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第一話

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侯爵令嬢ミタルカには大好きな婚約者がいる。公爵令息ナダリヤだ。2人の結婚は政略結婚で、相手を好きかどうかは関係ない。
だが、ミタルカはずっとナダリヤが好きだった。婚約者になれると決まった日は、1人嬉し泣きをした。
ナダリヤは甘い言葉を言うわけではないけれど、8歳で婚約してから、ミタルカを大事にしてくれた。
贈り物には誠実な文面のカードが必ず一緒に入っていたし、誕生日以外にもいろいろな物が贈られた。

ミタルカは夢見ていた。ナダリヤも自分を好きになってくれて、両思いになる日を。ミタルカは、ただプレゼントをもらうだけではなく、自分からもナダリヤに贈った。
考えに考え抜き、ナダリヤが好みそうなものを。誕生日以外にも。

ミタルカはナダリヤが少しでも、自分に興味を持ってくれるようにカードには自分の近況を書いた。
そして14歳から貴族が通うことになる学園で一緒に学ぶことができる日を楽しみにしていた。

けれど、ミタルカの想いは簡単に崩れてしまった。
「ルミア嬢、貴方が好きです」
学園に入学すると、ナダリヤの態度は少しずつ変わっていった。
距離を置かれるようになった。
噂にも聞く。
ナダリヤには婚約者以外に好きな人がいる、と。
放課後、ミタルカはナダリヤを探して歩き回っていた。
人がいそうなところに行ったら、中庭の隅でナダリヤはルミア・パーマシー男爵令嬢に告白していた。
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