海の静止した時間は少し甘美な情景を求めた。僕は理科室の事件を想像しながら好きな女子にアレを見せる事の出来る彼の性格に少し嫉妬した。
「幸美どんな顔をした」
「真っ赤になってのぞき込んでいた」
「毛が生えていないのに恥ずかしくなかったのか」
健が笑った。麦藁帽子から見上げる空は眩しく甘酸っぱい汗の匂いにへきへきとボートから僅か20センチの海に手を入れていた。夏の海は気怠く温いのだかボートが少し進むたびに手は少しは冷たくなった。
中学生相手に金に執拗なボート屋の老人から廃船寸前の中古の木造ボ-ドを三千円で買った。島の中学校で自作ボ-トの流行に禁止令が出ていたからだ。パテ埋めし水色のペンキを塗ったら健が
「腹減った」
と言った。ひょんな事からボ-トは「ハングリ-号」と命名された。
汽笛が鳴った。気が付くと僕達のボートはフェリーの定期航路の真ん中にいたのだ。コンが必死に漕いだ。
「ぶつかる」
僕達は麦藁帽子を被ったまま海に飛び込んだ。スクリュ-音と共に白波に揉まれ泳ぎ三人で笑った。気持ちが良かった。
「良いなぁお前」
幸美は好きだったがずっと言い出せないでいた僕は二人が少し大人になった様な気がした。ボ-トが岸に近づく頃には夏の空に陽が傾き黄昏の風は濡れたTシャツを乾かせた。金が無かったので一缶のコ-ラを三人で回し飲みした。
「また明日な」
Gパンで自転車のサドルが濡れむず痒く僕はあの事件を想像し勃起していた。
「良いなぁあいつは」
海と空の線上にぽっかりと浮かぶ島並を支配する入道雲を目指し其の日もまた僕達はボ-トを漕ぎだした。海水浴場の沖合に揺れるゴムボ-トの女子高生が僕達に手を振った。岸辺から流されたようだ。彼女達の水着が僕達には眩しく珍しく無口のまま船尾にロ-プを結び喧噪の海水浴場に向かって漕ぎだした。
「ねぇあなた達高校生」
「中学だよ」
「なぁんだ」
馬鹿にされた様な気がしてオ-ルに力が入った瞬間歪な音と共に船尾の板が壊れた。
「浸水するぞ」
ロープを外しコンがゴムボ-トを泳いで引いた。健が水を掻き出し僕は必死に岸を目指し漕いだ。何とか岸に辿り着くとクラスメイトの潤子がいた。
「なにしているのバカじゃない」
帰り道健が言った。
「俺 女は嫌いだ」
週末に台風があった。通り過ぎてから僕一人で海に行った。海辺に「ハングリ-号」がバラバラになって打ち上げられていた。
「僕達の中学の夏が終わった」
海は静かだった
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