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「あぁ、なんと素晴らしい。魂ごと持って行かれそうです」
王国一のピアニストでもある音楽講師は涙をこぼしながら、アルセンヌの演奏を讃えた。
さきほど、バイオリンとフルートでも同じ調子だから、アルセンヌは少し慣れてきた。この国の芸術家たちは涙もろくて、大袈裟だ。そして、容姿による差別からは程遠い。
考えてみれば、アルセンヌはまだ、容姿について非難されたことがない。
王太子も優しかった。
少しずつ警戒心が溶けて行く。
そんな時だった。
アルセンヌのお披露目もかねて、王宮でのパーティーがあったのだ。
そこには、王太子妃候補だった令嬢たちも集まっていた。
彼女たちは黒髪黒目で、ふくよかだった。
アルセンヌを見て、囁く。
「ねぇ、見て。みっともない姿。あの方が、王妃になるなんて、わが国の恥だわ」
「王太子様がかわいそう」
「あんな不器量な方、見たことないわ」
その囁きは聞かせたいと思っているからか、アルセンヌの耳にも入ってきた。
この国に来て、初めての悪意。
最初から覚悟していたことだ。今までは運が良かった。
だが、アルセンヌは気にしなかった。
王太子に認められれば、婚約者候補だった令嬢からの批判など、どうということもない。
「アルセンヌ姫、一曲お願いいたします」
王太子からのダンスの誘いに、アルセンヌは笑顔で答えた。
「もちろんですわ」
2人が踊り出す。それは誰が見ても美しいダンスだった。アルセンヌ姫の王国風ダンスは完璧だった。
悪口を囁いていた令嬢たちも、それは認めざるをえない。
「なんて美しい動きなのかしら」
王妃様が若い2人を讃えた。
「ダンスが終わったら、こちらに来るように手配してくださる?」
王妃様の騎士のひとりが、命令を遂行した。
ダンスが終わったアルセンヌとメディエルは、王妃様のもとへ向かった。
「よく来てくださったわね。アルセンヌ姫。」
アルセンヌは優雅な所作で完璧な礼をした。
「あなたはすべての動きが美しいのね。見惚れてしまうわ。」
アルセンヌは、王妃様まで泣かせないように気をつけようと思った。
王国一のピアニストでもある音楽講師は涙をこぼしながら、アルセンヌの演奏を讃えた。
さきほど、バイオリンとフルートでも同じ調子だから、アルセンヌは少し慣れてきた。この国の芸術家たちは涙もろくて、大袈裟だ。そして、容姿による差別からは程遠い。
考えてみれば、アルセンヌはまだ、容姿について非難されたことがない。
王太子も優しかった。
少しずつ警戒心が溶けて行く。
そんな時だった。
アルセンヌのお披露目もかねて、王宮でのパーティーがあったのだ。
そこには、王太子妃候補だった令嬢たちも集まっていた。
彼女たちは黒髪黒目で、ふくよかだった。
アルセンヌを見て、囁く。
「ねぇ、見て。みっともない姿。あの方が、王妃になるなんて、わが国の恥だわ」
「王太子様がかわいそう」
「あんな不器量な方、見たことないわ」
その囁きは聞かせたいと思っているからか、アルセンヌの耳にも入ってきた。
この国に来て、初めての悪意。
最初から覚悟していたことだ。今までは運が良かった。
だが、アルセンヌは気にしなかった。
王太子に認められれば、婚約者候補だった令嬢からの批判など、どうということもない。
「アルセンヌ姫、一曲お願いいたします」
王太子からのダンスの誘いに、アルセンヌは笑顔で答えた。
「もちろんですわ」
2人が踊り出す。それは誰が見ても美しいダンスだった。アルセンヌ姫の王国風ダンスは完璧だった。
悪口を囁いていた令嬢たちも、それは認めざるをえない。
「なんて美しい動きなのかしら」
王妃様が若い2人を讃えた。
「ダンスが終わったら、こちらに来るように手配してくださる?」
王妃様の騎士のひとりが、命令を遂行した。
ダンスが終わったアルセンヌとメディエルは、王妃様のもとへ向かった。
「よく来てくださったわね。アルセンヌ姫。」
アルセンヌは優雅な所作で完璧な礼をした。
「あなたはすべての動きが美しいのね。見惚れてしまうわ。」
アルセンヌは、王妃様まで泣かせないように気をつけようと思った。
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