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家庭教師の先生は、魔力量が多すぎて、ここではきちんと測れないから、近くにあるギルドに行こうと言い出した。
アリスは魔法に憧れる気持ちはあったけど、本格的に挑戦するつもりはなかった。

自分は親に捨てられた平民だ。魔法は、生活に役立つ範囲で使えるようになればいい。貴族なら、魔法を使えないと困るのかもしれない。
でも、アリスには関係ない。たまたま魔力量の多い平民だって、それほど珍しいことではない。

だが、家庭教師とシスターに、魔力量があれば、人生もまた変わると説得された。将来の職業の幅が広がるのだ。

アリスは、家庭教師の先生とギルドに行くことになった。
孤児院とギルドのある場所は遠い。
アリスは生まれて初めて馬車に乗った。
乗り合い馬車だ。

ギルドに着くと、受け付けには列ができていた。さまざまな目的で並んでいる。先生が、ギルドについて、並んでる人について教えてくれた。とてもいかつい冒険者もいて、少しこわかった。
そう言うと、先生は笑った。
「命懸けの仕事をしている冒険者もいるからね」

アリスの番になると、先生は魔力量を測りたいと告げた。
受け付けのお姉さんは、少しお待ちくださいと言って受け付けから、奥の部屋に消えた。

戻ってきたお姉さんの手には不思議な球があった。
これを握ってください。
アリスは素直に従った。
球は、光った。ものすごく眩しい。
そして7色に光った。赤青白茶黒銀金。

「これは」
先生もお姉さんも冒険者たちも絶句した。
「魔力量は多すぎてこの球では測れません。属性は全属性です」

アリスにはよくわからなかったけれど、なんだかとんでもないことになっているらしいと理解した。

先生は、
「これなら、王宮魔術師にもなれる」
やっぱりアリスにはわからなかったけれど、自分は普通じゃないということはわかった。
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